七海さんと別れると、恵の姿が見えた。思わず駆け寄り声をかけると

「……何話してた」

七海さんといるのが見えたのかな？

会話という会話は無かったけど多分あれは

「…悩み事相談？」

そう言うと壁際に追い込まれ、ドンッと腕を付かれて逃げ道を塞がれる

これは壁ドンと言うやつか、と思うけど、なんだが雰囲気がおかしい。

壁ドンってもっとロマンティックなものじゃあなかろうか。

恵の目が怖い。

これは、カツアゲじゃなかろうか。

何も持ってないよ。

そんな事をぐるぐる考えていると

「そんなに『大人』がいいのかよ」

と、怒気を孕んだ声で恵が言ってくる

言葉の意味も、恵が怒ってる理由も分からない

「『子供』の俺には言えなくて『大人』の七海さんには言えるんだもんな」

七海さんに相談した事を怒ってる？
なんで？

「『大人』の七海さんはさぞかし頼りがいがあるだろうな…！」

確かに七海さんは大人だし頼りがいもあるとは思う。

でもそれはスーツ補正な訳であって

「だって、スーツだもん」

そう言うと、恵は訳が分からないと言った表情をするのでスーツの重要性を解く。

田舎で育った私の周りにはスーツの人はいなかった。
雑誌で見たスーツの人はとても珍しくいつしか大人の象徴になっていた。

五条先生は大人だけど、普段スーツじゃ無いし。
多分、スーツ似合うだろうけど、ホスト感強そう。

「…スーツ？」

と、恵の口からこぼれる。

いや、スーツだけじゃない。
制服だって重要だ。

学校に通ってなかった私にとっては、制服もとても重要だ。

慌てて恵に説明する。

高専に来て、制服を見たものの、どうやらここの学校は制服を好きにカスタマイズできるようで、みんな特徴的な制服を着てた。

違う。そうじゃない。

私が好きなのは、普通の制服。

そう、恵がきているような。

多分、恵の制服はカスタマイズされていない。

恵にはそれがとても良く似合っている。

「だから、一番普通の制服の、恵が好き」

キッパリそう言った。

すると、恵の表情はポカンとして、私の肩に顔をうづめ深いため息をつく。

えっ？そんなにため息着くほどスーツ嫌い？
いや、都会育ちの恵にとってはスーツや制服は当たり前なのかもしれない。

そう思い、私にとってはいかに重要か。
スーツや制服がいかに大切かを熱く語る。

ふっと体を起こした恵は優しい表情で私を見てて、そんな顔久しぶりに見るなと思いつつ、聞いていたかと聞くと

「俺の制服が好きまで聞いた」

って、ほとんど聞いてないじゃん！
不満を込めてぷくっと頬を膨らませると、ツンとつつかれ、口から間抜けな音を出して息が逃げる。

あまりにも間抜けな音だったので思わす笑ってしまった。
見たら恵も笑ってた

とても久しぶりに二人で一緒に笑った気がする。

凄く嬉しかった。