かげぼうし
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「・・・おかえりなさーい。みなさん入門表にサインをお願いしまーす!」
小松田さんがいつものようにバインダーを抱え六年生を出迎える。それは、いつもと変わらない風景だった。
しかし、突如変化が訪れる。
実習先から運んできた荷台から、急に人が飛び出してきたのだ。
「ああー!なんか出てきたぁ-!!」
小松田さんの叫び声が響き、全員が荷台の方に目線を向ける。
荷台に積んでいた荷物の蓋が道に転がり、飛び出した人物は私たちに背を向けて走り出していた。
それを確認するや、一番に反応したのは文次郎だった。
不審人物をすぐさま追いかける。
「文次郎!」
「分かっている!」
仙蔵の呼びかけにある内容を含めて、文次郎は頷く。
敵であっても一先ずは生け捕りにし情報を得ろ、と言うことだろう。
敵方の荷物に潜伏していたからには、敵である可能性が極めて高い。だが、忍びたるもの情報を得ることが重要なのだ。
「・・・っ!長次!」
「・・・モソ!!」
小平太も長次と共にすぐさま文次郎の後を追いかけ始める。
毎晩三人で鍛錬を行っている分、連携が取りやすい組み合わせである。敵らしき人物一人ぐらい、すぐに捕まる。
そう思われていた。
しかし、相手は中々の脚力を持っている。
初めに追いかけ始めた文次郎が、距離を縮められずにいた。
後から追いかけてきた小平太と長次が文次郎に追いつく。
「私と長次で行く!文次郎は周囲の警戒を頼む!」
「・・・っ分かった」
文次郎としては自分で捕まえたいところだが、この中で一番足の速い小平太に任すのが最善であった。
小平太は先ほどよりも速度を上げて、逃げる者の後を追いかける。
段々と距離が縮まってきたところで長次が縄を投げた。
(やばいやばい!足が限界!)
先ほどから全速力で走っているせいで、体力も足も限界が来ている。
うしおに勝算はあった。地元では足が速いことで有名だったし、学生時代には陸上部に入って大会で優勝した経験もあった。それなりに体力の自信もある。
逃げるだけならできるのではないかという可能性に賭けた。
かなりの距離を走ったところで、うしおはそろそろ大丈夫かと振り返る。
「・・・・うわ!いる!」
追いかけられても距離は開いていると思っていたが、ほんの数メートル後ろに男がいる。
(全然走る音が聞こえないし!追われてないかもとか思ってたのに)
楽観的すぎる考えであるのは間違いない。
しかし、靴のすれる音も息遣いも聞こえない。てっきり振り切れたと思うのは仕方のないことだと言いたい。
本当に人間かよ!と問いただしたくなる。
振り返った時に男と目が合った。すると向こうは輝かしい笑顔になる。
「なははは!お前走るの速いなあ!体育委員会に入らないか?」
「・・・?」
(何言ってんだこいつ。ていうか、笑いながら追いかけてくるな!)
笑顔で追いかけられるというのは恐怖を感じるものなんだとうしおが思った瞬間だった。
後ろから縄が飛んできて、うしおの体に巻き付いた。
「うわ!!」
焦る気持ちから足がもつれる。それを見計らったように縄が後ろに引っ張られた。
「でかした長次!」
そういうと笑顔の男がうしおを捕まえた。
捕らえられ身動きがとれないが、どうにか逃げようと最後の悪あがきをする。
男の腕から抜け出そうと、体を捩らせる。
びくともしないため、最終手段だと自由な足を動かす。
(急所を蹴り上げてやる!)
