ファミリー(長編)
ある日のこと。
星が瞬く空の中でひときわ目立つ大きな月を見ながらカカシは木の枝に座り団子を食べていると。
「カカシ先生」
下の方から呼ばれて見れば、教え子の1人がこちらを見上げていた。
「サクラ。こんな時間にどうした」
「いのの家からの帰りよ」
「女の子がこんな夜に出歩いたら危ないでしょ」
「忍なんだから大丈夫よ。そっち行ってもいい?」
「ん?いいよ」
サクラはカカシに習ったチャクラコントールで木を登りカカシの隣に腰掛ける。
「何してたの?」
「んー、月見。食べるか?」
「わ!食べる食べる!」
カカシはパックに入っていた団子をサクラに差し出し、嬉しそうに頬張る。
「これどうしたの?」
「ガイ達に貰った」
「ガイ先生?」
「誕生日プレゼントだって。安上がりだよね」
「へー」
サクラがモグモグと団子を食べ、固まる。
「──誕生日?」
「うん」
「誰が?」
「オレが」
「・・・今日?」
「うん、そう」
「何で教えないのよ!!」
「ちょ、サクラ危ないって!」
サクラはカカシに掴みかかる。
2人がいる場所は木の上で、バランスを崩したら頭から落ちてしまう。
忍だからそのまま落ちることはないが。
「何でもっと早く言わないの!」
「この歳になって周りに誕生日です、なんて恥ずかしくて言えるわけないでしょーが」
「そんな恥捨てなさいよ!私何も用意してないじゃない!」
「別にいーて」
「だめ!今から、はもう店閉まってるし・・・明日!明日には用意するから!」
「うんうん。その気持ちだけで嬉しいよ」
「もう!何で逆に貰ってるのかしら」
サクラはブツブツ文句を言うのでカカシは苦笑しながら頭を撫でる。
「来年こそはちゃんとお祝いするからね!」
「うん。ありがとね、サクラ」
****
「ふぁ・・・」
ハルカは昼寝から目が覚め、自室から出てリビングのドアを開けようとすると中から話し声が聞こえる。
「ママぁ・・・?」
少しだけドアを開けて恐る恐る覗くと、そこには寝る前にはいなかったナルトが椅子に座っていた。
「あ、ハルカちゃん」
「おはよう、ハルカ」
「ナルトぉ」
ハルカは頬を綻ばせ、ナルトに近づき「だっこ」と言って手を伸ばす。
ナルトは嬉しそうにハルカを持ち上げ、自分の足の上に座らせる。
「なにしてたの?」
「パパの誕生日プレゼントの相談よ」
「パパ?」
「そ。毎年オレとサクラちゃん、サスケの第七班でカカシ先生にプレゼント贈ってるだよ。それで今年は何しようかーって」
ナルトは抱っこするハルカの頭に顎を置いてため息を吐き、サクラも頬杖をついて同じように吐く。
「どうする?サクラちゃん」
「そうねー・・・毎年自分の誕生日を忘れる先生に念押しして休み取らせるんだけど、今年はタイミング悪く五影会談入っちゃったから誕生日会は難しいわね」
「サスケも帰ってくるの無理って言うしさー。何も思いつかねーってばよー」
ナルトは嘆きながらTVのリモコンを持ち電源を付けると、ちょうどニュース番組で天気予報をやっていた。
『今年の十五夜は9月15日です。お天気に恵まれて綺麗なお月様が見れるでしょう』
「へー。今年はカカシ先生の誕生日だって」
「じゅうごや?」
「お月様が綺麗だから見ながらお団子食べようっていう日で・・・って、サクラちゃんどうかした?」
「え?」
「ママ、わらってるー」
サクラはTVを観ながら笑っているので、2人は首を傾げる。
「前にもね、パパの誕生日にお月さま見ながら一緒にお団子食べたなーって思い出しちゃって」
「え、何それ!オレ知らないってばよ!」
「アンタ自来也様と旅に出てたじゃない」
「えー!?」
オレも食べたかったー、と文句を言うナルトの横で何故かキラキラ目を輝かせれるハルカと目が合う。
