白乃様リクエスト
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はじめまして、私の名前は不破なまえ。
高校二年生でごく普通の女子高生。
そんな私には最近好きな人ができた。
あれは、今年の春から受験勉強のために入った予備校の帰り道のこと。
「君何年生?それ大川高校の制服だよね?
このあとひま?たまには遊ぶのも大事だよ~」
私は最寄り駅から5駅のすこし栄えた駅にある、駅から徒歩10分の予備校に通っていて、その日は自習室にこもっていたら閉館の時間になってしまって、珍しく深夜の繁華街を通って帰宅していた。
予備校までの道は日中はファッションビルやスーパーや本屋がたち並んでいて土日は特に家族連れや学生で賑わっている。だけど、夜になると表情を変えて居酒屋や裏の通りの歓楽街が賑わう大人の街になる。
私はなんとなくこの賑わいが苦手で遅くても9時には予備校を出るようにしていた。
「結構です。」
私はそう言いながら男と目を合わせないようにして、急ぎ足で進む。負けじと隣をキープして男は喋り続けるが聞こえないふり。
目が合わないように歩道とは逆にある車道を見つめる。空車のタクシーが来たら乗ってしまおうか、月5000円のお小遣いを使うのは惜しいけど…予備校の最寄り駅までだったら1000円もかからない。
そう考えても、こんな時に限ってなかなか空車のタクシーは通らなかった。
「ねぇ、いいじゃん、ちょっとぐらいさ
オレ、君みたいな子すげぇ好みなんだけど」
「…」
「ねぇ、無視しないでよ?」
私が無視を決め込むと相手は苛立ったような声で、私の肩をつかんだ。
「やめてください、」
咄嗟に私が振り返ってそういうと待ってましたとばかりに男が私の腕をつかむ。腕の力はやっぱり強くて、恐怖から急激に胸がバクバクと悲鳴をあげた。
「すいません、その子俺の連れなんですけど」
それは突然だった。
私の後ろには男の人が立っていて、私の腕を掴む男の腕を掴んで、きっぱりとそう言い放った。
「はぁ?」
「離せっつってんだよ。」
「っ…」
そう言って男の人が腕を締め上げると男が慌てて私の腕を離して手を引っ込める。
よほど痛かったのだろう。
「なんだよ、男いんのかよ。
もういいよ…けっ」
そう言い残して男が慌てて立ち去る。
だんだんと小さくなる男の後姿に私は胸をなでおろす。思っていたよりも怖かったみたいで、私の手は少し震えていた。
「あの、ありがとうございました。」
私は助けてくれた人に深々と頭を下げてお礼を言った。すると意外な返事が返ってきた。
「はは、いいよ、親友の妹なんだから助けて当然だろ。」
「へ?」
そう言って男の人は私の頭をポンポンと安心させるように撫でる。
私が思わず顔をあげると、そこには見知った男の人がいた。
「あ!雷蔵兄の友達の!」
そこにいたのは兄、不破雷蔵の大学の友人で何度かうちに遊びに来たときに会ったことがある人物だった。
「なまえちゃんだよね?
俺は鉢屋三郎。車つけてあるから、家まで送るよ、」
「あ、ありがとうございます。」
この時、私は自分の胸が高鳴るのを感じた。
こんな風にドキドキと胸が打つのは久しぶりで、自分が恋に落ちたのにはすぐに気が付いた。
三郎さんはその日は兄には会わず、私を玄関の前で車から降ろして帰って行った。私はその日三郎さんに撫でられた感触や助けてくれた時のことを思い出してすごくふわふわした気持ちで眠りについた。
こうして私は三郎さんのことを好きなった。
三郎さんとの年齢は私が17で三郎さんが20歳、たった3つしか違わないのに、高校生と大学生では全然違うように感じた。
「雷蔵兄、三郎さんってどんな人?」
「三郎?突然どうしたの?
