一章(杭瀬村編)
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ご飯と味噌汁、魚の干物に小鉢も付けた。和朝食を大木とうしおは向かい合って食べる。
(古い竈で初めて作ったけど、なんとか上手くできた)
向かいに座る大木を盗み見る。
やっぱり大木雅之助ご本人なんだと、改めて思う。トレードマークの鉢巻とガッチリした胸元がのぞいている。
あの大木先生と朝から向かい合っていると思うと、緊張してしまう。
(アイドルに会えたら、みんなこんな感じなのかな)
昨夜は暗く見知らぬ場所ということで怖かった。しかし、大木にある程度信じてもらえていることで余裕ができたのかもしれない。
(これからどうするかとか。どうやって戻るのかとか色々考えなくちゃ)
現代にいるであろう子供のことが一番心配だった。私がいなくなっても大丈夫だろうか。
夫は仕事をしているし、世話はできない。それに母乳で育てていたので、市販の粉ミルクを飲んでくれるか分からないからだ。
(……こんな時代に一緒にいても、きちんと育てられるか分からないけど……)
紙おむつもない、予防接種もできない時代だ。流行病で小さな子供が亡くなることも多いだろう。
そう考えると離れ離れは辛いが、子供にとっては幸いだったのかもしれない。
子供の元に帰るためにも、ここで生きて帰る方法を探し出すしかない。その為には、厚かましくても大木に頼る他ない。三十路の子持ちとなった今、自分のプライドなんかより子供の事が一番だった。うしおは箸を置くと大木の顔を見る。
「突然お家にお邪魔して、朝ごはんまでいただいてしまい申し訳ありません。」
「お前さんにも手伝ってもらったし、遠慮するな。」
「あの図々しいお願いだとは分かっているのですが、どこか住み込みで働ける場所はないでしょうか?」
「昨日家に上がり込んできたのは、働き口を無くしたからか?」
「…そういうわけでは。本当に気づいたらここにいただけで…」
「知らない内にここにいたと言っていたが、ここに来るまでの記憶が無くなったわけでもなかろう。」
「はい…」
「子供がいるのも、ここから遠くに住んでいたことも、おそらく事実。じゃが、お前さんが何者なのかさっぱり分からん!」
「何者と言われましても…」
「井戸の使い方も、火打石の使い方も知らん。普通の女房ならできて当たり前のことができん。何故だ?」
(それはガスも水道もあったから。ていうか井戸使えなかったのみられてたの?)
「着物は着れるが、サラシの巻き方はデタラメだ。」
うしおは顔を真っ赤にさせて、胸を両手で隠した。
(そんなとこまで見られてたの!?野菜取りに行ってたんじゃなかったの?)
元忍術学園教師だからか、やっぱり警戒されていたのか。うしおは落胆した。
「それに尼よりも短い髪だ。間違えて切ったわけでもなかろう」
(そうか。この時代にショートヘアーの女性なんていないよね)
「お前さんのことを何もわからないまま、働き口など紹介できんからな」
「確かにそうですよね」
うしおはうまい言い訳や理由を考えるが、全くいい案が見つからない。嘘をつくのは表情でバレてしまうだろう。
(…ここはトリップしたこと話さないと無理だよね)
トリップを信じてもらえるか分からないが、変な理由を話して疑われるよりは、辻褄が合うと思われる方がマシな気がする。
「…今から500年以上前の日本で生きていた人妻子持ちです!500年後の日本は井戸も火打石も使わないで水や火を使えるので、井戸とか使えません!
仕事は事務職ですが、今は休業中です。住まいは〇〇県で都会と田舎の中間くらいです。子供は6ヶ月になりました。昨日も話した通り、子供と自宅で眠っていたら、私だけここに飛ばされたみたいです!
私は元の世界に戻りたい!子供の待つ家に帰りたいんです!だから、それまで生きてなくちゃならないんです!お願いします!どこか住み込みで働ける場所を教えてください!」
うしおは両手をつき頭を下げた。額は床にべったり付いている。
(もう勢いだ!全部言って信じてもらうまで粘るしかない!)
