うしおは大木先生から一歩離れる。
そしてどう説明すればいいのか悩んだ。
この状況で、もっともらしい理由を考えても、きっと嘘だとバレるに違いない。
そうなれば、下手したらどこかに突き出されるか最悪、殺されるかもしれない。

(だったら本当のこと言って妄想癖がある病人だと思われた方が、助けてくれるかもしれない。)

かなり楽観的だが、うしおはあまりにも非現実に直面して、ほぼ論理的に思考できなくなっていた。

「あのですね。信じられないと思うのですが。私は自宅で子供と一緒に夫の帰りを待っていたんです。いつも通りに…。そしたら知らないうちに此処にいたみたいで…」

「…自分の意思で忍び込んだ訳じゃないと？」

「はい。本当にそれはもう。来たくてきた訳じゃないと言うか…子供を残してなんて…本当に違います」

「子供はいくつになる？」

「まだ一歳になってないです。」

「……お前の家はどこだ？杭瀬村の近くか？」

「…違います。……でもどこにあるか分かりません」

自分で言っていて、だんだん不安になってくる。子供の安否。そして、元の家に帰れるのか…。

「…なるほど。」

「全然信じられませんよね。」

うしおは自重気味に笑った。

すると大木先生はにかっと笑った。

「分かった。とりあえず明日の朝、考えよう。とりあえず寝ろ！」

そういうと、大木先生は板の間にごろんと横になった。うしおには布団を使えとも言ってくれる。

「っえ？信じてくれたんですか！？」

あまりにも話が早くて驚く。

「たしかに全て信じることはできん！だが、子供の歳を数え年で言わないということは、ここらの出身でないことは確かだろう。それに、その服装も見たことがない。」

うしおは確かにパジャマ姿でこの時代にはないだろうと納得する。

「それに、それじゃ。」

大木先生は私の胸を指さす。

「母乳が出ているといことは、乳飲み子がいるのは嘘ではないしな」

「っ！？」

うしおは慌てて胸を隠す。

(うわ！ブラするの忘れてた！！)