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第二章

 体が揺れるのを感じてセレネが目を覚ますと、鳥の姿に戻った自身をテネアスが抱えて歩いていた。

「ど、どこへ連れて行くつもり……?」

 全身に残る鈍い痛みに耐えながらセレネは語りかける。

「あ、気が付いたんだね。怪我させちゃったからさっきの建物まで送り届けようと思って」
「せっかく逃げてきたのに敵である私のために戻るの?」
「成り行きで戦ったけど別に悪い人じゃないからね。もちろん戻っても捕まるつもりはないよ!」
「……あなたはどうしてそんなに逃げたがるの? 博士の研究所も住んでみると悪いところでもないのよ?」
「逃げたいというより、もとの場所に帰りたいんだ。僕のもとを訪れてくれる観光客を悲しませたくないからさ」
「帰りを待ってくれる人達がいるんだ、素敵ね」

 少しの会話の切れ間。セレネは抱き抱えられながらの歩行による揺れに心地よさを覚えながら、再び口を開いた。

「私には帰りを待ってる人はいないんだ」
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