◉ハルカ
いつものように執務室で仕事をしていると、部屋の外からダダダダと走って来る音が聞こえてくる。
誰か分かり、補佐のシカマルと顔を見合わせてため息を吐く。
すぐに部屋のドアが勢いよく開けられ。
「カカシ先生!!!」
やはり思った通りナルトで、焦ったように大声を出しながら部屋に入ってきた。
徹夜続きの頭に響く。
「ナルト・・・少しは大人しく入ってこれないのか?そんなんじゃこの席はまだ渡せないぞ」
カカシは頭を抱えてナルトを説教するも。
「それどころじゃないんだってばよ!」
「サクラちゃんが倒れた!!」
「・・・は?倒れたってどういうことだよ」
ナルトの言葉に眉間に皺を寄せたシカマルが問い詰める。
「いや、オレもさっき血相変えたいのに言われてカカシ先生を呼びに来たから詳しくは分からなくて。だからカカシ先生、早く・・・って、あれ」
ナルトはシカマルからカカシの方に目線を戻すと、先程までカカシが座っていた席には誰もいなかった。
****
「季節の変わり目と疲労からの風邪ね。ここのところ仕事忙しかったから」
「そっか・・・ありがとね、いのちゃん」
医務室に一瞬で現れたカカシにいのはベッドで寝ているサクラの状態を説明する。
発熱で顔を赤くして薬で眠っているサクラの頬を撫でるカカシの表情は悲痛で歪んでいた。
するとまた廊下からダダダダと走る音が響いてくる。
「あ、やっぱりカカシ先生いた!」
バンと医務室のドアを勢いよく開けるナルトに、いのはその頭を思い切りバインダーで叩いた。
「馬鹿ナルト!サクラが起きるでしょーが!」
「いってー!い、いのだって煩いじゃんか!」
出入り口で騒いでいる2人を無視してカカシはサクラを起こさないように背中と膝裏に手を入れて抱える。
気づいたいのが机に置いてあった袋を取る。
「これ、綱手様直伝の風邪薬です」
「ありがとう。・・・あー、ハルカのお迎え・・・」
カカシは幼稚園に預けているハルカのことを思い出す。
いつもはサクラが仕事終わりに迎えに行ってくれているが、具合が悪いサクラを1人家に置いていくのは・・・。
「あ、じゃあオレが行くよ!時々サクラちゃんとお迎えに行ってたし」
「なら私が幼稚園に連絡するわ。あそこの先生と友達だから」
「悪いな2人とも・・・」
眉を下げて苦笑すると、2人を頭を横に振って笑う。
「お互い様だってばよ!」
「そうそう。こういう時ぐらい頼ってくださいよ、カカシ先生」
頼もしく笑う2人に、すっかり成長した大人になってて、頼もしくもあり少し寂しくも思えてしまった。
****
2人に甘えてサクラを抱えて自宅に帰りベッドにサクラを降ろすと、重たい瞼が開き、熱で潤む緑の瞳がカカシを映す。
「せん、せ・・・?」
「具合はどうだ?」
「ん・・・朝より怠いかも・・・」
「・・・そっか。お粥作るけど食べれそうか?」
「うん・・・」
「何かリクエストは?」
「梅干し・・・」
「りょーかい」
頭を優しく撫でると気持ちよさそうに笑ってまた瞼が閉じる。
ふぅ、とため息を吐くと、来客を知らせるインターホンが鳴り玄関に向かう。
ドアを開けると、ナルトと手を繋いで不安そうにしているハルカが立っていた。
「おかえり。ナルト、ありがとな」
「ううん。サクラちゃんは?」
「さっき目が覚めたけどまた寝たよ。まだ熱が高いな」
「そっか・・・」
「パパ・・・」
呼ばれて顔を下げると、ハルカが泣きそうな顔でこちらを見ていた。
「ママ、しんじゃうの・・・?」
「大丈夫だよ。ちょっと風邪ひいただけだから。明日には良くなってるよ」
「うん・・・」
ナルトから手を離してカカシの足にしがみつくハルカの頭を撫でる。
「じゃあオレ帰るよ」
「あぁ。本当に助かった」
「ニシシ。これからもどんどん頼っていいってばよ!」
そう昔から変わらない笑顔でナルトは手を振って去っていった。
カカシはハルカの背を押して家の中へと促した。
「ハルカ。ママの風邪がうつらないように部屋には入らない。手洗いうがいもちゃんとする。いいね?」
「うん・・・」
涙を拭って鼻を啜ったハルカは洗面所に向かう。
その後ろ姿を見てカカシは切なくなった。
どんどんお姉さんになってきたとはいえまだ甘えたい盛り。
大好きなママに会えないのは辛いのだろう。