っていうかなまえ、三郎の名前よく知ってたね。」
その日家に帰って私はすぐに雷蔵兄に聞き取り調査をした。三郎さんと雷蔵兄はたぶん大学からの友達だと思うんだけど…。
「実は今日ね、変な人に声かけられて…」
「えぇ!大丈夫だったの?」
「う、うん。そこを三郎さんに助けてもらったの。」
「へー、三郎が。」
「それで三郎さんにお礼がしたくて、」
私がそう言うとらい兄がなるほどと納得してくれた。さすがに好きになったとは言わなかったけど。
「三郎はね、僕と大学の学部が一緒でね。鉢屋と不破で学籍番号が近いからそれで仲良くなったんだ。
ハッキリした性格だから誤解されることも多いけど良い奴だよ。」
「ちゃんと改めてお礼したいから次家来るとき教えて!」
「うん、いいよ~」
なんてやりとりをして、数週間で私の口癖は完全に、
「三郎さん、次いつ来るの?」
になった。
でも雷蔵兄おっとりしてるから、なついてるな~くらいの認識みたい。
あれから半年、季節は秋も終わりに近づいていた。
三郎さんが来るときにクッキーを焼いておいたりとかして会話のチャンスを狙ったり、雷蔵兄から三郎さんの連絡先をゲットしてたまにメッセージのやり取りをしたり、予備校の帰り家に送ってくれたりする程度の関係にはなれた。
なれた、けど。
「肝心の三郎さんに彼女がいるかもわかんないって、聞きなよ、それくらい。」
クラスの女友達にあきれたようにそういわれて私は肩を落とす。
「わかってるよ、わかってるけどさ~」
そう、私は三郎さんがフリーなのかもまだ知らないのだ。
ん?雷蔵兄に聞けばいいじゃないって?
私だってそう思ってなんとなく聞いてみたことくらいはある。
「んー、三郎に彼女?今は多分いないんじゃないかなぁ?
でも三郎彼女できてもいっつも別れるまで教えてくれないから、どうだろうな…。」
って。
「でも自分から聞くのなんてもう告白してるみたいなもんだよ…
ただでさえ妹見る目で見られてるに決まってるのに…。」
「あんたは三郎さんの妹でいたいわけ?
そうじゃないならさっさと聞いてみなよ。意識してくれるいいきっかけかもよ?」
うーん。うーーーん。
「わかった、頑張ってみるよ…。」
くしくも今日は三郎さんが予備校から家に送ってくれる日だった。
_____________________
予備校帰り、私は予備校の裏の駐車場で待ってくれている三郎さんの車に向かう。
ガチャ
「いつもありがとうございます。
お待たせしました。」
「いえいえ。」
私が助手席に座ってシートベルトをしたのを確認すると、三郎さんは車を走らせた。
三郎さんはバイトがある日は決まって迎えに来てくれた。
なんでも、私の予備校と同じ駅でバイトをしていて、バイトを上がる時間と私の予備校の閉館の時間が同じだからついでだから気にしないでって。
三郎さんの車は簡素でなにもおいていない。
芳香剤がひとつあるだけだ。
音楽は私が聞いたこともないジャズなんかが流れていて、ますます私なんかおこちゃまなんだろうなと思わせる。
「あれ…?」
すると私は足元に見つけてはいけないものを見つけてしまった。
そこにはキラリと光るピアスが片方だけ落ちていた。
「三郎さん、あの。これ、落ちてましたよ。」
私は赤信号で停車したときにそれを三郎さんに渡した。
胸がチクチクと痛む、あぁ、なんだ彼女いたんじゃん…。
「あ、それ!ここにあったのか、
ありがとう、探してたんだ。」
そういって三郎さんはそれを受け取って鞄のポケットにしまった。
「彼女さんですか…?」
私は痛む胸を押さえながら、三郎さんの顔を見る。
するとふいに三郎さんと目が合った。私今、どんな顔してるんだろう。
「…、すこし寄り道して帰ろうか。」
三郎さんがそう言って、いつもは右折する道を直進した。
なんで、違うとも、そうとも言ってくれないんだろう…。
三郎さんが車を止めたのは少し小高いところにある、小さいころ遠足で来た少し広い公園だった。
策の手前のベンチに座ると街が一望できるそこは、ピクニックや花見の時は賑わいを見せるが、今はがらんと誰もいない。
「寒いからこれ巻いて。」
そういって三郎さんは私の首にマフラーを巻いてくれる。
マフラーから三郎さんのにおいがして、少し泣けた。
私は三郎さんに誘導されてベンチに座る。まもなく23時になるのに街は明るい。
「これ…」
そういって温かいお茶を私に渡すと、三郎さんは自分の缶コーヒーを開けた。私も小さくお礼を言ってお茶に口をつける。
「さっきの質問だけど、このピアスは姉のだよ。」
「へ?」
姉?
