かといって、特に思い当たる場所はない。

職場にはさすがにいないだろうし。
っていうかビル自体がもう閉まってるか…。

とりあえず駅前に向かう。

もしかしたら道中にいるかもだし…



僕は駅まで走った。
なんだかこんなに必死に走るのえらく久しぶりだな。






＊＊＊


(･･･あれは、)


「･･･利吉さんと、なまえちゃん？」


先日のことを思い出す…。
もしかして本当により戻したのかな…。

僕の中に焦燥感と嫉妬が起こる。


こんな感情、知らなかったのに･･･

頭がグワングワンと揺れた。







「あーーーー！らいぞうだ！！！！！！」



するとさっきの方向からなまえちゃんの声が聞こえた。

さっきまでの感情を押し殺して僕はなまえちゃんに駆け寄った。


「なまえちゃん！
もう、連絡もよこさないで！心配したよ！」


僕がそう言うと彼女の方から僕に抱き付いてきた。


ドクン･･･


「なまえちゃん…？」


僕は今度は跳ねる鼓動を抑える。
あー、もう！今日は心臓に悪い日だなぁ

「雷蔵くん、ナイスタイミングだったね。
ちょうどさっき店の閉店と同時に出たところなんだ。」

利吉さんが僕になまえちゃんの荷物を預ける。

「はぁ、どうも。」

「ふふ、若いね。
じゃあ、なまえ、ちゃんと考えるんだよ？」


そう言って利吉さんは優しく彼女の頭をなでる…。
むっとする気持ちを抑えて僕は利吉さんに別れを告げてその場を離れた。