うしおの考えを読んだのか、男はやられる前に地面にうしおを倒す。
「・・・・大人しくしていろ。永らえた命だぞ」
先ほどの口調とはうって変わり、低い声で囁かれる。
「・・・・っ。」
うしおは恐怖でびくり震える。
ながらえた命という言葉に、もしかして逃げなければ殺されなかったのかと後悔する。
(これ以上、逆らえば本当に殺される)
そんな恐怖を抱き、男に押し倒された状態のままでいる。
するとうしおの体に縄を巻き付けた男も現れる。
続けて、彼らより年上そうな男もやってきた。
「捕らえたか」
「やっと来たか文次郎。なかなかに楽しかったぞ!」
「って、なんちゅう格好をさせているんだ!早く立たせろ!」
年上の男は、うっすらと顔を赤らめうしおから目をそらした。
隈が酷い。
「なんだ文次郎、こんな時に不謹慎だな!」
「うるせえ!」
私の上に乗っている男は豪快に笑う。その姿は先ほどの様子とは全く異なる。
(・・・この男、油断できないタイプの人間だ)
今までの様子から思った事だった。きっと、気にくわないことしたら傷つけられる。うしおは要注意人物として笑顔の男をインプットした。
上に乗っていた男はうしおを立たせると、肩に担いだ。
腹が男の肩に圧迫され息苦しい。
「では誰が一番早く忍術学園に戻れるか競争だ!」
楽しげに私を担ぐ男は言うやいなや、もの凄いスピードで走り出す。先ほどの追いかけっこなど本気ではなかったのだと気づかされる。
腹への衝撃が激しく、気持ち悪さで吐きそうになるのを堪える。
少しでも機嫌を悪くさせないようにと、気合いで吐き気を押さえ込む。
周り木々が凄い早さで過ぎ去り、大きな門まで連れられてきた。
「入門表にサインをおねがいしまーす」
場違いにマイペースな声が聞こえたが、返事をする元気はうしおにはなかった。
「侵入者(仮)とでも書いといてください」
隈が酷い年上の男がそう言うと、男三人とうしおは門をくぐった。そして男達は足音も気配もなく、どこかへ私を連れて行く。
門の中は人の気配も少ない。立派な木造の建物がいくつもあった。
先を進むと日本庭園のような場所に、日本昔話にでてきそうな菴が建っている。
思っていた拉致・誘拐される場所といえば小屋か廃墟であった。しかし、かけ離れたイメージに、うしおの思考が追いついていかない。
(なんで、こんな立派なアジトがある集団が、私を拉致するんだ?・・・やっぱり人違いの線が濃厚になってきたなあ・・・)
犯人達の服装が和服のようなものであるのも変だった。
町中で和服となれば目立ってしまうはずだ。もっとカジュアルな服装の方が動きやすくて目立たない。
おかしな事が多すぎる。
うしおはぐったりとしながらも、頭をフル回転させる。
菴の前の地面に座らされる。膝丈スカートなためストッキング越しとはいえ、地面に膝をつくのは辛い。
「学園長先生、ただいま戻りました」
一番年長の隈が酷い男が、障子越しに声をかける。
すると、菴の障子が開き一人の老人と、黒い着物を来た男達がうしおを見下ろす。
「中に入れなさい」
老人の一声により、私はまた抱えられると、庵の中に座らされた。
もちろん拘束されたままだ。
室内は静まりかえり、厳しい視線が向けられる。
その緊張感にうしおは逃げ出したい気持ちでいっぱいだった。
私を連れてきた男三人と同じ緑の着物を着た男が全部で6人。
私の後ろに座った。
完全に退路を塞がれた。
逃げ出すチャンスはない。どうにか無事に帰らせてもらえるようにしなくては。
気持ちは焦るばかりで、具体案は見つからない。
うしおは大人しく言うことを聞くしかないと思った。
