コンコンコン

その音に胸がドキリと鳴る。
とうとう、不破雷蔵さんがうちに来たのだ。

今朝から慌てて詰めた荷物はどのくらい歩くのかわからないので、あくまで持ち歩いて負担がない程度にした。

｢はい、｣

そう言って私が戸を開けた。父が開けようとしていたが、不破さんは私の話を三郎さんから聞いているはずだから私が開けるほうが話が早く筋が通ってると思った。

｢やぁ、君がなまえちゃんだね？｣

戸を開けるとそこには本当に三郎さんの生き写しのような男の人が立っていた。
私がコクンと頷くと不破さんだと思われる人物は嬉しそうに笑った。

｢はじめまして、僕が不破雷蔵。
三郎から聞いてるね？｣

｢はい、本当にそっくりなんですね。｣

見れば見るほど良く似ている。似ているというよりは三郎さんがよく"似せている"のか。
でも、今の不破さんはいつもの三郎さんよりも少し大人に見える。
なによりも話し方や声、雰囲気なんかは全然違うと思った。

｢ふふ、君には僕と三郎の見分けがつきそうだね。
さて、荷物はそれだけ？
時間がないのに良くきれいにまとめたね。｣

｢良かった。｣

私達の荷物を見た、不破さんの言葉に私は安堵の声を漏らす。
こんな経験はもちろん家族みんな初めてで正直色んなところに不安があった。

｢それじゃあ、今のうちに行こう。
あと数刻もしたらアイセンボンタケの見回りがやってくる。 ｣