しかしもしハルカにうつったら今度はサクラが悲しむから今は我慢だ。
カカシはまたため息を吐いてキッチンへと向かった。
「ハルカー、ご飯出来たよ」
「んー・・・」
夕飯にハルカの好物のハンバーグを作り、ソファーに座ってTVを見るハルカに声をかけるもいつもの元気はない。
しょうがないか、とカカシは一緒に作っていたサクラのお粥をトレーに乗せる。
「パパぁ」
「ん?」
気づいたら足元にパックンを模したぬいぐるみを抱えたハルカが立っていた。
何か言いたそうにしているので目線が合うようにしゃがむとモジモジとしていたハルカは口を開く。
「あのね・・・」
「──サクラ」
「ん・・・」
カカシに呼ばれて目を開ける。
「お粥出来たよ」
「ありがとう・・・」
サクラは重たい上半身を起こして、ベッドに腰掛けるカカシからトレーを受け取る。
レンゲを手に取り、お粥を掬って口に運ぶ。
「おいしい・・・」
「良かった。無理しないで食べて」
「うん、ありがとう・・・」
好物の梅干しは食べやすいように種が抜かれていてカカシの優しさが体に染み込む。
すると。
「ママ・・・」
小さな呼ぶ声にドアを見ると、そこにはマスクを付けたハルカがドア付近で不安そうな顔をして覗いていた。
「ママ・・・だいじょうぶ・・・?」
「ハルカ・・・うん、大丈夫よ。お迎え行けなくてごめんね」
カカシの言いつけを守っているのだろう。
決して部屋の中には入ってこようとしないハルカは首を大きく横に振る。
「あのね、そのうめね、ハルカがごはんにのせたの。おいしい?」
「うん、美味しいわ。ありがとう、ハルカ」
微笑むとハルカは嬉しそうに笑う。
そしてバタバタとリビングに戻っていった。
「2人には心配かけて・・・ごめんなさい」
肩を落とすサクラの頭を軽く叩く。
「そんなこと気にしない。ちゃんと寝て、明日にはオレ達を安心させることだけを考えるよーに」
「・・・はい」
カカシの言い方が師をしていた時を彷彿とさせ、サクラは頭を押さえながら嬉しそうに笑う。
頷いたカカシはベッドから立ち上がる。
「今日はハルカの部屋で寝るけど何かあったら起こして。お皿も後で取りに来るから。あ、ちゃんと薬飲んで寝てなさいね」
「うん。ありがとう先生。おやすみなさい」
「おやすみ」
微笑むとカカシはサクラの頭を優しく撫でて部屋を出て行った。
****
ハルカのベッドではカカシが寝れないので床に布団を敷いて寝ようとするとハルカも一緒に寝たいと言い、同じ布団でくっ付いて寝ていた。
次の日の朝、ハルカは寝ぼけて手を伸ばすも眠るときにはあった温もりは無くなっている。
ゆっくりと目を開けるとそこにはカカシはおらず、不安にかられたハルカはバッと飛び起きて部屋を出た。
「ん、熱は下がったね。でも今日は安静。仕事はお休みだからな」
「はーい」
カカシの過保護っぷりサクラは失笑すると、ドアが開く。
「パパ・・・?ママ・・・?」
「ハルカ」
部屋を覗く愛娘にサクラは微笑み手招きする。
ハルカは恐る恐る部屋の中に入り、ベッドをよじ登ってサクラの胸に抱きつく。
「ママ、もうなおったの?」
「うん!きっとハルカの梅干しのおかげね」
サクラが昨日出来なかった分までギューと強くハルカを抱きしめると、「くるしいよぉ」と言いながらも嬉しそうに笑うハルカにカカシの頬も緩む。
「ハルカ、そろそろ準備しないと間に合わないんじゃないか?」
「そうだった!」
カカシの言葉にハッとしたハルカはベッドから降りて慌てて部屋を出ていた。
その様子がおかしくて2人は顔を合わせて笑い合う。
「それじゃあ朝ごはんにしようか。あっちで食べれるか?」
「うん」
ベッドから降りようとするとカカシが手を差し出してくれるので、それに甘えてその手を取って立ち上がる。
そしてそのまま手を繋いで部屋を出た。
久しぶりに3人で朝食を食べ、幼稚園と仕事に行く2人をサクラは玄関で見送る。
「行ってらっしゃい。気をつけてね」
「いってきます!」
「行ってきます」
カカシはサクラに顔を近づけて行ってきますのキスをする。
ハルカが見ているなんて気にしない。
そして2人は家を出る。
「ラブラブねー」「そうでしょう」と外から聞こえてくる2人の声にサクラは失笑し、肩にかけているカーディガンを直して早く万全の体調に戻すために寝室に戻ったのだった。
