それはほんの数時間前の昼下がり、

「不破雷蔵くん、悪いんだけどあとで僕の研究室の資料の整理の手伝いを頼めないかい？」

そう利吉さんに声をかけられたのがことの発端だった。

「先生のいまの研究テーマって？」

「日本古典文学の評論だね。」

「わー！やりますやります！
むしろ手伝わせてください！」

完全に餌に釣られた。
だってテレビにも引っ張りだこの若手文学評論家のホープでしかも僕の大好きな古文の研究…！
断る理由なんてまっっったく見当たらない。
こんなに悩まない僕はなかなか見れないぞっていうくらいの即決だった。

「そう、ありがとう。君なら引き受けてくれると思ったよ。
そしたら今日の3限が終わったら僕の研究室に来てくれないか？」

「は！はい！」

嫌な笑みを浮かべてたような気もしなくもないがその時の僕は気にも留めなかった。


そして3限が終わって研究室に行くととてつもなく綺麗な研究室と、整理された資料と、不吉な笑みを浮かべる利吉さんがいたのだった…