「ハルカもそれやりたい!」
「え?」
「ハルカもパパとママとおだんごたべたい!あとナルトもね」
とってつけたかのようにナルトに微笑むハルカに苦笑するナルト。
サクラは顎に手を当てて何か考えて。
「なら作っちゃおっか」
「つくれるの!?」
「ただ丸めるだけだからハルカでも作れるわよ。ナルトもプレゼントそれにしたら?」
「団子だけってカカシ先生喜ぶ?」
「可愛い生徒からのプレゼントなら何だって喜ぶわよ、あの人は」
「そっか!ならサスケにも連絡しとこ」
「プレゼントは団子」なんて手紙が届いたらトチ狂ってんのかって思いそうだなぁ、とサクラはまた笑った。
****
9月15日。
「ただいまぁ〜・・・」
五影会談を終えてヘロヘロになりながら家に帰り着き、玄関のドアを開ける。
いつもなら2人が出迎えてくれるが、今は23時を過ぎている。
部屋の中も真っ暗でもう寝ちゃったかなって思っていると、玄関に並べられている靴に男モノがある。
しかも忍の支給品のサンダル。
普通なら浮気かと思うが、ナルトがしょっちゅう遊びにくるので疑うこともせずリビングのドアを静かに開ける。
「おかえりなさい」
ドアを開けると声をかけられる。
真っ暗ななか目をこらすと、庭に続く窓が開かれてそこでハルカを抱っこしているサクラが月明かりに照らされて振り返る。
「サクラ。何で電気付けないんだ?」
カカシは暗い中サクラのところに行こうとすると、床に転がっていた何かを踏む。
そのとき「うぎゅ」と変な音が聞こえ、足元をみればナルトが床に転がっていた。
「ナルト?なにしてんだこいつ」
「先生、テーブル見て」
「テーブル?」
サクラに言われてテーブルを見ると丸かったり歪だったり、たくさんの団子がお皿に盛られていた。
その横にはパックに入った串に刺さった焼き団子が。
「どうしたんだ、これ」
「3人で作ったのよ。カカシ先生への誕生日プレゼント。大きいお皿のが私とハルカので、小さいほうの残り少ないのがナルトのお酒入りお団子。それでパックに入ったのがサスケくんから」
味見ばっかしてたから酔い潰れて寝転がしてるの、とサクラはこうなった状況を笑いながら説明する。
「ありがとな」
カカシは嬉しそうに笑いながらナルトの頭を撫でると、ナルトも笑う。
カカシは棚からお皿を取り出してそれぞれの団子を載せてパックの団子持ってサクラの隣に座る。
「それじゃ、いただきます」
「召し上がれ。ハルカも一緒に食べるって言ってたんだけど我慢出来なかったみたい」
サクラは胸元にもたれかかって眠るハルカの頭を撫でる。
「そっか。明日一緒に食べような」
カカシは歪な形の、ハルカが作った団子を頬張る。
サクラもお皿から団子を取り、2人で月を見上げる。
「なんか前もこうやって2人で月見ながら団子食べてたな」
「先生の誕生日にね。今年はガイ先生から何か貰った?」
「ダンベル。事務作業ばっかで体力落ちてるだろうって。重いから置いてきたよ」
「ガイ先生らしいわね。ちゃんと使ってあげてよ?」
「気が向いたらね」
カカシは苦笑しながらサスケの団子を頬張る。
甘いものが苦手なカカシのために焼き団子を選んでくれたのだろう。
相変わらずぶっきらぼうだが、仲間思いの子なのには変わらない。
「カカシ先生」
「ん?」
大事な教え子に思いを馳せていると、隣に座るサクラがこちらを見て微笑んでいる。
「お誕生日おめでとう。来年も、これからもずっとお祝いさせてね」
目を丸くしたカカシは、眉と目尻を下げて照れたように笑う。
「うん。これからも、おじいちゃんになるまでずっと側にいて」
カカシはサクラの肩を引き寄せ、愛おしい2人の暖かさと幸せな時間を噛み締めた。
