一章(杭瀬村編)
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うしおが子供に母乳を与えて終えると、フキさんは使わないからと言って胸当てをくれる。
「出産前に準備してたんだけど、私には必要ないから使ってちょうだい」
「そんな、悪いです」
この時代、着物や布製品は貴重だろう。それに、まだ使う時が来るかもしれないし。
「いいのよ。サラシだと不便だし着物が汚れてしまうでしょう?」
「そうですけど」
確かにサラシでは母乳が染みそうだったし、付け心地も悪かった。ありがたいけれど、いいのだろうか。
しぶるうしおにフキは代わりにとお乳を分けて欲しいと言う。それならとうしおは頷き、ありがたく胸当てをいただいた。
「それじゃあ、またよろしくね」
「はい。ありがとうございました!」
うしおはお礼を言って、フキの家を出た。
(…子供の体温は落ち着くなあ。私でも役に立てることがあって良かった。…早く帰って夕ご飯の準備でもしよう!)
うしおは足早に大木の家へ向かった。
家に着くと大木はまだ戻ってきていないみたいだ。
(少しの間家を留守にしちゃったけど、大丈夫よね。さて、何作ろうかな)
うしおは火を使わなくてもできる料理を何品か作る。ナスとミョウガは薄く切って味噌と和える。豆腐は水気を切って戻したワカメとネギでサラダにする。
(あとは白米は朝の残りがあるし。お味噌汁は、大木先生が戻ってからにしよう。)
一旦調理を終えて、うしおは縁側に座る。
日が傾き虫の声が聞こえてくる。道の向こうから、ゴロゴロと台車を引く音がする。
「おーい、戻ったぞ。」
「お疲れ様でした。」
空っぽの荷台を引いて大木が戻ってきた。うしおは笑顔で出迎える。
「…なんだか変な気分じゃ」
「…変、ですか?」
「誰かが帰りを待ってるというのがな」
一人暮らしだったのに、急に誰かいたら慣れないのだろうなあ。
「そうですよね。…あっ、勝手に夕飯作っちゃいましたけど、問題なかったですか?」
きっと汗をかいているだろうと、うしおは大木に手拭いを手渡す。
「…おう、すまんな。」
大木は汗を流しに井戸へ向かった。うしおはその間に料理を準備しようと台所に戻った。
家に帰ると縁側であの女が待っていた。
手持ち無沙汰だったのかもしれない。顔色は良さそうだった。
「おーい、戻ったぞ。」
「お疲れ様でした。」
女に笑顔で出迎えられ、何だかむず痒い。
しかも夕飯まで準備してくれていたみたいで、さすがは主婦だなあと感心する。
それに何も言わず手拭いを手渡すあたり、よく気がつく女房だ。
(……こういう女房がいれば、旦那も幸せだろうなあ)
会ったこともない男を羨ましいと思う。しかし、すぐにバカな考えはやめろと自分に言い聞かせる。
(昨日会ったばかりの女に気を許しすぎているな。…だが、一生懸命な様子は伝わってくる。どうにも邪険にできんのだよなあ)
大木は困ったと、自分にため息をついた。
「出産前に準備してたんだけど、私には必要ないから使ってちょうだい」
「そんな、悪いです」
この時代、着物や布製品は貴重だろう。それに、まだ使う時が来るかもしれないし。
「いいのよ。サラシだと不便だし着物が汚れてしまうでしょう?」
「そうですけど」
確かにサラシでは母乳が染みそうだったし、付け心地も悪かった。ありがたいけれど、いいのだろうか。
しぶるうしおにフキは代わりにとお乳を分けて欲しいと言う。それならとうしおは頷き、ありがたく胸当てをいただいた。
「それじゃあ、またよろしくね」
「はい。ありがとうございました!」
うしおはお礼を言って、フキの家を出た。
(…子供の体温は落ち着くなあ。私でも役に立てることがあって良かった。…早く帰って夕ご飯の準備でもしよう!)
うしおは足早に大木の家へ向かった。
家に着くと大木はまだ戻ってきていないみたいだ。
(少しの間家を留守にしちゃったけど、大丈夫よね。さて、何作ろうかな)
うしおは火を使わなくてもできる料理を何品か作る。ナスとミョウガは薄く切って味噌と和える。豆腐は水気を切って戻したワカメとネギでサラダにする。
(あとは白米は朝の残りがあるし。お味噌汁は、大木先生が戻ってからにしよう。)
一旦調理を終えて、うしおは縁側に座る。
日が傾き虫の声が聞こえてくる。道の向こうから、ゴロゴロと台車を引く音がする。
「おーい、戻ったぞ。」
「お疲れ様でした。」
空っぽの荷台を引いて大木が戻ってきた。うしおは笑顔で出迎える。
「…なんだか変な気分じゃ」
「…変、ですか?」
「誰かが帰りを待ってるというのがな」
一人暮らしだったのに、急に誰かいたら慣れないのだろうなあ。
「そうですよね。…あっ、勝手に夕飯作っちゃいましたけど、問題なかったですか?」
きっと汗をかいているだろうと、うしおは大木に手拭いを手渡す。
「…おう、すまんな。」
大木は汗を流しに井戸へ向かった。うしおはその間に料理を準備しようと台所に戻った。
家に帰ると縁側であの女が待っていた。
手持ち無沙汰だったのかもしれない。顔色は良さそうだった。
「おーい、戻ったぞ。」
「お疲れ様でした。」
女に笑顔で出迎えられ、何だかむず痒い。
しかも夕飯まで準備してくれていたみたいで、さすがは主婦だなあと感心する。
それに何も言わず手拭いを手渡すあたり、よく気がつく女房だ。
(……こういう女房がいれば、旦那も幸せだろうなあ)
会ったこともない男を羨ましいと思う。しかし、すぐにバカな考えはやめろと自分に言い聞かせる。
(昨日会ったばかりの女に気を許しすぎているな。…だが、一生懸命な様子は伝わってくる。どうにも邪険にできんのだよなあ)
大木は困ったと、自分にため息をついた。