一章(杭瀬村編)
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
うしおは夕食の片付けを終えて一息ついていた。
「よいしょっと」
空を見上げ縁側に座る。
(今日だけで3人も会えるなんて驚いたなあ)
斎藤タカ丸だけでなく、なぜか豆腐屋をやっている五年生と会えるなんて思いもしなかった。
あちらは初対面なのだからと驚いた顔を隠そうとしたが、不審な人に思われただろうか。
(アニメや本のキャラクターだから驚いたなんて言えないもんね)
きっと学園長先生に会う時に、忍たまに会えるだろうと期待していた。その時は驚かないように身構えれただろうが、不意打ちでは仕方ない。
「何を悩んでおるんじゃ」
大木は酒を持ってくると、うしおとの間に奥く。そしてお猪口をうしおへ寄越す。
「どうじゃ、たまには飲まんか」
こちらの世界に来てから、雅之助さんがお酒を飲むところなど初めて見る。
「えっと…じゃあ少しだけ」
フキさんのところへ行くのは明後日だし、少しだけなら問題ないだろう。明後日にはお酒が抜けるはずだ。
うしおはお猪口を受け取る。大木が白く濁った酒を注いでくれる。
(そうか、この時代はどぶろくなんだ)
一口飲む。甘くとろりとした口当たりだ。
「美味しい」
「それは良かった。…おっと、すまんの」
うしおが今度は大木に酒を注いだ。
「今日は本当に色々ありがとうございました。高価なカツラや着物までいただいて。きっと代金は返しますから」
「気にせんでいい。まだ金を稼ぐには早いじゃろう。ともかく生活に慣れる事が先だ」
(こういう優しいところが先生らしいな)
「そのうちきり丸君にバイト紹介してもらいます!」
「その心意気はいいことだ」
「…年下だからって揶揄ってますね」
「ワシといくらも変わらんじゃろうが」
「えっ?知ってて揶揄ってるんですか?てっきり若いと思われているからと…」
「初めはな。でも土井先生が教えてくれたからなあ」
「お手伝いにいらした時ですか…」
「まあな。それにしても、うしおが豆腐屋の年下の男に興味があるとはな」
「…なっ、違います!子供相手にそんなわけないですよ」
「そうか?目が釘付けだったぞ」
(それは知ってるキャラだったから。恋愛感情なんて、子供相手にあるわけないじゃない)
「違います!もう、また揶揄ってますね」
「どうかのう」
大木はくいっと酒を煽る。うしおは空になったお猪口に酒を注いだ。
「お前のいた場所では、子供が働かないのか?」
「…働くと言うか…アルバイトしている子はいますけど。あんなに若い子は珍しかったので」
(高校生ならいるだろうけど、中学生くらいはめったに見ないかも)
うしおが驚いていた理由が、子供が働いているからと思っているのだろうか。
「この時代はもっと小さい子が奉公に出ていますもんね」
「そうじゃな…どこも貧しい。子供を自分の手で育てられんこともある」
「…そうですね…」
うしおは現代に残してきた我が子を思い出す。あの子は元気にしているだろうか。
うしおは俯く。お猪口に注がれている酒がゆるゆると揺れる。
「…でも、きっと子供と離れるのは辛いですよね…仕方ないとしても…」
「そうかもしれんな」
うしおの持つ酒に、ぽつりぽつりと雫が落ち水面を揺らす。
「…きっと見つかる」
「そうでしょうか」
また、あの小さな我が子を抱きしめたい。名前を呼びたい。もう一度、会えたなら…。
「お前自身が諦めてどうする。ワシはあの夜見たお前のド根性ー!が気に入ったんだ。見つかるまでワシが力になる」
「……はい。」
大木のごつごつした手がうしおの涙を拭う。
その仕草にうしおはドキリとする。
「…泣きたい時はここで泣けばいい」
「……っ……」
うしおを大木は優しく抱き寄せる。温もりに安堵し、静かにうしおは涙を流す。