星が瞬く空の中でひときわ目立つ大きな月を見ながらカカシは木の枝に座り団子を食べていると。
「カカシ先生」
下の方から呼ばれて見れば、教え子の1人がこちらを見上げていた。
「サクラ。こんな時間にどうした」
「いのの家からの帰りよ」
「女の子がこんな夜に出歩いたら危ないでしょ」
「忍なんだから大丈夫よ。そっち行ってもいい?」
「ん?いいよ」
サクラはカカシに習ったチャクラコントールで木を登りカカシの隣に腰掛ける。
「何してたの?」
「んー、月見。食べるか?」
「わ!食べる食べる!」
カカシはパックに入っていた団子をサクラに差し出し、嬉しそうに頬張る。
「これどうしたの?」
「ガイ達に貰った」
「ガイ先生?」
「誕生日プレゼントだって。安上がりだよね」
「へー」
サクラがモグモグと団子を食べ、固まる。
「──誕生日?」
「うん」
「誰が?」
「オレが」
「・・・今日?」
「うん、そう」
「何で教えないのよ!!」
「ちょ、サクラ危ないって!」
サクラはカカシに掴みかかる。
2人がいる場所は木の上で、バランスを崩したら頭から落ちてしまう。
忍だからそのまま落ちることはないが。
「何でもっと早く言わないの!」
「この歳になって周りに誕生日です、なんて恥ずかしくて言えるわけないでしょーが」
「そんな恥捨てなさいよ!私何も用意してないじゃない!」
「別にいーて」
「だめ!今から、はもう店閉まってるし・・・明日!明日には用意するから!」
「うんうん。その気持ちだけで嬉しいよ」
「もう!何で逆に貰ってるのかしら」
サクラはブツブツ文句を言うのでカカシは苦笑しながら頭を撫でる。
「来年こそはちゃんとお祝いするからね!」
「うん。ありがとね、サクラ」
****
「ふぁ・・・」
ハルカは昼寝から目が覚め、自室から出てリビングのドアを開けようとすると中から話し声が聞こえる。
「ママぁ・・・?」
少しだけドアを開けて恐る恐る覗くと、そこには寝る前にはいなかったナルトが椅子に座っていた。
「あ、ハルカちゃん」
「おはよう、ハルカ」
「ナルトぉ」
ハルカは頬を綻ばせ、ナルトに近づき「だっこ」と言って手を伸ばす。
ナルトは嬉しそうにハルカを持ち上げ、自分の足の上に座らせる。
「なにしてたの?」
「パパの誕生日プレゼントの相談よ」
「パパ?」
「そ。毎年オレとサクラちゃん、サスケの第七班でカカシ先生にプレゼント贈ってるだよ。それで今年は何しようかーって」
ナルトは抱っこするハルカの頭に顎を置いてため息を吐き、サクラも頬杖をついて同じように吐く。
「どうする?サクラちゃん」
「そうねー・・・毎年自分の誕生日を忘れる先生に念押しして休み取らせるんだけど、今年はタイミング悪く五影会談入っちゃったから誕生日会は難しいわね」
「サスケも帰ってくるの無理って言うしさー。何も思いつかねーってばよー」
ナルトは嘆きながらTVのリモコンを持ち電源を付けると、ちょうどニュース番組で天気予報をやっていた。
『今年の十五夜は9月15日です。お天気に恵まれて綺麗なお月様が見れるでしょう』
「へー。今年はカカシ先生の誕生日だって」
「じゅうごや?」
「お月様が綺麗だから見ながらお団子食べようっていう日で・・・って、サクラちゃんどうかした?」
「え?」
「ママ、わらってるー」
サクラはTVを観ながら笑っているので、2人は首を傾げる。
「前にもね、パパの誕生日にお月さま見ながら一緒にお団子食べたなーって思い出しちゃって」
「え、何それ!オレ知らないってばよ!」
「アンタ自来也様と旅に出てたじゃない」
「えー!?」
オレも食べたかったー、と文句を言うナルトの横で何故かキラキラ目を輝かせれるハルカと目が合う。
