恵と簪を見た後どうしようかと考えていると、不意にスマホが鳴る。

画面を見ると、五条先生からの着信だった。

いつ、連絡先交換したっけ？

「はい。宮城です。」

「あ。朱鳥？今からケーキ食べにおいでよ」

「…はい？」

突然の単語に気の抜けた声が出る。

それを聞いて何か察した恵がスマホを奪い取り

「朱鳥になにか用ですか」

と、対応を代わってくれた。

恵の方がいいだろうと、そのまま任せる。

「えっ？…は？…ちょっ……。
クソッ」

何言われたんだろ。
恵がオコです。

スマホをこちらに返しつつ

「五条先生がケーキが有るから食べに来いだとよ」

ケーキってそれか。

「アイツの勝手だ。別に相手しなくても良い」

「あ。いたいたー」

恵の声に被さる軽薄なこの声は

「えっ。五条先生っ？」

人混みより頭1つ抜きん出た長身。
綺麗な白髪。
今日はいつもの目隠しじゃなくて、サングラスをかけているので、ダダ漏れのイケメンオーラ。

「やっ。」

ヒラっと手を振る

「なんでアンタがココに居るんですか」

ジト目で言う恵に対し「生徒の事ならなんでも分かっちゃうグレートティーチャーだからね」と軽く返す先生。

それより と 私も見る先生

「朱鳥、甘い物好きでしょ？ケーキ食べにおいでよ」

唐突なお誘い。

「美味しいケーキが沢山あるよー」

美味しいケーキが沢山
なんて素敵な単語だろう
いや、けど、今日は恵との買い物に来たのであって
と、お断りしようと口を開きかけた時

「はい！決定ー！今から僕のお家に行きマース。ケーキ食べまーす」

「えっ、えっと…」

「ほらほらー。美味しいケーキが逃げちゃうよー」

ケーキは逃げないと思うけど、強引な決定についでに先生の手に背中を押される。

恵を見ると苦い顔をしてた。
多分こうなったら逃げようがないと経験が語るのだろう。

恵も一緒なら大丈夫だろうし、美味しいケーキも気になる。
五条先生が美味しいと言うからには美味しいのだろう。

言われるままに、五条先生のお家に行く事にした。