うさぎのかくれんぼ
「そうだ、襧豆子。僕最近、炭治郎と一緒に稽古したんだよ」
「!おにいちゃん!」
最愛の兄の名を聞くと、襧豆子が弾んだ声を上げた。
「もう次の稽古…甘露寺さんのところに向かったよ。強くなって、襧豆子のこと迎えに行くって言ってた」
「おにいちゃん…むかえ。きて、くれる?」
「うん」
確実だと伝えるように笑顔で頷くと、襧豆子は嬉しそうにますます目尻を下げた。
さぁっと縁側に色なき風が吹く。外の気温が下がっていくのを感じながらも、もう戻ろうとの言葉が出ない。朝方にここを発てば、次はいつここへ来れるかわからない。もしかしたら、今日が最後になるのかもしれないのだ。
…この子に。襧豆子に会えるのも。
その事実が、僕をここから動けなくさせていた。心臓を掴まれたような苦しさに、息がしづらくなった。僕の変化を察知した襧豆子が心配そうな表情に変わり、顔を近づける。
「むーちろ…!だい、じょうぶ?」
「…平気だよ」
「けが、まだいたい?」
僕の腕をさする彼女の手のひらは、鬼なんかじゃなかった。長い爪が少しでも僕にふれないように、気を使いながら撫でるようにふれてくれる。布切れを隔て、彼女の温もりを感じると、なぜだか悔しかった。喉の奥から何かが込み上げてきそうな圧迫を感じ、目頭が熱くなる前に口を動かす。
「!おにいちゃん!」
最愛の兄の名を聞くと、襧豆子が弾んだ声を上げた。
「もう次の稽古…甘露寺さんのところに向かったよ。強くなって、襧豆子のこと迎えに行くって言ってた」
「おにいちゃん…むかえ。きて、くれる?」
「うん」
確実だと伝えるように笑顔で頷くと、襧豆子は嬉しそうにますます目尻を下げた。
さぁっと縁側に色なき風が吹く。外の気温が下がっていくのを感じながらも、もう戻ろうとの言葉が出ない。朝方にここを発てば、次はいつここへ来れるかわからない。もしかしたら、今日が最後になるのかもしれないのだ。
…この子に。襧豆子に会えるのも。
その事実が、僕をここから動けなくさせていた。心臓を掴まれたような苦しさに、息がしづらくなった。僕の変化を察知した襧豆子が心配そうな表情に変わり、顔を近づける。
「むーちろ…!だい、じょうぶ?」
「…平気だよ」
「けが、まだいたい?」
僕の腕をさする彼女の手のひらは、鬼なんかじゃなかった。長い爪が少しでも僕にふれないように、気を使いながら撫でるようにふれてくれる。布切れを隔て、彼女の温もりを感じると、なぜだか悔しかった。喉の奥から何かが込み上げてきそうな圧迫を感じ、目頭が熱くなる前に口を動かす。