「ハルカもそれやりたい!」
「え?」
「ハルカもパパとママとおだんごたべたい!あとナルトもね」
とってつけたかのようにナルトに微笑むハルカに苦笑するナルト。
サクラは顎に手を当てて何か考えて。
「なら作っちゃおっか」
「つくれるの!?」
「ただ丸めるだけだからハルカでも作れるわよ。ナルトもプレゼントそれにしたら?」
「団子だけってカカシ先生喜ぶ?」
「可愛い生徒からのプレゼントなら何だって喜ぶわよ、あの人は」
「そっか!ならサスケにも連絡しとこ」
「プレゼントは団子」なんて手紙が届いたらトチ狂ってんのかって思いそうだなぁ、とサクラはまた笑った。
****
9月15日。
「ただいまぁ〜・・・」
五影会談を終えてヘロヘロになりながら家に帰り着き、玄関のドアを開ける。
いつもなら2人が出迎えてくれるが、今は23時を過ぎている。
部屋の中も真っ暗でもう寝ちゃったかなって思っていると、玄関に並べられている靴に男モノがある。
しかも忍の支給品のサンダル。
普通なら浮気かと思うが、ナルトがしょっちゅう遊びにくるので疑うこともせずリビングのドアを静かに開ける。
「おかえりなさい」
ドアを開けると声をかけられる。
真っ暗ななか目をこらすと、庭に続く窓が開かれてそこでハルカを抱っこしているサクラが月明かりに照らされて振り返る。
「サクラ。何で電気付けないんだ?」
カカシは暗い中サクラのところに行こうとすると、床に転がっていた何かを踏む。
そのとき「うぎゅ」と変な音が聞こえ、足元をみればナルトが床に転がっていた。
「ナルト?なにしてんだこいつ」
「先生、テーブル見て」
「テーブル?」
サクラに言われてテーブルを見ると丸かったり歪だったり、たくさんの団子がお皿に盛られていた。
その横にはパックに入った串に刺さった焼き団子が。
「どうしたんだ、これ」
「3人で作ったのよ。カカシ先生への誕生日プレゼント。大きいお皿のが私とハルカので、小さいほうの残り少ないのがナルトのお酒入りお団子。それでパックに入ったのがサスケくんから」
味見ばっかしてたから酔い潰れて寝転がしてるの、とサクラはこうなった状況を笑いながら説明する。
「ありがとな」
カカシは嬉しそうに笑いながらナルトの頭を撫でると、ナルトも笑う。
カカシは棚からお皿を取り出してそれぞれの団子を載せてパックの団子持ってサクラの隣に座る。
「それじゃ、いただきます」
「召し上がれ。ハルカも一緒に食べるって言ってたんだけど我慢出来なかったみたい」
サクラは胸元にもたれかかって眠るハルカの頭を撫でる。
「そっか。明日一緒に食べような」
カカシは歪な形の、ハルカが作った団子を頬張る。
サクラもお皿から団子を取り、2人で月を見上げる。
「なんか前もこうやって2人で月見ながら団子食べてたな」
「先生の誕生日にね。今年はガイ先生から何か貰った?」
「ダンベル。事務作業ばっかで体力落ちてるだろうって。重いから置いてきたよ」
「ガイ先生らしいわね。ちゃんと使ってあげてよ?」
「気が向いたらね」
カカシは苦笑しながらサスケの団子を頬張る。
甘いものが苦手なカカシのために焼き団子を選んでくれたのだろう。
相変わらずぶっきらぼうだが、仲間思いの子なのには変わらない。
「カカシ先生」
「ん?」
大事な教え子に思いを馳せていると、隣に座るサクラがこちらを見て微笑んでいる。
「お誕生日おめでとう。来年も、これからもずっとお祝いさせてね」
目を丸くしたカカシは、眉と目尻を下げて照れたように笑う。
「うん。これからも、おじいちゃんになるまでずっと側にいて」
カカシはサクラの肩を引き寄せ、愛おしい2人の暖かさと幸せな時間を噛み締めた。