かげぼうし
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うしおの記憶にあるのは、乱雑なデスクと納期の迫った無茶なスケジュールを要求するムカつく上司。
疲れたときに立ち寄る、いつものカフェでテイクアウトした珈琲の香りだった。
(・・・なんか夢見ていたような・・・)
ぼんやりした記憶を辿りながら瞳を開ける。
見慣れた風景とは違い、今自分の目に映るのは暗闇の中に差し込む僅かな光。
体に伝わる振動と、静寂だった。
(あれ・・・もしかして忙しさとストレスで記憶ぶっ飛んだ?)
私の頭で一番に考えられたことは、そんなことだった。
暗さに目が慣れると周りの様子は把握できるようになった。
狭い空間に布が敷き詰められ、その中にうしおは入っているようだった。頭の上に被さっている布をどかし、少しでも動けるようにした。
(手触りが良い・・・着物?)
上等そうな着物に囲まれ、木箱のような中は狭いながらも居心地は良い。先ほどから伝わる振動は不規則で、耳を澄ませば土の踏みつける音もする。
どこかに運ばれているのか。もしかすると、寝ぼけて何かの荷物で眠ってしまったのかもしれない。そしたら、この高そうな着物を弁償するように言われるのだろうか。
(・・・私の安月給じゃ、絶対に足りない・・・)
自身の生活の今後を考えて憂鬱になる。
しかし、私はある考えが欠落していた。その考えは、時間が経つごとに冷静になったうしおの脳裏に浮かんできた。
(もしくは・・・普通に考えて、拉致されているのか・・?)
だが拉致・誘拐されていたとして理由は何だ?
実家が裕福なわけでも、私自身が金をもっているわけでもない。
一般企業に勤める、ちょっとブラックな労働環境で耐える社会人だ。
自分で言うのも悲しいが、見た目が良いわけでも、ましてや三十路近くの女を誘拐する理由などあるのだろうか?
(もしかして誘拐する相手間違えていないか?)
だったら、犯人達は間違いに気がつけば私に用がなくなる。
良くて近くの山に放置。
悪くて殺されるだろう。
(どうにか脱出して、今週末締め切りの仕事を終わらせなくては!休日出勤は絶対に回避するぞ!)
うしおはそう決意すると、できる限り情報を集めようとした。
この振動からして、舗装された道路である可能性は少ない。
山道か、それに近い場所で田舎だろう。
(職場からは、かなり離れているのかもしれない)
その事実に若干絶望していると、箱の外から声が聞こえる。
「・・・おかえりなさーい。みなさん入門表にサインをお願いしまーす!」
なんだか気の抜ける声だ。
「ただいま戻りました小松田さん。僕が皆の分をまとめて記入しておくよ」
「頼む伊作!私は荷物で手がふさがっているから助かる!」
「いいんだ小平太。僕は待機だったし、このくらいさせてよ」
「すまない。では私達は先に荷物を学園長先生にお届けするとしよう。」
「伊作だって、集合場所で見張りをしてくれていただろうが。そういう役割だったんだから気にすんなよ。だが、まあ仙蔵の言う通り先に荷物は運んでおくか」
「・・・皆、それぞれの役目を全うした・・・」
「そうだぞ!それにお前がいたら不運で任務がはかどらな・・・ってな!」
「文次郎、お前の一言は余計だ」
バシン!と音が聞こえると、数名の笑い声が聞こえた。
「では、先に行っているぞ」
「うん、すぐに僕も向かうよ」
すると、またうしおの入った箱は動き出したようだった。
(まずい、思ったより誘拐犯の人数が多そうだなあ。どうにか逃げ出すチャンスを見つけださないと)
学園長先生とやらの所に届けられれば、中身を確認されるのだろう。その前に抜け出すしか。
(一か罰か・・・今がそのチャンスかもしれない!)
どうやら男達の雰囲気から、油断しているように感じる。
入門というからには、どこかに入る直前だ。
(つまり、中に入ってしまえば出られるチャンスが減るはず!だったら多少危険を冒してでも、今しかない!)
箱に鍵が付いていないことは確認済みだ。
ゆっくり蓋を上に押し上げる。隙間からは、男達の姿が見える。
というか、自分と身長が変わらない?
(・・・これなら勝てるんじゃないか?・・・)
うしおは蓋をそっと外すと、勢いよく箱の中から飛び出した。
「ああー!なんか出てきたぁ-!!」
後ろで誰かが叫んでいるが私はなりふり構わず駆けだした。
(絶対に死ぬもんか!!)