「結婚して家を出てるんだけど、一昨日に帰って来ててね。
車で家まで送ってあげたんだ。
その時に落としたみたいで、後から気付いて電話で探しておいてってたのまれてたんだ。」
「そ、そうだったんですね…。」
私、勘違いしてたんだ…。
恥ずかしいやら嬉しいやらで顔は暑いし、なんだか泣きそうだ。
「それでこれは俺からの質問なんだけど、さっきピアスを見つけた時も、マフラーを貸した時も、今も、なんでそんな泣きそうな顔をするの?」
三郎さん、やっぱり気づいてたんだ。
「それは…、」
いうべきなのか、わからない。
好きだって口に出したらもう後には戻れないことをわかっているから。
「ねぇ、教えて?」
そういって三郎さんは私の頬を優しく撫でた。
その言葉に、動作に後押しされて自然と私の口からは気持ちがあふれ出していた。
「好きです…。あの時からずっと…。」
とめどなく流れる涙を止める術を私は持ってなくて、ひたすら溢れるそれを三郎さんの手が、指が軽く拭ってくれる。
ちゅ
そう小さく音を立てて三郎さんが私の瞼に軽くキスをした。
「俺はね、興味もない子を毎週家に送り届けてあげるほど、紳士でもないし、優しくもないよ?
ねぇ、俺もさ…」
耳元で囁かれる言葉にまた泣いた。
そうして、私たちは少し二人で過ごして、三郎さんの車で家に帰った。
________
おまけ
「雷蔵、俺、なまえちゃんと付き合いたいんだけど。
いい?」
「?!?!?!?!?
え、待って、え、えーーーーーーー!!」
家に帰って三郎さんが、雷蔵兄を外に呼んで突然そう言った。
雷蔵兄、そりゃあびっくりするよね。
「あー、でもそうか。
なまえがやたら、三郎はいつ来るだの、三郎には彼女いるかだの、連絡先教えろだのうるさかったのはそういうことだったのか~
納得納得。」
「雷蔵兄!////」
このタイミングでそんなこと言わなくてもいいのに!!
ニヤニヤしてる三郎さんを見るとますます羞恥心で顔が赤くなる。
「ふふ、もちろん祝福するよ、おめでとう。
三郎、なまえ泣かせたら、許さないからな。」
「もちろん。」
そう兄たちが会話してるのを聞いて少しだけまた泣いたのは二人には内緒だ。
これからもっと乗り越えなきゃいけないことにぶつかるかもしれない。それでも、つかんだこの手を離さないように、がんばろう。
そうひそかに誓った冬の日だった。
高校二年生でごく普通の女子高生。
そんな私には最近好きな人ができた。
あれは、今年の春から受験勉強のために入った予備校の帰り道のこと。
「君何年生?それ大川高校の制服だよね?
このあとひま?たまには遊ぶのも大事だよ~」
私は最寄り駅から5駅のすこし栄えた駅にある、駅から徒歩10分の予備校に通っていて、その日は自習室にこもっていたら閉館の時間になってしまって、珍しく深夜の繁華街を通って帰宅していた。
予備校までの道は日中はファッションビルやスーパーや本屋がたち並んでいて土日は特に家族連れや学生で賑わっている。だけど、夜になると表情を変えて居酒屋や裏の通りの歓楽街が賑わう大人の街になる。
私はなんとなくこの賑わいが苦手で遅くても9時には予備校を出るようにしていた。
「結構です。」
私はそう言いながら男と目を合わせないようにして、急ぎ足で進む。負けじと隣をキープして男は喋り続けるが聞こえないふり。
目が合わないように歩道とは逆にある車道を見つめる。空車のタクシーが来たら乗ってしまおうか、月5000円のお小遣いを使うのは惜しいけど…予備校の最寄り駅までだったら1000円もかからない。
そう考えても、こんな時に限ってなかなか空車のタクシーは通らなかった。
「ねぇ、いいじゃん、ちょっとぐらいさ
オレ、君みたいな子すげぇ好みなんだけど」
「…」
「ねぇ、無視しないでよ?」
私が無視を決め込むと相手は苛立ったような声で、私の肩をつかんだ。
「やめてください、」
咄嗟に私が振り返ってそういうと待ってましたとばかりに男が私の腕をつかむ。腕の力はやっぱり強くて、恐怖から急激に胸がバクバクと悲鳴をあげた。
「すいません、その子俺の連れなんですけど」
それは突然だった。
私の後ろには男の人が立っていて、私の腕を掴む男の腕を掴んで、きっぱりとそう言い放った。
「はぁ?」
「離せっつってんだよ。」
「っ…」
そう言って男の人が腕を締め上げると男が慌てて私の腕を離して手を引っ込める。
よほど痛かったのだろう。
「なんだよ、男いんのかよ。
もういいよ…けっ」
そう言い残して男が慌てて立ち去る。
だんだんと小さくなる男の後姿に私は胸をなでおろす。思っていたよりも怖かったみたいで、私の手は少し震えていた。
「あの、ありがとうございました。」
私は助けてくれた人に深々と頭を下げてお礼を言った。すると意外な返事が返ってきた。
「はは、いいよ、親友の妹なんだから助けて当然だろ。」
「へ?」
そう言って男の人は私の頭をポンポンと安心させるように撫でる。
私が思わず顔をあげると、そこには見知った男の人がいた。
「あ!雷蔵兄の友達の!」
そこにいたのは兄、不破雷蔵の大学の友人で何度かうちに遊びに来たときに会ったことがある人物だった。
「なまえちゃんだよね?