ここで大木に見捨てられたら後がない。助けてもらえるなら、何度だって土下座してやる。
「…お前さんの話はすぐには信じられん。500年前の日本?」
「トリップしただなんて自分でも信じられません!でも!本当なんです!本当に私だけここに来てしまったんです!」
子供と離れたと改めて認識して、涙腺が緩む。
「信じてもらえなくても構いません。でも、私はもう一度、子供に会いたい!それだけなんです!お願いです…生きて帰る為に手を貸してください。私ができることなら何でもしますから!」
うしおは何度も頭を下げた。
その姿をみて大木はうーんと腕を組んでいた。
「にわかには信じられん」
「はい。でもっ!」
「しかし、お前さんにはド根性がありそうじゃ」
えっ?とうしおが顔をあげると、眩しい笑顔の大木と目が合う。
「よし!ここで畑仕事を手伝ってくれ!お前のド根性ー!気に入った!」
「えっ?あ!ありがとうございます!」
馬鹿正直に話してよかった。信じてはもらえていないだろうが、働き口は見つかったので、どうにか生きていけそうだ。
うしおはほっとして笑うと、よろしくお願いしますと改めて大木に頭を下げた。
(古い竈で初めて作ったけど、なんとか上手くできた)
向かいに座る大木を盗み見る。
やっぱり大木雅之助ご本人なんだと、改めて思う。トレードマークの鉢巻とガッチリした胸元がのぞいている。
あの大木先生と朝から向かい合っていると思うと、緊張してしまう。
(アイドルに会えたら、みんなこんな感じなのかな)
昨夜は暗く見知らぬ場所ということで怖かった。しかし、大木にある程度信じてもらえていることで余裕ができたのかもしれない。
(これからどうするかとか。どうやって戻るのかとか色々考えなくちゃ)
現代にいるであろう子供のことが一番心配だった。私がいなくなっても大丈夫だろうか。
夫は仕事をしているし、世話はできない。それに母乳で育てていたので、市販の粉ミルクを飲んでくれるか分からないからだ。
(……こんな時代に一緒にいても、きちんと育てられるか分からないけど……)
紙おむつもない、予防接種もできない時代だ。流行病で小さな子供が亡くなることも多いだろう。
そう考えると離れ離れは辛いが、子供にとっては幸いだったのかもしれない。
子供の元に帰るためにも、ここで生きて帰る方法を探し出すしかない。その為には、厚かましくても大木に頼る他ない。三十路の子持ちとなった今、自分のプライドなんかより子供の事が一番だった。うしおは箸を置くと大木の顔を見る。
「突然お家にお邪魔して、朝ごはんまでいただいてしまい申し訳ありません。」
「お前さんにも手伝ってもらったし、遠慮するな。」
「あの図々しいお願いだとは分かっているのですが、どこか住み込みで働ける場所はないでしょうか?」
「昨日家に上がり込んできたのは、働き口を無くしたからか?」
「…そういうわけでは。本当に気づいたらここにいただけで…」
「知らない内にここにいたと言っていたが、ここに来るまでの記憶が無くなったわけでもなかろう。」
「はい…」
「子供がいるのも、ここから遠くに住んでいたことも、おそらく事実。じゃが、お前さんが何者なのかさっぱり分からん!」
「何者と言われましても…」
「井戸の使い方も、火打石の使い方も知らん。普通の女房ならできて当たり前のことができん。何故だ?」
(それはガスも水道もあったから。ていうか井戸使えなかったのみられてたの?)
「着物は着れるが、サラシの巻き方はデタラメだ。」
うしおは顔を真っ赤にさせて、胸を両手で隠した。
(そんなとこまで見られてたの!?野菜取りに行ってたんじゃなかったの?)
元忍術学園教師だからか、やっぱり警戒されていたのか。うしおは落胆した。
「それに尼よりも短い髪だ。間違えて切ったわけでもなかろう」
(そうか。この時代にショートヘアーの女性なんていないよね)
「お前さんのことを何もわからないまま、働き口など紹介できんからな」
「確かにそうですよね」
うしおはうまい言い訳や理由を考えるが、全くいい案が見つからない。嘘をつくのは表情でバレてしまうだろう。
(…ここはトリップしたこと話さないと無理だよね)
トリップを信じてもらえるか分からないが、変な理由を話して疑われるよりは、辻褄が合うと思われる方がマシな気がする。
「…今から500年以上前の日本で生きていた人妻子持ちです!500年後の日本は井戸も火打石も使わないで水や火を使えるので、井戸とか使えません!
仕事は事務職ですが、今は休業中です。住まいは〇〇県で都会と田舎の中間くらいです。子供は6ヶ月になりました。昨日も話した通り、子供と自宅で眠っていたら、私だけここに飛ばされたみたいです!
私は元の世界に戻りたい!子供の待つ家に帰りたいんです!だから、それまで生きてなくちゃならないんです!お願いします!どこか住み込みで働ける場所を教えてください!」
うしおは両手をつき頭を下げた。額は床にべったり付いている。
(もう勢いだ!全部言って信じてもらうまで粘るしかない!)
ここで大木に見捨てられたら後がない。助けてもらえるなら、何度だって土下座してやる。
「…お前さんの話はすぐには信じられん。500年前の日本?」
「トリップしただなんて自分でも信じられません!でも!本当なんです!本当に私だけここに来てしまったんです!」
子供と離れたと改めて認識して、涙腺が緩む。
「信じてもらえなくても構いません。でも、私はもう一度、子供に会いたい!それだけなんです!お願いです…生きて帰る為に手を貸してください。私ができることなら何でもしますから!」
うしおは何度も頭を下げた。
その姿をみて大木はうーんと腕を組んでいた。
「にわかには信じられん」
「はい。でもっ!」
「しかし、お前さんにはド根性がありそうじゃ」
えっ?とうしおが顔をあげると、眩しい笑顔の大木と目が合う。
「よし!ここで畑仕事を手伝ってくれ!お前のド根性ー!気に入った!」
「えっ?あ!ありがとうございます!」
馬鹿正直に話してよかった。信じてはもらえていないだろうが、働き口は見つかったので、どうにか生きていけそうだ。
うしおはほっとして笑うと、よろしくお願いしますと改めて大木に頭を下げた。