bsr超短編
「………小太郎さん?」
女が不思議そうな顔をしてこちらを見上げる。
上体を曲げて顔を近付ければ、一瞬身体を強張らせたのち、大人しく目を閉じた。
互いの手元はそのままに、唇だけが重なり合う。
それからすぐに離れれば、女の瞼がゆっくりと開けられた。
「…………もう」
少しだけ困ったような顔をして、女が俺を見る。
ほんの一月前までは、顔を真っ赤にして慌てふためいていたというのに、どうやらやりすぎたらしい。
すっかり慣れてしまったその静かな反応も悪くはないが、もう少し虐めてやらねばと、黒い願望が腹の底から込み上げる。
その欲に素直に従い、女の首筋へと顔を寄せた。
「ひっ、小太郎さん!? ちょ、っ……!」
ああ、やはりこの女は少し虐めてやるくらいが良いらしい。
耳のすぐ下を吸い上げれば、赤い痣が咲いた。
己のすぐ耳元にある喉からは、必死に抑えた甘い悲鳴がよく響く。
今は、ここまで。
夕餉と風呂が済めば──
さてはて、この女が〝そちら〟に慣れる日は来るのか。
まあ……無理とは思うが。