十六歳 ふたりがみつけた花
薄桃色の花びらが視界を横切った。周囲をぐるりと見回すと、幾枚もの花びらに自分は包まれていた。上も、右も左も、白い空間の果てが見えないこの場所で、たった一色の薄桃色が、視界を埋め尽くすように舞い踊っている。
この花びらは、一体どこからやって来てるのだろう。そんな疑問を浮かべても、意味なんてなかった。風を切る音が聞こえないのも、頬を撫でる風を感じないのも、何も不思議なことじゃなかった。
だってここは夢の中なのだから。
夜眠りにつくと、いつの間にか私は一人でこの場所に立っている。なんの変哲もない、ただ一人で花に包まれている夢。おもしろい夢だともいえないし、うなされるような怖い夢でもない。繰り返し見続けるうちに、もはや驚くこともなくなっていた。ただ流れゆく花びらを眺めながら、今も体内時計が動きだすのを待っていた。
音のない世界。そう思っていた世界で、ふいに声が聞こえてきた。静かに、透き通るような声だった。
『約束する』
…だれ?
周囲を見回しても、花びらが舞っている光景は変わらない。そして、問いかけようにも声がでなかった。
『襧豆子がくるのちゃんと待ってるから』
……なんで私の名前を知ってるの?
なんで…そんなに苦しそうなの?
姿が見えない声の主が、泣きたい気持ちを必死に堪えている。なぜだかそんな気がしてならなかった。
泣かないで。
そう言いたいのに、やはり声がでない。
『だからゆっくりくるんだよ』
どこかで聞いたことのある声に、心臓がゆっくりと波打ち始めていた。私を落ちつかせてくれるような、優しい声のような気がするのに、胸を揺さぶられる。せわしなく首を動かしても、人の姿はやはり見当たらない。
もどかしく、声のだせない歯がゆさに唇を噛んだ。
この花びらは、一体どこからやって来てるのだろう。そんな疑問を浮かべても、意味なんてなかった。風を切る音が聞こえないのも、頬を撫でる風を感じないのも、何も不思議なことじゃなかった。
だってここは夢の中なのだから。
夜眠りにつくと、いつの間にか私は一人でこの場所に立っている。なんの変哲もない、ただ一人で花に包まれている夢。おもしろい夢だともいえないし、うなされるような怖い夢でもない。繰り返し見続けるうちに、もはや驚くこともなくなっていた。ただ流れゆく花びらを眺めながら、今も体内時計が動きだすのを待っていた。
音のない世界。そう思っていた世界で、ふいに声が聞こえてきた。静かに、透き通るような声だった。
『約束する』
…だれ?
周囲を見回しても、花びらが舞っている光景は変わらない。そして、問いかけようにも声がでなかった。
『襧豆子がくるのちゃんと待ってるから』
……なんで私の名前を知ってるの?
なんで…そんなに苦しそうなの?
姿が見えない声の主が、泣きたい気持ちを必死に堪えている。なぜだかそんな気がしてならなかった。
泣かないで。
そう言いたいのに、やはり声がでない。
『だからゆっくりくるんだよ』
どこかで聞いたことのある声に、心臓がゆっくりと波打ち始めていた。私を落ちつかせてくれるような、優しい声のような気がするのに、胸を揺さぶられる。せわしなく首を動かしても、人の姿はやはり見当たらない。
もどかしく、声のだせない歯がゆさに唇を噛んだ。
1/11ページ