私は竹谷さんが出ていったのを確認して荷物から銭をいくらか取り出した。お金は何かあったときのために家族四人で分けてバラバラに持っていた。

「少ないですが、これを」

そう言って私は和尚さんに銭を渡した。こんなにお世話になったのに自分に今できることがこんなことしか思いつかなかった。

「なまえ、いいんじゃ。それは自分で持っていきなさい。
お前は孫も同然だ、むしろこんな老いぼれが役立って嬉しいかったんじゃ」

和尚さんはいとおしそうに私の頭を撫でた。思えば和尚さんは、私にとって一番長い付き合いなんだなぁ。
いつだって見守ってくれた、私のおじいちゃん。

「ありがとうございます、」

私はそういって深く深く頭を下げた。
助けられている。いろんな人に。
私はやっとそれに本当の意味で気づけたのかもしれない。

「さぁ、鉢屋くんと行きなさい。」

和尚さんの手が私の肩に触れる、私は顔を上げて小さくうなずいた。

私は持ってきていた荷物を背負って、三郎さんに手を貸す。

「ありがとうございました。幸せにします」

三郎さんが和尚さんにそう言うと和尚さんは嬉しそうに笑った。なんだか胸がジンと熱くなる。

三郎さんの足取りはまだ覚束ないが、さっきよりもしっかりと歩けていた。