「ん…」

目を覚ますとそこは見覚えのない天井でした。見知らぬ布団に区切られた空間、きっと保健室でしょう。
カーテンの向こう側には人の気配。私はとりあえず身なりを整えてカーテンを開けました。

「お？目、覚めたか？
伊作〜、新入生の子、目覚ましたぞ」

｢はーい、ちょっとまって、これだけ｣

そこには上級生らしき男の人が二人いました。目がキリッとした黒髪の男の人が作業中のもう一人の人に声を掛けます。

「俺は三年の食満留三郎、よろしくな」

握手を求められて私は咄嗟に応じました。
食満留三郎先輩を顔を見上げると"ショタコン"とデカデカと書いてありました。

（男の人なのに、ショタコンですか？）

ショタコンとは、少年や小さい男の子を対象に抱く愛情・執着のこと、またはそのような感情や好みを持つ者のことを指す造語。正太郎コンプレックス（しょうたろうコンプレックス）を語源とする。（Wikipediaより引用）

今まで女性のショタコンの方をどこかで見かけたことがありましたが、男性は初めてです。

（まぁ、ショタコンは女ですでに育ってる私には関係ありませんから。あまり深く考えるのはやめましょう。）

｢はじめまして、一年生のみょうじなまえです。よろしくお願いします｣

｢おう！｣

食満先輩はそうニコっと笑って私の頭をぽんっと撫でました。ショタコンさんですが、とても良い人そうです。

｢あとあっちにいるのが善法寺伊作。オレと同じ三年生で、保険委員長だ｣

そう言って食満先輩は奥の机でなにやら書類の整理をしている男性を指差しました。

「ごめんね、もうすぐ終わるから向こうの椅子に座って待ってて～」

保険委員長の言葉に私と食満先輩は保健室に入ってすぐの椅子に腰掛けました。

「寝て、喉乾いたろ？
お茶入れるよ」

｢あ、ありがとうございます｣

私はペコリと頭を下げた。食満先輩はどうやら優しい変態さんみたいです。

｢ほら、｣

私は手渡されたお茶にお礼を言って一口。暖かいお茶が寝て乾燥した喉に優しくしみる。