bsr超短編
「爪に色塗るなんざ、未来の人間の考えるこたぁよく分かんないねえ」
細い筆に蓄えられた鮮やかな色彩が、ついと爪先を彩っていく。
私の手を支える佐助の指の方がしなやかで女性的だなんて、なんだか悔しくて恥ずかしい。
だけど、そのしなやかな指に数え切れないほど刻まれた傷痕と、何度も何度も擦り切れて分厚くなった手のひらの皮膚の感触は、決して女性的──なんかじゃない。
「ま、でもこりゃ確かにやりがいはあるねえ。腕が鳴るよ」
楽しげな声色は、本心なのだろう。
願わくば、彼のこの優しく私に触れる手が、一毫の乱れもなく丁寧にマニキュアを塗るこの指が、暗器を握ることなく、ずっと私の爪を楽しげに塗っていてくれればいいのに。
「これから私のマニキュア係、佐助に任せようかな」
「こらこら、横着覚えるんじゃないよ」
半分本気の軽口を、笑いながらやんわりと否定する佐助の優しさが、わがままなこの胸にちくりと傷をつけたことを、彼は知らない。