西の蜜
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本棚全体の夢小説設定龍が如く【真島組・真島吾郎・佐川司メイン】
銀魂【銀時メイン】
夢主が、最強主人公になったり、恋のヒロインになったり、好きなキャラが弱ったり、the自己満足。
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ここは蒼天堀。
東の神室町、西の蒼天堀、こう対比させたる方が分かりやすいだろうか。
あたしがこの街に来たのは1年前の冬。
自分の父親が何の仕事をしていたのかは、結局亡くなるまで話してはくれなかったが、葬式に参列してくれた人様をみて…分かった気がした。
恐らく、近江連合の組員、それも割と重要な役職持ちだったようだ。
それは参列者の数や、貫禄ある人物が何人も来ている事から、何となく感じた。
父は家族である自分に、裏社会と何の関係がないようにしていてくれていた。
母親がどんな人だったかは、あたしが生まれた時に亡くなった為、全く知らない。
それに聞かない。
幼い時には、近所のお兄さんだという人、数人が面倒をみてくれていた。
今となっては、近所の家に遊びに行き、父が迎えに来るまで、遊んで、宿題をして、ご飯を食べていた場所は、当時の組事務所だったのでは無いかと思う。
記憶は曖昧ではあるが…
中学にあがる時からは、女子では珍しいサッカーの推薦で、ずっと寮生活だった。
思春期という事もあり、父と頻繁に連絡を取る事は無い。
年に一度会う時も、とある喫茶店で会うだけであった。
ただ中学最後の試合で怪我を負い、その怪我を隠しながら無理して試合を続けた為、サッカーをプライヤーとして本格的に続けるのは難しくなってしまった。
そのお陰でというのか、無事試合にら優勝はできた為、後悔という感情は特に生まれなかった。
その後の進路について当時は悩んだ末、海外に飛ぶ事に決めた。
スポーツに関わる勉強と仕事をしながら、自立した生計をなんとかたてていた。
そんな生活も板についた10年後、父が急な病に倒れ、病院に運ばれたと連絡がきたのであった。
そうして葬式である今日、こうして挨拶をにていると、ふと何処か懐かしい顔が数人あった。
向こうは何か照れ臭そうに、頭を下げてくる。
幼少期面倒をみていてくれた組員達だ。
彼らが今もこうして裏社会の中で生きている事が嬉しく思えた。
知っているのは彼らだけではない。
自分としては何方なのか分からないが、向こう側があたしの事を一方的に知っている事が多い。恐らく自分の幼少期を知っている方々だろう。
色々な方と挨拶をした。
その時の1人に、今となっては生活を共にする事となった佐川司もいた。
「俺ぁ、貴方の親父さんと同じ代紋の兄弟分だった、佐川、というもんだ。あんたは、ちえさん、だろ?」
「はい、ちえと申します。父が生前大変お世話になっておりました。」
ふっ、と佐川は鼻で笑う。
しっかりとした娘さん、立派に育てあげたよ、兄弟。
と、佐川は空を見上げながら煙草に火をつけた。
あたしもその姿につられて火を付ければ、同じように空を見上げてしまう。
「その言葉、父が恥ずかしくない様に今後の人生歩んでいこうと思いますよ。」
再びふっ、と佐川は口元をあげ、煙草を消した。
彼もそろそろ帰るのかな?
という空気だった時…
ドカーーン!!!!
『!?なんだっ!?』
『近江連合の車が爆破したぞ!』
『どこの組のもんだ?!』
父の葬儀場で、前代未聞、爆破事件が起こる!
ちえちゃんこっちだ!と、佐川の誘導に従い、しばらく影に隠れ様子を見る。
ありゃ、寝返り組織か…
佐川が呟く。
寝返り?裏切りって事ですか?
「ああ、そんな感じだ。あんたの親父さんは本当によく慕われていたし、上からも信用されていた。」
そんな重要ポストがいきなりいなくなったんだ。
あらゆる方面からの勘違いや、権力の取り合いが起きて、バァカな奴がこんなマネしたんだろう。
「極道も大変なんですね…」
そんな呑気な事を言っていると、
「…流石だね!親譲りだよその冷静な呑気さ。」
佐川に言われる。
褒められているのか、貶されているのかは置いておき、父と似ている部分があった事に少し誇らしげに思った。
そこからは、父親の意思を継ぐ者、改革を考える者、それぞれ考えが行き違ってしまった同じ組内の殴り合いが始まった。
「これは、巻き込まれたら大変ですね。もう式事は終わりましたし、片付けは斎場の方に任せて…」
「出るぞ。」
佐川と、何処からか逃げれないか?と出口を探していると、佐川の事を後ろから狙う奴が目についた!
