威勢のいい若い男性の声だった。テネアスは声の主の方を見ようと振り返る。が、辺りにはそれらしい人物は特に見当たらない。頭にハテナを浮かべるテネアスだったが、その声はお構いなしに続けてくる。

「町の連中を巻き込みたくなければこのまま町の外まで歩きな」

　その瞬間、テネアスの全身に緊張が走る。これは紛れもなく敵だ。自分に敵意を持っていて、なおかつ自分の正体を知っている者とすると……

「ストーク博士の刺客だね……？」
「その通りだ。どうせ大人しく捕まる気もないんだろ？　町の外で戦おうぜ」
　
　戦闘は避けられないと悟ったテネアスは「わかった」とだけ返し、町の外へ向けて歩き出した。
　10分ほど歩いて町から外れ、さらに10分ほど歩くと大きな岩や岩壁の広がる地帯に辿り着く。

「ここなら町の連中の邪魔が入ることもないだろ。じゃ、始めるか」

　その言葉とともに地面が一箇所モコっと盛り上がり、一匹の灰色のモグラが顔を出す。そして一瞬の光を放つと、その姿は人間の姿に変化したのであった。