疲れたときに立ち寄る、いつものカフェでテイクアウトした珈琲の香りだった。
(・・・なんか夢見ていたような・・・)
ぼんやりした記憶を辿りながら瞳を開ける。
見慣れた風景とは違い、今自分の目に映るのは暗闇の中に差し込む僅かな光。
体に伝わる振動と、静寂だった。
(あれ・・・もしかして忙しさとストレスで記憶ぶっ飛んだ?)
私の頭で一番に考えられたことは、そんなことだった。
暗さに目が慣れると周りの様子は把握できるようになった。
狭い空間に布が敷き詰められ、その中にうしおは入っているようだった。頭の上に被さっている布をどかし、少しでも動けるようにした。
(手触りが良い・・・着物?)
上等そうな着物に囲まれ、木箱のような中は狭いながらも居心地は良い。先ほどから伝わる振動は不規則で、耳を澄ませば土の踏みつける音もする。
どこかに運ばれているのか。もしかすると、寝ぼけて何かの荷物で眠ってしまったのかもしれない。そしたら、この高そうな着物を弁償するように言われるのだろうか。
(・・・私の安月給じゃ、絶対に足りない・・・)
自身の生活の今後を考えて憂鬱になる。
しかし、私はある考えが欠落していた。その考えは、時間が経つごとに冷静になったうしおの脳裏に浮かんできた。
(もしくは・・・普通に考えて、拉致されているのか・・?)
だが拉致・誘拐されていたとして理由は何だ?
実家が裕福なわけでも、私自身が金をもっているわけでもない。
一般企業に勤める、ちょっとブラックな労働環境で耐える社会人だ。
自分で言うのも悲しいが、見た目が良いわけでも、ましてや三十路近くの女を誘拐する理由などあるのだろうか?
(もしかして誘拐する相手間違えていないか?)
だったら、犯人達は間違いに気がつけば私に用がなくなる。
良くて近くの山に放置。
悪くて殺されるだろう。
(どうにか脱出して、今週末締め切りの仕事を終わらせなくては!休日出勤は絶対に回避するぞ!)
うしおはそう決意すると、できる限り情報を集めようとした。
この振動からして、舗装された道路である可能性は少ない。
山道か、それに近い場所で田舎だろう。
(職場からは、かなり離れているのかもしれない)
その事実に若干絶望していると、箱の外から声が聞こえる。
「・・・おかえりなさーい。みなさん入門表にサインをお願いしまーす!」
なんだか気の抜ける声だ。
「ただいま戻りました小松田さん。僕が皆の分をまとめて記入しておくよ」
「頼む伊作!私は荷物で手がふさがっているから助かる!」
「いいんだ小平太。僕は待機だったし、このくらいさせてよ」
「すまない。では私達は先に荷物を学園長先生にお届けするとしよう。」
「伊作だって、集合場所で見張りをしてくれていただろうが。そういう役割だったんだから気にすんなよ。だが、まあ仙蔵の言う通り先に荷物は運んでおくか」
「・・・皆、それぞれの役目を全うした・・・」
「そうだぞ!それにお前がいたら不運で任務がはかどらな・・・ってな!」
「文次郎、お前の一言は余計だ」
バシン!と音が聞こえると、数名の笑い声が聞こえた。
「では、先に行っているぞ」
「うん、すぐに僕も向かうよ」
すると、またうしおの入った箱は動き出したようだった。
(まずい、思ったより誘拐犯の人数が多そうだなあ。どうにか逃げ出すチャンスを見つけださないと)
学園長先生とやらの所に届けられれば、中身を確認されるのだろう。その前に抜け出すしか。
(一か罰か・・・今がそのチャンスかもしれない!)
どうやら男達の雰囲気から、油断しているように感じる。
入門というからには、どこかに入る直前だ。
(つまり、中に入ってしまえば出られるチャンスが減るはず!だったら多少危険を冒してでも、今しかない!)
箱に鍵が付いていないことは確認済みだ。
ゆっくり蓋を上に押し上げる。隙間からは、男達の姿が見える。
というか、自分と身長が変わらない?
(・・・これなら勝てるんじゃないか?・・・)
うしおは蓋をそっと外すと、勢いよく箱の中から飛び出した。
「ああー!なんか出てきたぁ-!!」
後ろで誰かが叫んでいるが私はなりふり構わず駆けだした。
(絶対に死ぬもんか!!)