(・・・変に逆上させず、言うことを聞いた方がいいって、ネットで書いてあった気がする・・・)
おそらく目の前に座る老人が、この集団での権力者だろう。
ここでのやりとりが、今後の生死を左右するかもしれない。
緊張と不安でうしおは冷や汗をかく。
「・・・して、お主。なぜ衣装箱の中に入っておった?」
老人のに鋭い目線に、私はびくりと震えた。
小松田さんがいつものようにバインダーを抱え六年生を出迎える。それは、いつもと変わらない風景だった。
しかし、突如変化が訪れる。
実習先から運んできた荷台から、急に人が飛び出してきたのだ。
「ああー!なんか出てきたぁ-!!」
小松田さんの叫び声が響き、全員が荷台の方に目線を向ける。
荷台に積んでいた荷物の蓋が道に転がり、飛び出した人物は私たちに背を向けて走り出していた。
それを確認するや、一番に反応したのは文次郎だった。
不審人物をすぐさま追いかける。
「文次郎!」
「分かっている!」
仙蔵の呼びかけにある内容を含めて、文次郎は頷く。
敵であっても一先ずは生け捕りにし情報を得ろ、と言うことだろう。
敵方の荷物に潜伏していたからには、敵である可能性が極めて高い。だが、忍びたるもの情報を得ることが重要なのだ。
「・・・っ!長次!」
「・・・モソ!!」
小平太も長次と共にすぐさま文次郎の後を追いかけ始める。
毎晩三人で鍛錬を行っている分、連携が取りやすい組み合わせである。敵らしき人物一人ぐらい、すぐに捕まる。
そう思われていた。
しかし、相手は中々の脚力を持っている。
初めに追いかけ始めた文次郎が、距離を縮められずにいた。
後から追いかけてきた小平太と長次が文次郎に追いつく。
「私と長次で行く!文次郎は周囲の警戒を頼む!」
「・・・っ分かった」
文次郎としては自分で捕まえたいところだが、この中で一番足の速い小平太に任すのが最善であった。
小平太は先ほどよりも速度を上げて、逃げる者の後を追いかける。
段々と距離が縮まってきたところで長次が縄を投げた。
(やばいやばい!足が限界!)
先ほどから全速力で走っているせいで、体力も足も限界が来ている。
うしおに勝算はあった。地元では足が速いことで有名だったし、学生時代には陸上部に入って大会で優勝した経験もあった。それなりに体力の自信もある。
逃げるだけならできるのではないかという可能性に賭けた。
かなりの距離を走ったところで、うしおはそろそろ大丈夫かと振り返る。
「・・・・うわ!いる!」
追いかけられても距離は開いていると思っていたが、ほんの数メートル後ろに男がいる。
(全然走る音が聞こえないし!追われてないかもとか思ってたのに)
楽観的すぎる考えであるのは間違いない。
しかし、靴のすれる音も息遣いも聞こえない。てっきり振り切れたと思うのは仕方のないことだと言いたい。
本当に人間かよ!と問いただしたくなる。
振り返った時に男と目が合った。すると向こうは輝かしい笑顔になる。
「なははは!お前走るの速いなあ!体育委員会に入らないか?」
「・・・?」
(何言ってんだこいつ。ていうか、笑いながら追いかけてくるな!)
笑顔で追いかけられるというのは恐怖を感じるものなんだとうしおが思った瞬間だった。
後ろから縄が飛んできて、うしおの体に巻き付いた。
「うわ!!」
焦る気持ちから足がもつれる。それを見計らったように縄が後ろに引っ張られた。
「でかした長次!」
そういうと笑顔の男がうしおを捕まえた。
捕らえられ身動きがとれないが、どうにか逃げようと最後の悪あがきをする。
男の腕から抜け出そうと、体を捩らせる。
びくともしないため、最終手段だと自由な足を動かす。
(急所を蹴り上げてやる!)
