【番外編】狂犬すとーりー
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本棚全体の夢小説設定龍が如く【真島組・真島吾郎・佐川司メイン】
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夢主が、最強主人公になったり、恋のヒロインになったり、好きなキャラが弱ったり、the自己満足。
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4月。
日本人にとって、この季節をどう感じるか。良い悪いも含め、ドラマのある季節だと思う。
春が好きと言う者もいるただろうし、春が嫌いと言う者も勿論いる。
何で春が好きなのか?
何で春が嫌いなのか?
人それぞれ理由はある。
それでも変わらずに
無情にも
桜は綺麗に咲き続ける。
4月の1週目は、組の花見大会が毎年開催される。
毎年恒例の行事であり、毎年同じ場所で、若衆の面々は年によって異なるが、役職以上の面々は、ここ数年は変わっていない。
皆生きて、今年もこの桜の下で酒を飲める事がどれだけ幸せな事か、少々感傷的になりながらも、盃を傾ける。
4月の2週目は、ちえとの花見だ。
人を見てるのか、桜を見てるのか、そんなごちゃごちゃした様な場所では無い。
2人が喋らなければ、桜の散る音が聞こえるのではないかというくらい、静かで人気が無い所。
しかし囲まれるのは柔いピンク色。
ここでちえの手作り弁当(つまみ)と酒を飲むのが堪らない。
4月の3週目、ここが真島が春を好きになり切れない理由だ。
毎年必ず、動けなくなる。
理由は単純明快、無い目が疼くから。
単純な理由の中に、計り知れない程の背景がある。
目の前に広がるピンクの世界を、真っ黒に、または真っ赤に、変えてしまいそうな肌に……
4月も半ばが過ぎた、とある夜の事。
いつもの通り帰宅した真島は、シャワーを浴びて冷蔵庫から缶ビールを取り出す。
カシュッと音を鳴らし、炭酸の勢いでついた親指の泡を舐める。
ゴクッゴクッと喉を鳴らしながら、缶の半分程を飲み干す。
「っかぁ〜〜〜」
こればっかりは、幾ら一人の空間だとしても、つい声を出してしまう。
(今日はちえ遅いんやな…)
そんな事を考えながら、特にいつもよくある事なので、気にせずテレビを点ける。
すると丁度天気予報をやっていた。
今週末は雨なんか…
今年も来るんやな…
思いにふけながら、タバコに火を付ける。
ふぅ…
と煙を吐けば、丁度玄関から、ガチャっと音が聞こえた。
「ただいま〜」
ちえが帰ってきた。
お疲れさん、と声をかけ、「先一杯やってんでぇ」と一応言っておく。
ちえも何か機嫌が良いのか分からないが、鼻歌交じりの中、
「お、いいね。あたしも早いところ風呂入って飲もうかな!」
と、風呂場の方でガタガタと支度をしているようだ。
人の生活音はどこか安心するものがあるなぁ、と思いながらも、テレビのチャンネルをぽちぽち変えながら、最初の1缶を飲み干した。
2缶目を冷蔵庫へ取り行こうかと思いつつも、ちょっと面白い芸人のネタが始まってしまい、テレビから離れられずにいる。
すると、
「つめたっっっ」
急にひやっとした物が自分の右頬に当てられ声を出す。
へへっと言いながら、驚かさせた犯人のちえが、2本の缶ビールを持ち立っていた。
はいよと言って渡された缶ビールを、おおきにと受け取る。
2人並んで座るソファは、広過ぎず狭過ぎず、とても心地良いものだ。
『かんぱ〜い』
缶と缶を軽くぶつけ、ちえもごくごくと美味しそうにビールを飲んだ。
「いやぁ〜やっぱり美味いな、ビールは!
……あ、何かつまむ物用意しよか?
あたし、今日何も食ってないからお腹空いたわぁ」
「任せんでぇ」
「ごろちゃんのお腹具合は?」
「ん、せやな〜。朝プロテイン飲んだだけやけど、そんな腹減っとらんなぁ」
そっかぁ、それなら軽く作っちゃおう〜と缶ビール片手に台所へ向かうちえ。
トントン、がしゃがしゃ、という音を背中に、少し左目の奥がズキズキするのを感じている真島。
手際良く、3品程つまみを作ったちえは、20分ほどでソファに戻ってきた。
キッチンでも飲みながら作ったのであろう。
再びソファに座りながら、カシュッと缶を空けていた。
「うまっ。天才だわ、自分。」
ちえが隣で自己満足している中、真島も左目を極力気にしないよう、たしかにちえの料理は旨いなぁ!と会話しながら、努めていた。
しかしそんな努力もちえの前ではお見通しで、
「どう?左目は。無理しないでね」
と声をかけてくれる。
大丈夫??と聞かないのが、彼女の良いところである。
大丈夫でない事を知っているからだ。
気にかけてくれる、そして深く追求してこない、その優しさだけで十分過ぎる。
ソファでゆっくり晩酌をしながら、どれだけの時が経ったのだろうか。
お互い自分のペースでそこそこお酒は飲んだ。
今飲んでいるコップに入った物を飲み終わったら、そろそろ寝るかと考えている頃である。
真島がタバコをくわえると、ちえがジッポに火を付け、自分に向けてくれる。
流れで自分のタバコにも火を付け、2人でハイライトを吸う。
同じハイライトでも、真島は青で、ちえはメンソール緑だ。
換気も兼ねて窓を開けてみると、外からじめっとした、これから雨が降る匂いがした。
「…寝よか」
「だね」
簡単に机の上を片付けて、並んで歯を磨き、ベッドに入る。
ほろ酔いの2人は、おやすみと言葉を交わすと、あっという間にそれぞれ夢の中へ落ちていった。
しかし、真島が落ちた夢の中は、もう何十回、何百回と見た事であろう、過去の現実の夢だった。
次に何が起こるのか、全て分かりきっているはずなのに、あの時の怒り、苦しみ、痛み……全て当時のままリアルに感じている気がする。
左目の目の前に鋭利な道具が突き付けられる。
何度も見た夢でも、この瞬間が一番気持ち悪い。
冴島の兄弟へ対する想い、これも忘れず感じるものだが、肉体的なストレスとして、このシーンが一番気持ち悪い。
ぐしゅっっっっ
ガバッッッ!