俺は鉢屋三郎。車つけてあるから、家まで送るよ、」
「あ、ありがとうございます。」
この時、私は自分の胸が高鳴るのを感じた。
こんな風にドキドキと胸が打つのは久しぶりで、自分が恋に落ちたのにはすぐに気が付いた。
三郎さんはその日は兄には会わず、私を玄関の前で車から降ろして帰って行った。私はその日三郎さんに撫でられた感触や助けてくれた時のことを思い出してすごくふわふわした気持ちで眠りについた。
こうして私は三郎さんのことを好きなった。
三郎さんとの年齢は私が17で三郎さんが20歳、たった3つしか違わないのに、高校生と大学生では全然違うように感じた。
「雷蔵兄、三郎さんってどんな人?」
「三郎?突然どうしたの?
っていうかなまえ、三郎の名前よく知ってたね。」
その日家に帰って私はすぐに雷蔵兄に聞き取り調査をした。三郎さんと雷蔵兄はたぶん大学からの友達だと思うんだけど…。
「実は今日ね、変な人に声かけられて…」
「えぇ!大丈夫だったの?」
「う、うん。そこを三郎さんに助けてもらったの。」
「へー、三郎が。」
「それで三郎さんにお礼がしたくて、」
私がそう言うとらい兄がなるほどと納得してくれた。さすがに好きになったとは言わなかったけど。
「三郎はね、僕と大学の学部が一緒でね。鉢屋と不破で学籍番号が近いからそれで仲良くなったんだ。
ハッキリした性格だから誤解されることも多いけど良い奴だよ。」
「ちゃんと改めてお礼したいから次家来るとき教えて!」
「うん、いいよ~」
なんてやりとりをして、数週間で私の口癖は完全に、
「三郎さん、次いつ来るの?」
になった。
でも雷蔵兄おっとりしてるから、なついてるな~くらいの認識みたい。
あれから半年、季節は秋も終わりに近づいていた。
三郎さんが来るときにクッキーを焼いておいたりとかして会話のチャンスを狙ったり、雷蔵兄から三郎さんの連絡先をゲットしてたまにメッセージのやり取りをしたり、予備校の帰り家に送ってくれたりする程度の関係にはなれた。
なれた、けど。
「肝心の三郎さんに彼女がいるかもわかんないって、聞きなよ、それくらい。」
クラスの女友達にあきれたようにそういわれて私は肩を落とす。
「わかってるよ、わかってるけどさ~」
そう、私は三郎さんがフリーなのかもまだ知らないのだ。
ん?雷蔵兄に聞けばいいじゃないって?
私だってそう思ってなんとなく聞いてみたことくらいはある。
「んー、三郎に彼女?今は多分いないんじゃないかなぁ?
でも三郎彼女できてもいっつも別れるまで教えてくれないから、どうだろうな…。」
って。
「でも自分から聞くのなんてもう告白してるみたいなもんだよ…
ただでさえ妹見る目で見られてるに決まってるのに…。」
「あんたは三郎さんの妹でいたいわけ?