5人程が襲ってくるが、そのうち1人は銃を構えている。
「佐川さん!?」
というと、佐川はすぐに胸ポケットから銃を取り出したが、あたしも反射的に目の前にあった石を見つけて銃にむけて蹴っていた。
ばしんっ
「お見事!」
銃を構える右手にクリーンヒットし、獲物を落とす男をみて、佐川が一言言う。
「大人になって、サッカーやってて良かったって久々に思いましたよ」
その勢いにのり、後ろから襲ってくる残り4人をちゃちゃっと気絶させた。
男に負けない運動神経と、サッカーで鍛え上げた蹴りに関しては、格闘家としてもやっていけるかもしれない。
「……おい、可愛いお顔が台無しよ。」
「惚れました?」
「ふっ…ギャップがたまんねぇよ。」
佐川と二言三言冗談を交わしながら
出口に向けて、プラス数十人を倒した。
ふぅ、ある程度離れた場所まできた。
「ここまで来れば、一安心?ですかね。」
「ああ。…そういや、ちえちゃんはこれからどうすんだ?また海外へ飛ぶのか?」
そうですねぇ…と歯切れの悪い返事をしながら、ちえも悩んでいた。
若い時からやってきた海外での生活、また戻ってキャリアアップも良いが、日本で新しいステップアップも良いかもしれないなどと悩んでいた時であった。
そんなちえの様子を佐川は何も言わずに見ている。
「なぁ、本当にやりたい事が見えるまで、俺んとこ来るか…?」
え、極道…?と思った。
そして佐川はどういう意味で言ってるんだ?とも思った。
佐川はそのまま話を続ける。
組員としてというよりも、秘書の様な側近という事をらしい。先程の強さはもちろん、これからの時代に必要な、英語力や行動力を買われたらしい。
「ま、しばらくいつ今日みてぇな危ない目が、ちえちゃんの周りで起こるか分からねぇしな。」
それが佐川の一番の本音だろうか。兄弟分であった父親が、最後まで大切にしていたものだ。なんて義理堅い集団なんだと尊敬する。
「そうですねぇ。良いかもしれないです。」
過去の事を振り返りながら、今に戻る。
佐川さんとは、決して恋仲とかいう関係では無い。
ただ同じ空間で生活をし、ご飯を食べて仕事をする。
今はそれが当たり前になっていた。
それが1年も前になるなんて、時が経つのは早いものだ。
そして今、佐川の代紋違いの兄弟分である、東城会嶋野組組長、嶋野太より連絡があったとの事だ!
珍しい…
用件は、
「うちの犬を暫く蒼天掘で飼ぅてくれんか?」
と。
それだけ聞いて、あたしは犬…?まぁいいんじゃない?と思っていたが、まさかそれが人であり、一生の付き合いになるとは思っていなかった。
その犬が蒼天掘に来るという日。
1人の男は、嶋野の穴倉から出されて、そのまま車に乗せられ、ここの事務所に来た様だ。
1年間穴倉と呼ばれる劣悪な環境と拷問に耐え、今日太陽のもとへと出てきたという訳だ。
事務所の外へ一台の車が止まり、両腕を後ろで鎖で縛られたまま男が事務所に入ってきた。
事務所は二階にある為、ゆっくり一歩ずつ、しゃり、しゃり、と鎖が近付いてくるのが分かる。扉が空いた時に目に入ってきた、目の前の男の光景に、つい目を晒したくなってしまった。
とても清潔感があるとは言えない。
長い髪は後ろで括られているが、汗かかけられた水か、濡れている。
上半身は裸で、腹周りは青黒くなるまで酷い痣となっている。
肋骨はもちろん、内臓までやられるぐらい、鈍器か何かで何回も殴られたのであろう。
胸元や腕まわり、足元には鋭利な何かで切られた傷がたくさんある。
切られては、熱しられた鉄棒で火傷させ、血を止められただろう跡もある。
そして何より…左目をつぶされている。
いつつぶされたのか。
最近ではない事が分かるくらい、傷は塞がっているのだろうが、うみが出ており炎症を起こしている。
ふらふら…と、自分の身体でさえ支えられてない状態の男は、「入れ」と言われ部屋に入った。
運んできた奴の手が離れると入ってすぐの所で、がくんっ、膝から崩れ落ちた。
「ぐっ……」
きっと生きる為の食事や睡眠でなく、死なない為の食事や睡眠だけを取らされてきたのだろう。
頬はこけ、目の下には大きなクマ、大変疲れ切った顔をしている。
元々筋肉質なのだろうが、今は鎖骨やあばらが浮き出るほど、肉はけずられていた。
事前に佐川からの指示があった通り、それでも警戒されない女であるあたしが、男に近づく。
鎖を外しながら、「名前は?」とだけ聞く。
「真島……吾郎…」
それだけ言うと、噛みつく様な目で、佐川の事を睨みつける。
「おうおう、身体がそんなへばってても、目は死んでねぇんだな。兄弟が可愛がるわけだ。」
と、佐川は言いながら
