「じゃあ、私はこっちの布団を使わせてもらうね」

私がうなずくと三郎さんは布団に横たわった。
私は何となくその横に座る。

「はぁ、みっともないね」

そう言う三郎さんはなんとも切ない表情だった。
今の自分に対して怒りとやるせない気持ちが伝わってくる。

私はその姿見てなんだか胸が苦しくなった。そんなふうに思ってほしくない…

「三郎さんはみっともなくなんてありません！
ちゃんとここにいてくれるだけで、私は…」

三郎さんがここにいる。
そう実感すると目頭が熱くなる。
私と逃げると決めてくれたこと、そして本当にここに一緒にいてくれることそれだけで立派で、本当に十分なんだ。

「ごめんね、ありがとう。」

そういって三郎さんが私の毛先に優しく触れる。涙がこぼれ落ちる。

「私はなまえちゃんを泣かせてばかりだな」

三郎さんはやはりまだ切なげで、すこし悩ましい表情だ。

「…どんなに泣くことになっても、私は三郎さんといます」

私がそう言うと三郎さんはきょとんとした顔をした。
そんな風に返されるとは思わなかったのだろう。

「もう、三郎さんがいない未来なんてないんです…」

言葉を絞り出すようにそう言った。私だって決意してここにいるんだから。
すると不意に三郎さんの手が私の手を握る。

「ありがとう、なまえちゃんは本当に強くなったね」

三郎さんのさっきとは変わって安堵の表情に変わっていた、その穏やかな表情が、言葉が嬉しくて涙があふれて止まらなかった。
三郎さんが体を起こして私と三郎さんの目線は一気に近づく。

「私は三郎さんを幸せにしたいです」

「はは、奇遇だね。
私もなまえちゃんを幸せにしたいんだ。」

その笑顔がなんだかすごくかっこよくて心臓が飛び跳ねた。そして三郎さんは私の肩をつかんで真剣な顔をした。
胸がドキドキと高鳴る。

「あの夜言ったことをもう一度いわせて」

「はい…」

「私とこれからも一緒に生きてくれるか？」

「私で良ければ…一緒にいさせてください。」

私と三郎さんの唇が重なった。

これから先、なにがあっても二人で幸せになるんだ。こんな私を三郎さんは変えてくれた。導いてくれた。助けてくれた。

その晩、私と三郎さんは手を握って眠りについた。もうこの手を離さないとでも言うように。