第五章
急にバッグに飛び込んできたイカをテネアスが不思議に思っていると、屋台の店員さんであろう姿をした男性が話しかけてきた。
「やあ坊や、この辺にイカが一匹飛んでこなかったかい? 焼こうと思ったら器用に飛び跳ねて逃げちゃってさ」
イカはどうやらこの男性のものらしい。テネアスは普段ならすぐに差し出しているところだが、せっかく死の淵から脱したのにまた逆戻りさせるのも何だか気の毒に思えてしまい……
「ごめんなさい、知らないです」
と、しらばっくれてしまった。男性が「そっかありがとう」と言ってまた辺りをキョロキョロ探し始めたのを横目に歩き始めたテネアスは、助けたイカを海に放してやろうと海辺へと向かう。その時である。
「黙っててくれてありがとう、危うく火あぶりになるところだったよ!」
突然、ハツラツとした女性の声が聞こえてきた。声はバッグの中から聞こえた……まさかと思ったテネアスがバッグを覗き、件のイカと目が合うや、同じ声がそのイカから続けて発せられる。
「ビックリさせてごめんね! でも助けてもらったのにお礼も言わないなんてわたしの主義に反するからさ……お父さんお母さんにはわたしが喋ったこと内緒だよ!」
「やあ坊や、この辺にイカが一匹飛んでこなかったかい? 焼こうと思ったら器用に飛び跳ねて逃げちゃってさ」
イカはどうやらこの男性のものらしい。テネアスは普段ならすぐに差し出しているところだが、せっかく死の淵から脱したのにまた逆戻りさせるのも何だか気の毒に思えてしまい……
「ごめんなさい、知らないです」
と、しらばっくれてしまった。男性が「そっかありがとう」と言ってまた辺りをキョロキョロ探し始めたのを横目に歩き始めたテネアスは、助けたイカを海に放してやろうと海辺へと向かう。その時である。
「黙っててくれてありがとう、危うく火あぶりになるところだったよ!」
突然、ハツラツとした女性の声が聞こえてきた。声はバッグの中から聞こえた……まさかと思ったテネアスがバッグを覗き、件のイカと目が合うや、同じ声がそのイカから続けて発せられる。
「ビックリさせてごめんね! でも助けてもらったのにお礼も言わないなんてわたしの主義に反するからさ……お父さんお母さんにはわたしが喋ったこと内緒だよ!」