「さぁ、ここで今晩は休もう」

そう言って竹谷さんが止まったのはひっそりと佇む一つの宿の前だった。

「ここですか？」

そこはなんてことない宿に見えた。

「あぁ、ここは経営者と仲良くてな
匿ってくれるとまでは言わなくても、詮索しないでくれるだろう」

「あ、ありがとうございます」

竹谷さん、いろいろ気遣ってくれているんだなぁ。私は竹谷さんにリードされながら馬から降りる。何か言いたげな三郎さんも竹谷さんの手を借りて降りた。
竹谷さんの肩を借りて宿に入っていく。

「鉢屋三郎も嫉妬なんてするんだな」

「別に」

肩を貸して歩きながら竹谷さんが不意にそう言った。心底意外だという顔の竹谷さんに不機嫌な顔の三郎さん。

「嫉妬…？」

私は思わず疑問を声に出していた。

「ん？あぁ、だって、俺が##NAME１##ちゃんが馬から降りるのの手伝ったときの三郎のあの顔、完全に”触んなちけーよ”って顔だったもんだから」

「へ！///」

竹谷さんの言葉に思わず素っ頓狂な声を上げてしまった。赤面したのを自覚して思わず頬を抑える。

「俺に嫉妬するくらいなら早く治せよ～」

「八左ヱ門、お前、覚えとけよ」

そういたずらな笑みを浮かべる竹谷さん。恨めしそうな顔をする三郎さんの顔も真っ赤だ。
でも、今まで三郎さんのこんな感情見たことなかったから、ちょっとだけこう、キュンとした。本当に私の事好いてくれているんだ。って三郎さんには悪いけど嬉しかった。