そうじゃないならさっさと聞いてみなよ。意識してくれるいいきっかけかもよ?」
うーん。うーーーん。
「わかった、頑張ってみるよ…。」
くしくも今日は三郎さんが予備校から家に送ってくれる日だった。
_____________________
予備校帰り、私は予備校の裏の駐車場で待ってくれている三郎さんの車に向かう。
ガチャ
「いつもありがとうございます。
お待たせしました。」
「いえいえ。」
私が助手席に座ってシートベルトをしたのを確認すると、三郎さんは車を走らせた。
三郎さんはバイトがある日は決まって迎えに来てくれた。
なんでも、私の予備校と同じ駅でバイトをしていて、バイトを上がる時間と私の予備校の閉館の時間が同じだからついでだから気にしないでって。
三郎さんの車は簡素でなにもおいていない。
芳香剤がひとつあるだけだ。
音楽は私が聞いたこともないジャズなんかが流れていて、ますます私なんかおこちゃまなんだろうなと思わせる。
「あれ…?」
すると私は足元に見つけてはいけないものを見つけてしまった。
そこにはキラリと光るピアスが片方だけ落ちていた。
「三郎さん、あの。これ、落ちてましたよ。」
私は赤信号で停車したときにそれを三郎さんに渡した。
胸がチクチクと痛む、あぁ、なんだ彼女いたんじゃん…。
「あ、それ!ここにあったのか、
ありがとう、探してたんだ。」
そういって三郎さんはそれを受け取って鞄のポケットにしまった。
「彼女さんですか…?」
私は痛む胸を押さえながら、三郎さんの顔を見る。
するとふいに三郎さんと目が合った。私今、どんな顔してるんだろう。
「…、すこし寄り道して帰ろうか。」
三郎さんがそう言って、いつもは右折する道を直進した。
なんで、違うとも、そうとも言ってくれないんだろう…。
三郎さんが車を止めたのは少し小高いところにある、小さいころ遠足で来た少し広い公園だった。
策の手前のベンチに座ると街が一望できるそこは、ピクニックや花見の時は賑わいを見せるが、今はがらんと誰もいない。
「寒いからこれ巻いて。」
そういって三郎さんは私の首にマフラーを巻いてくれる。
マフラーから三郎さんのにおいがして、少し泣けた。
私は三郎さんに誘導されてベンチに座る。まもなく23時になるのに街は明るい。
「これ…」
そういって温かいお茶を私に渡すと、三郎さんは自分の缶コーヒーを開けた。私も小さくお礼を言ってお茶に口をつける。
「さっきの質問だけど、このピアスは姉のだよ。」
「へ?」
姉?
「結婚して家を出てるんだけど、一昨日に帰って来ててね。
車で家まで送ってあげたんだ。
その時に落としたみたいで、後から気付いて電話で探しておいてってたのまれてたんだ。」
「そ、そうだったんですね…。」
私、勘違いしてたんだ…。
恥ずかしいやら嬉しいやらで顔は暑いし、なんだか泣きそうだ。
「それでこれは俺からの質問なんだけど、さっきピアスを見つけた時も、マフラーを貸した時も、今も、なんでそんな泣きそうな顔をするの?」
三郎さん、やっぱり気づいてたんだ。
「それは…、」
いうべきなのか、わからない。
好きだって口に出したらもう後には戻れないことをわかっているから。
「ねぇ、教えて?」
そういって三郎さんは私の頬を優しく撫でた。
その言葉に、動作に後押しされて自然と私の口からは気持ちがあふれ出していた。
「好きです…。あの時からずっと…。」
とめどなく流れる涙を止める術を私は持ってなくて、ひたすら溢れるそれを三郎さんの手が、指が軽く拭ってくれる。
ちゅ
そう小さく音を立てて三郎さんが私の瞼に軽くキスをした。
「俺はね、興味もない子を毎週家に送り届けてあげるほど、紳士でもないし、優しくもないよ?
ねぇ、俺もさ…」
耳元で囁かれる言葉にまた泣いた。
そうして、私たちは少し二人で過ごして、三郎さんの車で家に帰った。
________
おまけ
「雷蔵、俺、なまえちゃんと付き合いたいんだけど。
いい?」
「?!?!?!?!?
え、待って、え、えーーーーーーー!!」
家に帰って三郎さんが、雷蔵兄を外に呼んで突然そう言った。
雷蔵兄、そりゃあびっくりするよね。
「あー、でもそうか。
なまえがやたら、三郎はいつ来るだの、三郎には彼女いるかだの、連絡先教えろだのうるさかったのはそういうことだったのか~
納得納得。」
「雷蔵兄!////」
このタイミングでそんなこと言わなくてもいいのに!!
ニヤニヤしてる三郎さんを見るとますます羞恥心で顔が赤くなる。
「ふふ、もちろん祝福するよ、おめでとう。
三郎、なまえ泣かせたら、許さないからな。」
「もちろん。」
そう兄たちが会話してるのを聞いて少しだけまた泣いたのは二人には内緒だ。
これからもっと乗り越えなきゃいけないことにぶつかるかもしれない。それでも、つかんだこの手を離さないように、がんばろう。
そうひそかに誓った冬の日だった。
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