「俺ぁ、佐川、というもんだ。ある程度は兄弟から聞いてるかもしれねぇが、しばらくの間蒼天掘で仲良くしよぅじゃねぇか、真島ちゃん。」
「……。」
鎖、外してやれ。
佐川の一言で、真島をここまで運んで来た者が外す。そしてその男はこちらに一礼し、そそくさと事務所から出て行った。
カシャンっ
鎖が完全に取れると、久々に両腕が解放された為か、ぶらんと身体の前に両腕を出す。
その真っ青な顔で、手の平を見ていた。
すると急にうずくまりだし、嗚咽している。
ぅ……おぇっ…
もちろん、彼の腹の中には何も入ってなく、出せる物が無い事でよりつらそうであった。
「あたしは、ちえって言うの。とりあえず、この部屋の先にお風呂やトイレがあるから、スッキリしてきなね。」
きっとボロボロの身体で来るだろうとは踏んでいた為、替えの服や、胃に入れてもびっくりしないよう白湯等は、あらかじめ脱衣所に用意しておいた。
「けほっ…はぁ、はぁ……。」
真島は落ちついた頃合いで、壁をつたわりながら、ふらふらと大人しく隣の部屋に向かって行った。
「あの人風呂の中で死なないかな?」
「さーな。そん時ゃ、俺のせいじゃねぇよ。嶋野の兄弟の痛めすぎだろ。」
そんなもんかね、と言いながら、五分粥くらいを作って待っててやる。
小さめに切った野菜と、卵も添えて。
なに、ちえちゃん、俺には飯作ってくんないの?!俺も朝からバタバタで何も食ってないんだけどさぁ。
隣で佐川がうるさいので、同じ具材でも、別々の鍋でそれぞれの粥を作ってやる。
1時間程しただろうか。
そろそろ死んでないか、佐川さん見なくていいの?
あ〜〜〜と、面倒臭そうに立ち上がる佐川だか、その時パタンっと扉が開く音がした。
「お〜水も滴る良い男とは、この事だね。ひゅ〜」
そうちゃちゃを入れると佐川に頭をポンっとされた。
はい、黙ります。
そう言って、目の消毒だけしようと真島に近づく。
椅子に座らせ、とりあえず救急箱にあった眼帯で左目を隠してやる。
佐川もその様子を横目でみているだけで、今のボロボロの真島には気を遣って何も聞かない、しない。
もう一杯白湯を出してやる。
そして先程作っておいた粥も置いてやる。
しかし、なかなか手を付けようとしない真島。
それを見ていた佐川は、真島の目の前の椅子に腰掛けながら、俺にも白湯くれと一言。
ことっ。
同じように一杯出してやると、酒を乾杯するかの様に、真島にコップを差し出して促す。
流石に、今の上下関係は真島も理解しているようで、細く血管の浮かび上がった腕で乾杯をする。
佐川は、自分用に作られた粥を勢いよく食べ始める。
「ちえ、今日のも美味いなぁ」
「イケメンに召し上がってもらうからね、いつもより気合いいれたんよ。」
「俺の事か?」
違うよ、ばか。と言いながらじゃれあっている目の前で、真島はまだスプーンを取らない。
「なんだ、食わねぇのか。」
「……食欲、…あらへん…。」
まぁ、そりゃそうか。
とも思いながら、早くしっかり体力戻さないとだよ?
「その通りだ、真島ちゃん。お前は今日から俺に飼われてんだ。色々と手伝って欲しい事も沢山ある。ただ、そんな俺も鬼じゃあない。すぐにとは言わねぇから、少しずつ体力戻せ。」
「……かちゃり」
しばらく粥を見つめた後、一口食べ始めた。
少し目を見開いたのが分かる。
まともに内臓の機能を使っていなかったから、先程の嗚咽もあったのだろう。それは子猫の様に一口ずつゆっくり食べている。
「どうだ、久々の人間の飯は?」
うまい…と一言言って八分目くらい食べただろうか。
申し訳ないとあたしに一言言って、ご馳走さんと手を合わせている。
無理もない、急に胃も物が入ってきて驚いている事だろう。
「しばらく三食あたしが作るからね、しっかり食べんのよ。仕事できるくらい体力戻ったら何も関与しないからさ。」
ああ、と言い、とても眠たそうな顔をしている。緊張が久々の食事をした事ですっと取れ、睡魔が襲っているのだろう。
事務所の空き部屋を真島用に準備してある
。しばらく、監視しながら体力回復をはかるため、準備した次第だ。
「今日はゆっくり休みな、真島ちゃん。」
「おおきに、佐川はん、ちえちゃん。」
おやすみぃと声をかけ、佐川と自分に珈琲を入れ、煙草に火を付ける。
だいぶやられてんなぁ、真島ちゃん…と少し心配した様な声色で、佐川が言う。
まぁ若いし、しばらくすればまたイケメンに戻るでしょう。
「お前、浮気か?!」
浮気もなんも…大丈夫よ、佐川ちゃんもかっこいーよ。ふふっ。
お前バカにしてんのか。
そんなこんなで、約2週間、だいぶ顔つきや身体つき、体力も戻った真島は、佐川のしのぎの一貫、グランドで支配人として働き始めるのだった。