「白蛇、ですか。別段、珍しい事ではありませんね」

「まぁ、一部嫌っている地域もあるらしいけどな」

確かに、白蛇信仰自体はさして珍しい事では無い。


「現地へ行きましたが、寂れた限界集落。
住人は白蛇信仰を認めましたが、社にお参りする位だと言っていました。
私が見た限り、多少見えるだろう人は居ましたが、術師と呼べるほどの人はいませんでした」


「彼女の養父にあたる方ともお会いしましたが、好々爺と言った印象でした。しかし…」

「しかし？」

「その、よく、養子縁組の申請が通ったなと…」

「確か、養子縁組の審査は年齢制限があります。好々爺と言うからにはそれなりの年齢の老人なのでしょう」

「なんだか、あやしいね」
薬物乱用
限界集落
白蛇信仰

「硝子、薬物の禁断症状って術式で何とかなるものなの？」


「余程腕の立つ術師なら分からないが、多分、記憶を消した位では禁断症状は消えないな」

「なんで？使った事を覚えてないんだよ？」

「記憶として覚えていなくても、脳や体が忘れないのさ。
薬物が体内に有るのが当たり前の状態が薬物中毒。
その当たり前にあった薬物が体内から無くなって起こるのが、禁断症状だ。
脳の分泌物を変えるほどの記憶の改ざんは難しいだろうな」

一口珈琲を飲み続ける

「だが、禁断症状の記憶は消せるだろう」

「なるほど？」

「人間とは元々、辛い記憶は改ざんする事が多い。皆が死ぬ程苦しい記憶を抱えて生きていけるほど強くは無い」

「薬物乱用したとなると、禁断症状も相当のものでしょうね」

「果たして、小さな子供に耐えれるか」

「地獄の様に辛かっただろうな」

「本人が逃れたいと願うのであれば」

「記憶を消すのは容易い、か」

「まぁ、記憶を改ざんしたとなると、思い出した時のツケはデカいけどな」

これらは、あくまで大人の憶測でしかない。

「伊地知。もう少し詳しく調べられる？」

「はい。詳しく追跡調査致します」

「私は薬物の特定してみるからさ、入手ルート調べてよ」

「はい。承知致しました」

一体、誰が、何の目的で




「七海はさぁ。朱鳥の事どう思う」

部屋を出て歩きながら聞いてみる

「礼儀正しく、良い子だと思いますよ」

「そんな彼女に一体何故惨い仕打ちをしたのか」

声から怒りが漏れる

僕だって同じ気持ちだ。

「彼女はまだ子供、庇護すべき存在です。
これからの人生を幸せに生きる権利がある」

そう、その権利を奪うことは許されない。
何人たりとも。