第十話
夢小説設定
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あの店に行かなくなって3週間が過ぎた。
自体は最悪の方向に進んでいる。
「三郎、わざわざこんなところまで来て、なにかあったんだね?」
久しぶり会った雷蔵はすこし線が太くなった気がする。そしてあの頃よりも落ち着いた印象だ。
私は身辺整理と言って少しの休暇をもらった。私の忍務はクロトマヤタケモドキ城とアイセンボンタケ城の行き来くらいで遠く離れた場所に行くことは基本的にはない。そして雷蔵もフリーのプロ忍として忙しく、会うのは本当に久しぶりだった。
「全く、雷蔵にはすべてお見通しだね。」
「ここ最近胸騒ぎがしてね、勘右衛門と兵助が君を訪ねたのも聞いたよ。」
「そうか。」
「よかったら、座ってよ。」
雷蔵に勧められて雷蔵の正面に座る。
出されたお茶に口をつけるとなんだか少し落ち着いた。
「それにしても、君のその変装を見るのは久しぶりだね。
僕もこの数年で少しは年を取ったのに、君のする僕の変装はあの頃のまま。若い頃の自分を見ているようで、なんだか不思議な気持ちだ。」
そう言って雷蔵は一口お茶を飲んでまた口を開く。
「ねぇ、三郎、自分の進んだ道を悔いているのかい?」
雷蔵が澄んだ瞳で私に問いかける。
雷蔵にはどんなに長い期間会わなくても嘘をつけない。だからこそ、私も無理をして会いに行くことはしなかったのかもしれない。
「そう、なのかもしれない。」
私は慎重に言葉を選ぶ。
そうしないと全てをぶちまけてしまいそうだ。
「自分の進んだ道を振り返ることなんてずっとしていなかった。
のらりくらりと生きてきた自分には合っていると思ったさ。顔を変えて生きていけば、何も困ることはないと思っていた。」
自分の思っていたことを口に出すなんてどれくらいぶりだろうか、今の忍務についてから常に自分を隠して生きてきた。
今までの自分を忘れていくような恐怖もあった、忍術学園の頃と変わらない自分でいたかったのかもしれない。
「仲間は、大切だ。
雷蔵…君や他の忍術学園のみんなも。
でも、違うんだ。」
私は拳を強く握りしめる。
仲間とは違う大切を私は知ってしまった。
そして、変わらずにいることができないということも。
「三郎、自分の感情を大切にするのはそんなにいけないことかい?」
「わからない…」
思わず俯く。
少し年を取った雷蔵を見るのが、こわい。
「僕は相変わらず迷いグセがある。それでもそれなりに自分で決められるようになった。変化はなにも恐ろしいことばかりじゃないんだ。」
「…。」
「三郎、君には守らなければいけない大切な人ができたんだね。」