【二章】新たな出会い
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本棚全体の夢小説設定龍が如く【真島組・真島吾郎・佐川司メイン】
銀魂【銀時メイン】
夢主が、最強主人公になったり、恋のヒロインになったり、好きなキャラが弱ったり、the自己満足。
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ふぅ……
車中にハイライトの香りが籠る。
2.3cm開けた窓から、涼しい風が入りながら、2人から吐かれた煙もまた出ていく。
青ハイライトも久々に吸うとうまいな…
と、ちえは呑気な事を思いつつ、普段自分が吸っているメンソールハイライトのジャケットをただ眺めていた。
真島からもらったタバコを灰皿に押し潰した後、何となく左隣に気をやってみれば、何処か落ち着かなく2本目に火をつけ始めた真島がいた。
「……。」
ちえは窓から外を眺める事にした。
「20年前。」
「…なんや?」
急に淡々と喋りだしたちえに、真島もゆっくりと相打ちをする。
「あたしが、最後に兄の龍司と顔を合わせて話したの。」
「…ほぅ?」
ちえが、兄の龍司と最後に会ったのは20年前の事だ。
当時は、関西にいた。
とは言っても一緒に住んでいたという記憶は全く無く、ちえ自身は孤児院で育った。
親が誰なのか顔も分からずにいたが、自分の名前を言えるようになった頃には、自然と「真島ちえ」と名乗っていた。
兄の龍司も何処でどう育ったのかはよく知らないが、近江連合という極道が、少なからず身の回りの近くに存在していた事だけは分かっていた。
「月に1回ね、"おじさん"っていう人と龍司の3人でご飯食べ行ってたんだよね。」
でもその"おじさん"が誰なのかは知らないと、ちえは言う。
孤児院に月に一度顔を出し、「おじさんの名前は、"ちえのおじさんだ"」と、ご飯へ行く。
物心ついた時には当たり前になっていた事や、孤児院の施設の者も当たり前にちえに通していた事から、それ程気にせず、警戒せずにいた。
3人でご飯を食べる時に必ず言われる話は、「龍司とちえは兄弟なんだ。」という話。
小学生になるかならないか頃の2人にとって、そう言われるという事は、両親が一緒、又はどちらかが一緒なのかと理解していた。
顔が似ている似ていないなど、当時では分からない。
そこで、親は誰なのか、と聞いてしまっては、おじさんを困らせるのだろうと子供ながらに感じていた2人だった。
2人にとって、このおじさんだけが、肉親である兄妹を繋げてくれる存在であった。
それぞれ互いが何処でどんな生活をしているかは、聞かなかったし、聞かなかった。
そんな月に一度の食事会も、20年前のとある月からぱったり無くなった。最初はおじさんに何かあったのか?などと心配していたが、早くも自立し始めている中学生前後の兄妹にとって、大した問題では無くなっていた。
「本当に血の繋がった兄なのかは知らないんだけどね。ふふっ。
まぁ、それでも幼い頃に、兄だという事で、一緒に食事していたのは確か。自分の本当の過去もよく分かってないし、今更どうこう知りたいって訳でもないんだけど……」
「……いきなり神室町に呼び出され、諸々事件発生…っちゅうとこか…?」
「そんな感じ。
一つ言えるのは、あんな事されてムカつくから、一発殴らせろって事。」
「ヒッヒッ。そりゃそうやな。
…身体の方はどないや?つらないか?」
「ボチボチ、痛てぇな。」
ちえは、メンソハイライトを1本取り出し火を付けた。
そして再び窓の外を眺めながら、神室町のネオン街か近付くのを観ている。
真島も、ドアに寄りかかりつつ手に顎を乗せ、先程のちえの話を振り返る。
正直、今ここまでの話で何かが分かった訳では無いが、なんとなく彼女の今の目的も分かった気がしていた。
車は再び無言になった後も走り続け、ミレニアムタワー前に停まった。
「親父、着きました。
姐さんのお部屋は、57階の右奥です。」
西田が外に回り込み、ドアを開ける。
真島に続き、ちえも車から降りた。
「ひゃ〜高い建物だねぇ」
関心するちえを隣に、行くで、とさっさと中に入って行く真島。
西田さんありがとう、と一言言って、その真島に着いて行くちえ。
「ねぇ、真島さん?」
「なんや?」
「このビルって屋上行ける?」
「行けんでぇ。先行こか?」
ちょいと案内よろしく、という事でエレベーターに乗り屋上へ向かう2人。
しばらくして、チンッという音の後に扉が開く。
目の前にある重い扉を開ければ、そこには宝石を散りばめた神室町の絶景があった。
何だかんだで夜明けの時間も近くなっているが、まだ暗い空に反して、下には星に負けない程の輝きでピカピカしている。
「こんな素敵な場所がある所で、しばらく過ごさせてもらって本当いいのかな」
ちえが手摺りに寄りかかりながら言う。
「…ええんやないか。嶋野の親父もそう言う事やしな。まぁ、ワシの組員が近くにいるちゅうことで、少々むさ苦しいかもしれんがな。ヒッヒッ」
暫くの間、タバコの煙を吐きながら街を眺めていると、少しずつ薄明るくなるのが分かってくる。
「明日の朝、うちの組員へも紹介するわ」
「かしこまりました。よろしくお願いしますね、組長さん。」
「お?なんや、喧嘩売ってんのかいな。」
ふふっ
ヒッヒッ
冗談を交わしているうちに、腹の傷がズキッと痛んだ。
そろそろ薬のんで、休まなければというタイミングだ。
ほんなら部屋、案内すんで。と真島に着いていき、エレベーターで57階へ行く。
「そういえば、真島さんは何処で寝るんです?」
そう聞けば、同じ57階に真島の部屋もあると言う。
流石は組長さんだ、と関心しながらも、とりあえずアウェイの場所で、自分の事を知ってくれている人が近くにいるというのは一つ安心だ。
ここやで。
と言われて入る部屋は、立派も立派。決して派手過ぎず、でも質素過ぎず、綺麗で清潔感と高級感のある部屋だ。
家具も一通り置いてあり、広いベッド、シャワールーム、洗面周りも完璧だ。ついでにアメニティも完璧だ。
「組員さん、こんな短時間でここまで…
余程ごろーちゃんが怖いのかね」
「何言ってんねん、日頃のワシの躾が良いからじゃ」
そっか、と言いながら部屋の隅に薬等が入った少ない荷物を置く。
「ま、ゆっくり休みぃや。部屋ん中は好き勝手してな。
身体もまだまだ本調子やないやろ。ちなみに、ちょっと前から顔色悪いで。血足りとらんやろし、薬飲んではよ寝ぇや。」
「お気遣いどーも。お言葉に甘えさせてもらいますわ。」
「ほな、明日の10時に迎え来るわ。」
「ほい、よろしく。じゃ、おやすみなさーい。」
パタンとドアは閉まり、静寂な部屋の中、1人になる。
とりあえず惰性でタバコに火を付ければ、先程まで見ていた街のネオンが、薄明るい空のお陰で勢いが薄まったように思えた。
袋の中の薬をガサガサと出し、ウォーターサーバーの水で流し込む。
明日の朝も早いし、これから暫くお世話になる真島組員さんへ、第一印象くらい良くしておきたい。
寝るか…と、1人では広すぎる程のベットに倒れ込み、まだ痛む体を労わりながら目を瞑る。