あれからどうなったのだろう。
まさか、死んでいたら…
焦りばかりが頭を支配し続けたが、ほんの少しの冷静さが、私を元に戻してくれる。
死んでいる訳ないだろう、と。


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「今川軍との戦。長くなりそうですね…」
明智光秀は、地図を見て不安そうに呟いた。これから織田軍は光秀を総大将として戦をする事になっている。
「このわしがいる限り、今川になど負けぬ！」
織田信長の配下として光秀と共に出陣予定の伊達政宗は言い放った。最近、彼はかなり武功を挙げている。信長からも信頼されている武将の一人だ。政宗は笑っていた。勝つ自信があると言う事だ。
「そうですよ。それに、政宗様だけでなく、蘭もおります。」
光秀の不安を取り除こうと、同じく出陣予定の森蘭丸が笑みを浮かべて光秀に言った。考え込んでいても仕方ない。
「ええ、そうですね。お二人とも、頼りにしています。」
そう言って三人が兵達の所へ行こうとしたその時。宙に一粒のまばゆい光が舞っているのが目に入った。驚いた表情の三人は、そっと装備していた刀に手を置く。その光が自分達の前へ来ると、突然動きを止めた。何がなんだか分からずに見ていると、光は眩しさを増し、パッと消えた。かと思ったら、その光の中から一人の少女が現れた。
「「「⁉︎」」」
少女は気を失っているのか、目を覚まさない。しばし少女の体が滞空すると、ゆっくりと降りてくる。光秀は降りてくる少女を、横抱きになる状態で抱き止める。深い眠りについているのか、少女は全く起きる気配が無い。これはかなり怪しいが、こんな人畜無害そうな少女を捕縛する事など出来ない光秀は、しばらく判断に迷った…


百合が目を覚ましたのは、揺れる馬上。何事かとびっくりして肩をびくりとあげると、その馬を動かしている人物に気がつかれた。
「目を覚ました様ですね。」
自分よりも少し背が高い美麗な顔立ちの少年。彼は微笑を浮かべて百合に言う。
「貴女の事を、これから信長様にご報告させて頂きます。信長様はきっと、貴女を悪い様にはしないでしょう。蘭には分かります。」
信長様、蘭、と言う言葉に百合は耳を疑った。信長様と蘭、といえば織田信長と森蘭丸しかありえない。この状況を把握しようと頑張る頭を、まずこの段階で少しずつ整理しようと、百合は俯いて口を引きむすんだ。
(タイムスリップと言う可能性は非常に高い、けどタイムスリップなんて現代の日本で出来たらおかしい。だってまだそこまで技術が無い筈だ。だったら一体なんなんだろう…)