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ファミリー(長編)

ソファーでうとうとしていると玄関が勢いよく開いて、ドタドタと忍らしからぬ足音が聞こえてくる。

「サクラ、サクラ!」

リビングのドアも同じように開いて、そこから元担当上忍で上司で、1年前に夫になったカカシ先生が慌てた顔をして3日間の任務から帰ってきた。


「先生、おかえりなさい。怪我は・・・」

ないか、と聞こうとしたら両肩を強く掴まれる。
ビックリして目を見開くと、何故か必死な顔をして。

「子供は!」
「こ・・・ここだけど・・・」

私は細い体にアンバランスな大きく膨らんだお腹をさすると、先生は安心したように息を吐いて私を抱きしめる。


「良かった・・・まだ産まれてなくて・・・」
「もう・・・先生、落ち着いてよ。予定日まで1ヶ月はあるのよ?」

私の隣に座る先生に苦笑する。

「だって早く産まれる場合もあるんだろ?こっちはサクラの側にいてやりたいのに、次から次に任務入れられるしさぁ・・・」

火影様に文句言いに行ったら怒鳴られた、と首を垂れるカカシ先生。
いつにも増して情けない。


「私は大丈夫よ。何かあっても師匠といのもいるんだし」
「いのちゃんはともかく、五代目は出産の経験がないから安心は出来ない」

そんなこと言ったら今度こそ殴られるわよ、と目を釣り上げて拳を握る師を思い出してブルリと震えた。


「サクラ寒い?ちゃんと暖かくしないと。1人の体じゃないんだから」

震えを寒さ勘違いした先生は寝室から毛布を持ってきてかけてくれる。


「先生がこんなに心配性だとは思わなかったわ。下忍の私に見せてあげたいぐらい」
「えー?下忍のときもサクラには特段甘く接してたでしょ」
「それでもこんなに甘くなかったわよ。怪我しても気にしてくれなかったし」
「そりゃ忍になるんだから、擦り傷ぐらいで気にかけてたらこっちの身がもたないよ」


そりゃそうだけど。
言い方が気にいらなくて頬を膨らませてそっぽを向く。
機嫌を損ねたことに気づいた先生は頭を掻いて顔を覗き込む。

「・・・あー、ごめんね?」
「ふん!」
「サクラちゃーん・・・」


先生は顔をこっちに向けようとするけど、意固地になって振り向かない。



「ほら、機嫌直して。そんなにプリプリしてたら赤ちゃん心配するぞ?」
「・・・誰のせいよ」
「ごめんて」

頬を掴まれて先生と真っ直ぐ見つめ合うように戻され、軽くキスをされる。
そして先生はギューーとお腹に抱きついて。


「はぁー・・・待ち遠しいなぁ」

嬉しそうに呟く先生に私は先生の柔らかい銀髪を撫でる。
そして私はふと思い出して。


「先生、次の任務いつから?」

撫でながらそう聞くと、先生は嫌そうに眉間に皺を寄せて体を離す。

「2日後だよ・・・任務行きたくない・・・」
「もう。そんなこと言わないで頑張って、旦那様」

先生の肩を叩いて励ますと、さっきまで鬱々としていた表情が一変。
キラキラと瞳を輝かせてくる先生に思わず体が引く。

「な、なに・・・?」
「サクラ、もう1回言って」
「は?何を」
「頑張って、の後だよ」

私は自分の発言を思い出して顔を赤くする。
なかなか言わない私に、「言ってくれたら頑張れる〜」と駄々をこねてくる。
そんな先生にため息をついて。


「・・・頑張って、旦那様」


顔を赤くして上目遣いで言うと、先生は満足そうに笑って抱きしめてきて。

「もうそんなこと言われたら頑張っちゃうよー!」

そして先生は唇を押し付けてきた。
だんだん深くなる口付けに苦しくなって肩を叩くと、ようやく離れる。


「あー・・・長かったなぁ・・・ようやくサクラとえっち出来る」
「馬鹿!」

恥ずかしい発言に拳を先生に頭に叩きつける。
この男は性欲しかないのか、と頭を押さえて悶える姿に呆れる。



「先生、もう名前決まった?」

そう聞くと、パッと顔を上げて顎に手を当てて唸る。

「うーん、2つまでは絞ったんだけど、まだ決め手にならなくてさ」

子供が出来たと言ったら、先生は名前を50個も考えてきた。
そこから2つに絞れたらしい。


「どんな名前?」
「まだ秘密」

先生は嬉しそうに笑って私の大きくなったお腹を撫でる。

「どうせなら、オレとサクラに関連づけた名前がいいなって。やっぱこの子の顔見てからかなぁ」



自分の子供が産まれてくることに嬉しそうにしてる先生を見てると、視界が滲んでくる。


先生と出会った頃は、仲間を大事にするばかりで自分を大切にしなくて。
自分の幸せを願ってなくて。
いつか目の前から先生が消えてしまいそうで怖くて。
だから私はこの人の手を掴んで繋ぎ止めることを決めた。

そんな人が、今は私とこの子との幸せな未来を待ち望んでいる。



「どうした?」

涙を流す私に気づいた先生は、お腹を撫でていた手で涙を拭ってくれる。

「ううん・・・」
「幸せだなぁって」

眉を下げて心配そうにする先生にそう笑うと、先生は嬉しそうに破顔して。
そして目を瞑って額を合わせて。



「オレも幸せだよ」

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