背中をトントンとされ、いつのまにかうしおは瞼を閉じていた。
「よいしょっと」
空を見上げ縁側に座る。
(今日だけで3人も会えるなんて驚いたなあ)
斎藤タカ丸だけでなく、なぜか豆腐屋をやっている五年生と会えるなんて思いもしなかった。
あちらは初対面なのだからと驚いた顔を隠そうとしたが、不審な人に思われただろうか。
(アニメや本のキャラクターだから驚いたなんて言えないもんね)
きっと学園長先生に会う時に、忍たまに会えるだろうと期待していた。その時は驚かないように身構えれただろうが、不意打ちでは仕方ない。
「何を悩んでおるんじゃ」
大木は酒を持ってくると、うしおとの間に奥く。そしてお猪口をうしおへ寄越す。
「どうじゃ、たまには飲まんか」
こちらの世界に来てから、雅之助さんがお酒を飲むところなど初めて見る。
「えっと…じゃあ少しだけ」
フキさんのところへ行くのは明後日だし、少しだけなら問題ないだろう。明後日にはお酒が抜けるはずだ。
うしおはお猪口を受け取る。大木が白く濁った酒を注いでくれる。
(そうか、この時代はどぶろくなんだ)
一口飲む。甘くとろりとした口当たりだ。
「美味しい」
「それは良かった。…おっと、すまんの」
うしおが今度は大木に酒を注いだ。
「今日は本当に色々ありがとうございました。高価なカツラや着物までいただいて。きっと代金は返しますから」
「気にせんでいい。まだ金を稼ぐには早いじゃろう。ともかく生活に慣れる事が先だ」
(こういう優しいところが先生らしいな)
「そのうちきり丸君にバイト紹介してもらいます!」
「その心意気はいいことだ」
「…年下だからって揶揄ってますね」
「ワシといくらも変わらんじゃろうが」
「えっ?知ってて揶揄ってるんですか?てっきり若いと思われているからと…」
「初めはな。でも土井先生が教えてくれたからなあ」
「お手伝いにいらした時ですか…」
「まあな。それにしても、うしおが豆腐屋の年下の男に興味があるとはな」
「…なっ、違います!子供相手にそんなわけないですよ」
「そうか?目が釘付けだったぞ」
(それは知ってるキャラだったから。恋愛感情なんて、子供相手にあるわけないじゃない)
「違います!もう、また揶揄ってますね」
「どうかのう」
大木はくいっと酒を煽る。うしおは空になったお猪口に酒を注いだ。
「お前のいた場所では、子供が働かないのか?」
「…働くと言うか…アルバイトしている子はいますけど。あんなに若い子は珍しかったので」
(高校生ならいるだろうけど、中学生くらいはめったに見ないかも)
うしおが驚いていた理由が、子供が働いているからと思っているのだろうか。
「この時代はもっと小さい子が奉公に出ていますもんね」
「そうじゃな…どこも貧しい。子供を自分の手で育てられんこともある」
「…そうですね…」
うしおは現代に残してきた我が子を思い出す。あの子は元気にしているだろうか。
うしおは俯く。お猪口に注がれている酒がゆるゆると揺れる。
「…でも、きっと子供と離れるのは辛いですよね…仕方ないとしても…」
「そうかもしれんな」
うしおの持つ酒に、ぽつりぽつりと雫が落ち水面を揺らす。
「…きっと見つかる」
「そうでしょうか」
また、あの小さな我が子を抱きしめたい。名前を呼びたい。もう一度、会えたなら…。
「お前自身が諦めてどうする。ワシはあの夜見たお前のド根性ー!が気に入ったんだ。見つかるまでワシが力になる」
「……はい。」
大木のごつごつした手がうしおの涙を拭う。
その仕草にうしおはドキリとする。
「…泣きたい時はここで泣けばいい」
「……っ……」
うしおを大木は優しく抱き寄せる。温もりに安堵し、静かにうしおは涙を流す。
背中をトントンとされ、いつのまにかうしおは瞼を閉じていた。
21/21ページ