誰か分かり、補佐のシカマルと顔を見合わせてため息を吐く。
すぐに部屋のドアが勢いよく開けられ。
「カカシ先生!!!」
やはり思った通りナルトで、焦ったように大声を出しながら部屋に入ってきた。
徹夜続きの頭に響く。
「ナルト・・・少しは大人しく入ってこれないのか?そんなんじゃこの席はまだ渡せないぞ」
カカシは頭を抱えてナルトを説教するも。
「それどころじゃないんだってばよ!」
「サクラちゃんが倒れた!!」
「・・・は?倒れたってどういうことだよ」
ナルトの言葉に眉間に皺を寄せたシカマルが問い詰める。
「いや、オレもさっき血相変えたいのに言われてカカシ先生を呼びに来たから詳しくは分からなくて。だからカカシ先生、早く・・・って、あれ」
ナルトはシカマルからカカシの方に目線を戻すと、先程までカカシが座っていた席には誰もいなかった。
****
「季節の変わり目と疲労からの風邪ね。ここのところ仕事忙しかったから」
「そっか・・・ありがとね、いのちゃん」
医務室に一瞬で現れたカカシにいのはベッドで寝ているサクラの状態を説明する。
発熱で顔を赤くして薬で眠っているサクラの頬を撫でるカカシの表情は悲痛で歪んでいた。
するとまた廊下からダダダダと走る音が響いてくる。
「あ、やっぱりカカシ先生いた!」
バンと医務室のドアを勢いよく開けるナルトに、いのはその頭を思い切りバインダーで叩いた。
「馬鹿ナルト!サクラが起きるでしょーが!」
「いってー!い、いのだって煩いじゃんか!」
出入り口で騒いでいる2人を無視してカカシはサクラを起こさないように背中と膝裏に手を入れて抱える。
気づいたいのが机に置いてあった袋を取る。
「これ、綱手様直伝の風邪薬です」
「ありがとう。・・・あー、ハルカのお迎え・・・」
カカシは幼稚園に預けているハルカのことを思い出す。
いつもはサクラが仕事終わりに迎えに行ってくれているが、具合が悪いサクラを1人家に置いていくのは・・・。
「あ、じゃあオレが行くよ!時々サクラちゃんとお迎えに行ってたし」
「なら私が幼稚園に連絡するわ。あそこの先生と友達だから」
「悪いな2人とも・・・」
眉を下げて苦笑すると、2人を頭を横に振って笑う。
「お互い様だってばよ!」
「そうそう。こういう時ぐらい頼ってくださいよ、カカシ先生」
頼もしく笑う2人に、すっかり成長した大人になってて、頼もしくもあり少し寂しくも思えてしまった。
****
2人に甘えてサクラを抱えて自宅に帰りベッドにサクラを降ろすと、重たい瞼が開き、熱で潤む緑の瞳がカカシを映す。
「せん、せ・・・?」
「具合はどうだ?」
「ん・・・朝より怠いかも・・・」
「・・・そっか。お粥作るけど食べれそうか?」
「うん・・・」
「何かリクエストは?」
「梅干し・・・」
「りょーかい」
頭を優しく撫でると気持ちよさそうに笑ってまた瞼が閉じる。
ふぅ、とため息を吐くと、来客を知らせるインターホンが鳴り玄関に向かう。
ドアを開けると、ナルトと手を繋いで不安そうにしているハルカが立っていた。
「おかえり。ナルト、ありがとな」
「ううん。サクラちゃんは?」
「さっき目が覚めたけどまた寝たよ。まだ熱が高いな」
「そっか・・・」
「パパ・・・」
呼ばれて顔を下げると、ハルカが泣きそうな顔でこちらを見ていた。
「ママ、しんじゃうの・・・?」
「大丈夫だよ。ちょっと風邪ひいただけだから。明日には良くなってるよ」
「うん・・・」
ナルトから手を離してカカシの足にしがみつくハルカの頭を撫でる。
「じゃあオレ帰るよ」
「あぁ。本当に助かった」
「ニシシ。これからもどんどん頼っていいってばよ!」
そう昔から変わらない笑顔でナルトは手を振って去っていった。
カカシはハルカの背を押して家の中へと促した。
「ハルカ。ママの風邪がうつらないように部屋には入らない。手洗いうがいもちゃんとする。いいね?」
「うん・・・」
涙を拭って鼻を啜ったハルカは洗面所に向かう。
その後ろ姿を見てカカシは切なくなった。
どんどんお姉さんになってきたとはいえまだ甘えたい盛り。
大好きなママに会えないのは辛いのだろう。
しかしもしハルカにうつったら今度はサクラが悲しむから今は我慢だ。
