雷蔵に、ごめん会社の付き合いっていう連絡を入れる。
すいません、一人飲みです。



私は嘘つきだ。


人に嘘ばかりついてる。
本当は、会社の人たちなんか好きじゃないし、仕事なんてやりたくない。
友達だってぶっちゃけ嫌いじゃない人ってだけだし。
ある程度一緒にいて、楽しいだけだし。

家族だって別に心を許してない。
あの人たちに必要なのは、”わたし”じゃなくて、勉強のできる才女の、みょうじなまえなんだから。
私の本当の姿を知ったらきっとガッカリさせてしまう。それはそれで構わない気もするけどせっかく25年間もがんばってきたんだから継続しようと思う。

だから、父親の海外出張が決まったときの歓喜ははんぱなかった。
大学2年に出て行ってからの私のパラダイスっぷりはやばかった。
そして、23歳、社会人一年目のとき、まさかの襲来。

雷蔵。

別に嫌いってことはなかった。
可愛い親戚の男の子くらいのイメージ。
本当は、断ろうと思ったけど、まぁ、親に勝手に決められたし。
家族と住んでもあんま変わらない知って気持ちだった。



私は嘘つきだった。


雷蔵にバレないように良い親戚のお姉さんぶり続けた。

雷蔵はすごく良い子で、私にいっぱいいっぱい気を使ってくれた。
”完璧なわたし”を心配したり疑った人は初めてだった。