うしおの考えを読んだのか、男はやられる前に地面にうしおを倒す。
「・・・・大人しくしていろ。永らえた命だぞ」
先ほどの口調とはうって変わり、低い声で囁かれる。
「・・・・っ。」
うしおは恐怖でびくり震える。
ながらえた命という言葉に、もしかして逃げなければ殺されなかったのかと後悔する。
(これ以上、逆らえば本当に殺される)
そんな恐怖を抱き、男に押し倒された状態のままでいる。
するとうしおの体に縄を巻き付けた男も現れる。
続けて、彼らより年上そうな男もやってきた。
「捕らえたか」
「やっと来たか文次郎。なかなかに楽しかったぞ!」
「って、なんちゅう格好をさせているんだ!早く立たせろ!」
年上の男は、うっすらと顔を赤らめうしおから目をそらした。
隈が酷い。
「なんだ文次郎、こんな時に不謹慎だな!」
「うるせえ!」
私の上に乗っている男は豪快に笑う。その姿は先ほどの様子とは全く異なる。
(・・・この男、油断できないタイプの人間だ)
今までの様子から思った事だった。きっと、気にくわないことしたら傷つけられる。うしおは要注意人物として笑顔の男をインプットした。
上に乗っていた男はうしおを立たせると、肩に担いだ。
腹が男の肩に圧迫され息苦しい。
「では誰が一番早く忍術学園に戻れるか競争だ!」
楽しげに私を担ぐ男は言うやいなや、もの凄いスピードで走り出す。先ほどの追いかけっこなど本気ではなかったのだと気づかされる。
腹への衝撃が激しく、気持ち悪さで吐きそうになるのを堪える。
少しでも機嫌を悪くさせないようにと、気合いで吐き気を押さえ込む。
周り木々が凄い早さで過ぎ去り、大きな門まで連れられてきた。
「入門表にサインをおねがいしまーす」
場違いにマイペースな声が聞こえたが、返事をする元気はうしおにはなかった。
「侵入者(仮)とでも書いといてください」
隈が酷い年上の男がそう言うと、男三人とうしおは門をくぐった。そして男達は足音も気配もなく、どこかへ私を連れて行く。
門の中は人の気配も少ない。立派な木造の建物がいくつもあった。
先を進むと日本庭園のような場所に、日本昔話にでてきそうな菴が建っている。
思っていた拉致・誘拐される場所といえば小屋か廃墟であった。しかし、かけ離れたイメージに、うしおの思考が追いついていかない。
(なんで、こんな立派なアジトがある集団が、私を拉致するんだ?・・・やっぱり人違いの線が濃厚になってきたなあ・・・)
犯人達の服装が和服のようなものであるのも変だった。
町中で和服となれば目立ってしまうはずだ。もっとカジュアルな服装の方が動きやすくて目立たない。
おかしな事が多すぎる。
うしおはぐったりとしながらも、頭をフル回転させる。
菴の前の地面に座らされる。膝丈スカートなためストッキング越しとはいえ、地面に膝をつくのは辛い。
「学園長先生、ただいま戻りました」
一番年長の隈が酷い男が、障子越しに声をかける。
すると、菴の障子が開き一人の老人と、黒い着物を来た男達がうしおを見下ろす。
「中に入れなさい」
老人の一声により、私はまた抱えられると、庵の中に座らされた。
もちろん拘束されたままだ。
室内は静まりかえり、厳しい視線が向けられる。
その緊張感にうしおは逃げ出したい気持ちでいっぱいだった。
私を連れてきた男三人と同じ緑の着物を着た男が全部で6人。
私の後ろに座った。
完全に退路を塞がれた。
逃げ出すチャンスはない。どうにか無事に帰らせてもらえるようにしなくては。
気持ちは焦るばかりで、具体案は見つからない。
うしおは大人しく言うことを聞くしかないと思った。
(・・・変に逆上させず、言うことを聞いた方がいいって、ネットで書いてあった気がする・・・)
おそらく目の前に座る老人が、この集団での権力者だろう。
ここでのやりとりが、今後の生死を左右するかもしれない。
緊張と不安でうしおは冷や汗をかく。
「・・・して、お主。なぜ衣装箱の中に入っておった?」
老人のに鋭い目線に、私はびくりと震えた。
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