七海side


その日、五条さんの部屋から人が出てくるのを見かけた。

確か、彼女は

「宮城さん？」

私の声に気づいた彼女はパッとこちらを振り返り

「あ。七海さん。お疲れ様です」

と、頭を下げる。

相変わらず礼儀正しい子です。
しかし

「何か、悩み事でも？」

少し表情が曇っている。

「あれ？七海さんにもそう見えます？
さっき五条先生にも言われちゃって。
あまり自覚はないんですけど」

そう言って困ったように微笑む。

「なるほど。五条さんとお話しして解決しましたか？」

二人並び歩きながら問うてみる。

「うーん。そもそも、あまり自覚が無くて」

困り顔での返事
あんなに曇った表情で悩みの自覚が無いとは困った人です。

けれど、五条さんとも話した様ですし、無理に聞くことも無いでしょう。
彼は人として問題はありますが、鋭い一面もありますしね。

「何かあれば、話しは聞きますよ」

とだけ告げる

「ありがとうございます」

「じゃあ私はこちらなので」

通路の別れ道

「目的地までご案内いたしましょうか？」

冗談めかしてそう言うと

「もうっ。七海さんったら。
大丈夫です。ありがとうございます」

そう笑顔で返してくる。

ふとこちらを見ている伏黒君に気づく。
何やら不機嫌そうに彼女の姿を見ています。

おやおや。

「では」と
彼女に背を向け歩き出す。

あれが青春と言うやつでしょうか