カカシはまたため息を吐いてキッチンへと向かった。
「ハルカー、ご飯出来たよ」
「んー・・・」
夕飯にハルカの好物のハンバーグを作り、ソファーに座ってTVを見るハルカに声をかけるもいつもの元気はない。
しょうがないか、とカカシは一緒に作っていたサクラのお粥をトレーに乗せる。
「パパぁ」
「ん?」
気づいたら足元にパックンを模したぬいぐるみを抱えたハルカが立っていた。
何か言いたそうにしているので目線が合うようにしゃがむとモジモジとしていたハルカは口を開く。
「あのね・・・」
「──サクラ」
「ん・・・」
カカシに呼ばれて目を開ける。
「お粥出来たよ」
「ありがとう・・・」
サクラは重たい上半身を起こして、ベッドに腰掛けるカカシからトレーを受け取る。
レンゲを手に取り、お粥を掬って口に運ぶ。
「おいしい・・・」
「良かった。無理しないで食べて」
「うん、ありがとう・・・」
好物の梅干しは食べやすいように種が抜かれていてカカシの優しさが体に染み込む。
すると。
「ママ・・・」
小さな呼ぶ声にドアを見ると、そこにはマスクを付けたハルカがドア付近で不安そうな顔をして覗いていた。
「ママ・・・だいじょうぶ・・・?」
「ハルカ・・・うん、大丈夫よ。お迎え行けなくてごめんね」
カカシの言いつけを守っているのだろう。
決して部屋の中には入ってこようとしないハルカは首を大きく横に振る。
「あのね、そのうめね、ハルカがごはんにのせたの。おいしい?」
「うん、美味しいわ。ありがとう、ハルカ」
微笑むとハルカは嬉しそうに笑う。
そしてバタバタとリビングに戻っていった。
「2人には心配かけて・・・ごめんなさい」
肩を落とすサクラの頭を軽く叩く。
「そんなこと気にしない。ちゃんと寝て、明日にはオレ達を安心させることだけを考えるよーに」
「・・・はい」
カカシの言い方が師をしていた時を彷彿とさせ、サクラは頭を押さえながら嬉しそうに笑う。
頷いたカカシはベッドから立ち上がる。
「今日はハルカの部屋で寝るけど何かあったら起こして。お皿も後で取りに来るから。あ、ちゃんと薬飲んで寝てなさいね」
「うん。ありがとう先生。おやすみなさい」
「おやすみ」
微笑むとカカシはサクラの頭を優しく撫でて部屋を出て行った。
****
ハルカのベッドではカカシが寝れないので床に布団を敷いて寝ようとするとハルカも一緒に寝たいと言い、同じ布団でくっ付いて寝ていた。
次の日の朝、ハルカは寝ぼけて手を伸ばすも眠るときにはあった温もりは無くなっている。
ゆっくりと目を開けるとそこにはカカシはおらず、不安にかられたハルカはバッと飛び起きて部屋を出た。
「ん、熱は下がったね。でも今日は安静。仕事はお休みだからな」
「はーい」
カカシの過保護っぷりサクラは失笑すると、ドアが開く。
「パパ・・・?ママ・・・?」
「ハルカ」
部屋を覗く愛娘にサクラは微笑み手招きする。
ハルカは恐る恐る部屋の中に入り、ベッドをよじ登ってサクラの胸に抱きつく。
「ママ、もうなおったの?」
「うん!きっとハルカの梅干しのおかげね」
サクラが昨日出来なかった分までギューと強くハルカを抱きしめると、「くるしいよぉ」と言いながらも嬉しそうに笑うハルカにカカシの頬も緩む。
「ハルカ、そろそろ準備しないと間に合わないんじゃないか?」
「そうだった!」
カカシの言葉にハッとしたハルカはベッドから降りて慌てて部屋を出ていた。
その様子がおかしくて2人は顔を合わせて笑い合う。
「それじゃあ朝ごはんにしようか。あっちで食べれるか?」
「うん」
ベッドから降りようとするとカカシが手を差し出してくれるので、それに甘えてその手を取って立ち上がる。
そしてそのまま手を繋いで部屋を出た。
久しぶりに3人で朝食を食べ、幼稚園と仕事に行く2人をサクラは玄関で見送る。
「行ってらっしゃい。気をつけてね」
「いってきます!」
「行ってきます」
カカシはサクラに顔を近づけて行ってきますのキスをする。
ハルカが見ているなんて気にしない。
そして2人は家を出る。
「ラブラブねー」「そうでしょう」と外から聞こえてくる2人の声にサクラは失笑し、肩にかけているカーディガンを直して早く万全の体調に戻すために寝室に戻ったのだった。