「っっはあっ……はあっ…」
勢いよく起きた。
嫌な冷や汗を感じつつ、さっきとは比べものにならないくらい疼く無いはずの左目。
はあっ、はあっ、と息切れが止まらない。
隣で寝ているちえを起こしたくないという気持ちから、息を殺そうとしているが、全然できていない。
うっっ…
はあっ、はあっ…
左目を手の平で押さえつけ、なんとかこの痛みのピークが治らないかとじっとしている。
左側に置いてある、サイドテーブルにあるはずのペットボトルの水を手探りで探す。
すると、右側から、キャップの空いたペットの水が差し出される。
「どーぞ」
それだけ言って水を渡してくれるちえ。
ただ眠いだけなのか、それとも気遣いなのかは分からないが、それだけ言うと再び横になっている。
ただそれが今の真島にとっては、変に気を遣われるより、心が楽になる。
水を一口飲めば、少し気分が落ち着く気がした。
普段ならタバコを手を出す所だが、今は吐き気が多少あり、吸えるような状態では無かった。
サイドテーブルの引出しに常備して置いてある、鎮痛剤を飲む。
無いはずの目が痛む、医学的に根本的に効く薬は無い。
薬では、和らげる事しか出来ないのだ。
この症状と20数年付き合っている真島にとって、慣れっ子ではあるが、毎年耐え切れない程の苦しみがある。
起きていると痛みに気がいってしまう為、再び横になる。
体は日中しっかりと活動している為、疲れているはすだ。
浅い眠りを繰り返した為、眠れたのか眠れてないのか、よく分からない思考の中、ベッドの中で右隣が軽くなり自分が沈む気がした。
「どう?水持ってくるね」
と、起きたちえがベッドの左側に回ってきており、少なくなったペットの水を新しく持ってきてくれた。
サイドテーブルに新しい水を置くと、優しく左目についた眼帯の上から唇を落とす。
魔法にかけられた様に、少し楽になったような錯覚がする。
「…あかんわ…。痛みと…気持ち悪ぅて…しばらく動けへん…」
唯一本音を言えるちえには本音をぶつけた。
そして、ちえはそっと真島の眼帯をはずし、今度は直接傷のある左目に唇を軽く落とした。
そして頭の上に置いてある真島の携帯に自然と手を伸ばし、何処かへ電話を鳴らしている。
「西田さん、おはよ、お疲れ様。
…うん、そうそう。
暫くよろしくね。」
真横で組員の西田と電話しているはずの声が、遠くの方で聞こえる気がした。
真島はこの時期必ず休暇を取るという事は、真島組員も承知している。
ただその理由が、隠された左目にあるという事は、誰が知っているのだろうか。
直接言った事さえ無いが、西田辺りが何となく察しているくらいかもしれない。
先などのちえがしてくれた電話先でも、向こうの方から、親父の休暇ですね、と話が進んだ。
真島の携帯を元あった頭の上に置くと、
「ずっとそばにいるからね」
とだけ耳元で囁いた。
「…おおきにな…
…っぐっ、、まーた波が…きたわ…」
いつもの軽い調子で話そうとしてるのは分かるが、相当しんどいのだろう。
呼吸が早くなり、右目も険しくつむり、左手で左半分の顔を押さえつけている。
外では雨がしんしんと降り続ける中、真島はベッドの中でのたうち回る。
ああああぁっ…!
はあっ……
はあっ……ぐっ…
げほっっ……ぅっ……
はぁっ…
朝も昼も夜も…
ずっとこんな様子で、疼く痛みと吐き気に苦しむ約3日間。
薬を飲んでから2.3時間は吐かない様に努力する。
水以外はとってもでは無いが、受け付けない。
この3日間程だけは、必ずちえも家にいてくれる。
痛みの波が少し引いた時は、フラフラの状態でもリビングへ行くようにしている。
ずっと寝ているだけだとおかしくなる。
リビングに行けば、必ずちえはいてくれる。
今は、その環境があるだけで、真島は幸せだと思う。
桜も葉桜になる頃、真島の体調も落ち着いてくる。
自分のフラフラの状態なんて、面子で生きている極道にとっては、絶対に外で見せてはいけない。
桜が来年に向け花びらを散らせ切る頃、真島はそれを隠す様に再び眼帯を身に付ける。
そして、体調悪い時期は、まともに食事、睡眠、運動をしていない為、ちえの栄養満点の手料理と、夜の運動と睡眠をしっかり取り、東条会直系真島組組長として、ヒッヒッと言いながら神室町を歩き出した。