第十一話
夢小説設定
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三郎さんが来なくなって一ヶ月の時がたった。
なんだか時間はあっという間で、私の気持ちも少しずつ三郎さんがいない日常に慣れてきたように感じる。
というか、三郎さん自体が夢だったんじゃないか、あの出来事たちはすべて私の妄想だったんじゃないかって、そんな気持ちになる。
それでもあの接吻の感触も、三郎さんに抱きしめられたときの胸板も、力強い腕もすべて覚えている。そして三郎さんのくれた小袖に腕を通すたび、現実だったと実感する。
(今日はお店が退屈だ。)
今日は全然お客さんが来ない、年に何日もないような暇な日だ。でも、最近はなんだか人通りはあるのに店自体は暇な日が多い気がする。みんなどこか忙しないというか。
(こんなこと初めてだな。)
不思議な客足は、三郎さんが去ってからだ。関係あるとは流石に思わないけど、なんだか失ったものが一つじゃないように錯覚してしまう。
「はぁ、」
私がため息をついたその時だった、カッ!っという音を立てて足元に何かが飛んできた。見てみるとそこには手紙が括り付けられた矢のようなものが地面に刺さっていた。
「なにこれ?」
拾って広げてみると、そこには見知った名前があった。
「三郎さん…?」
手紙には三郎と名前が書いてあった。
「姉ちゃんなんかあったー?」
中から弟の声がして咄嗟に胸元にしまう。きっと、隠れて読んだほうがいい…。そう判断した私は厠に行くふりをして店の裏に回った。
手紙にはこう書いてあった。
「なまえちゃんへ
前略、大切な話があります。今晩裏の戸から出てこの間の場所へ誰にも云わず来てください。三郎」
とても簡易な内容だけど、三郎さんからの手紙というだけで心がざわついた。
大切な話ってなんだろう。
正直、あの小川での話の雰囲気からして良い話とは思えない…。
不安な気持ちと三郎さんに会える事実に高ぶる気持ちを抑える。
夜を待とう。
今の私にできることは何もないのだから。