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bsr超短編



「小太郎さん! 行きますよ!」
「………………」
「い、き、ま、す、よー!」
「………………」

 ああ、参った、完全にやらかした。
 小太郎さんにバレンタインなんて文化教えるんじゃなかった。
 おかげでデパートの特設チョコレートコーナーから小太郎さんが微動だにしなくなってしまった。
 押しても引いてもまるでびくともしない。
 なんだ、そんなにチョコレートが食べたいのか。
 というか、チョコなら以前こっちの世界に来てすぐくらいの時に食べさせたじゃないか。
 あまりに甘すぎて、端正な顔を歪ませてたのはどこの誰だ。
 全体重を掛けて小太郎さんの背中を押すが、まるで大岩を押しているかのように動く気配がまるでしない。
 結局押し負けて適当に気になったチョコを買って帰った訳なのだが、さあそれからが本当に大変で、帰るなりソファに引きずり込まれて、顔を押しつけてきては無言で〝食わせろ〟と圧をかけるこの大きな子供に、結局買ったチョコを一粒一粒じっくり時間をかけて〝二人で〟味わうことになるとは、この時の私は想像もしていなかったのだ。
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