ギラヒム短編集
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「リンクったら〜防御ばっかりで、全然戦ってくれないんだから〜………ヒック……」
酔いに顔を赤くして、ジョッキを片手に小僧の愚痴を吐くこの女はワタシの部下である。
最近よく外出しては、小僧に戦いを挑んでいるらしい。こんな奴でも腕はたつのだが、どうやら女であるが故に相手が本気で剣を交えてくれないと嘆いている。
殺しにかかれば本気を出すかと思いきや、変わらず一切として剣を振らずに防御のみで、ましてや口説きにかかる始末だったらしい。
まぁ、実際には口説かれているのではなく、天然タラシのような褒め言葉でこいつが勝手に戦意を削られているだけなのだが。
「煩いよ、そんなに悩むのなら殺してしまえばいいじゃないか。リンク君が本気を出さないのも、君がいつまで経ってもトドメを刺そうとしてないからじゃないのかい?」
イライラとしつつも助言をすれば、部下はポカンと間抜け面を晒した後、机にジョッキを下ろし、項垂れた。
「あの子くらいじゃないと〜私の相手にもならないんだから、しょうがないんだよね〜ヒッック……」
部下がずば抜けて剣術に長けている事は、勿論このワタシも知っている。
戦いが大好きであるにも関わらず、そこらの上位種では暇つぶしにもならないと、主であるワタシに剣を向けて来たのは記憶に新しいものだ。
「小僧を殺せるのなら、さっさと殺して欲しいものだけど、いざ居なくなって今度は君がワタシの邪魔をしてくるのかと思うと……いっそ足止めをしてくれているのだから感謝すべきか」
暇になったら直ぐに剣を抜き、ワタシに襲いかかって来ていたこの部下が小僧と出会ってから私に刃を向けなくなっていた。
その事に最初は喜びを感じていたが、最近は部下が小僧に戦いを挑む姿を見ていると何やら胸の辺りに不快感が生じるようになった。
「ギラヒム様に襲いかからなくなったんですから、寛大な心で許してくださいよ〜リンクはいい暇つぶしなんです〜」
「……そうかい」
小僧を暇つぶしとしか思っていない発言に、不快感が少し薄れたのは偶然だろうか。
「そうだ、ギラヒム様も一緒に飲みましょうよ〜!」
マントの端を捕まれ、クイクイと引っ張られた。手に持ったジョッキを差し出してくる辺り、関節的な接吻は気にしていないのだろう。
…………いっそこれを機に意識させてやろうか。
手に握られたジョッキを奪い取り、半分ほど残った酒を一度で飲み干すと、少し頭がグラりと揺れる。
「ふん……これで満足かい?」
空になったジョッキを机に置きながら言う。
何も言わない部下を不思議に思い目を向けると、先程よりも顔を赤くして口をパクパクとする部下がいた。
「な……ッ」
「なんだい?一緒に飲めといったのは君だろう?」
「一緒のジョッキじゃなくて……別々のジョッキで乾杯しようって意味で……これじゃ関節キ……否……うぅ……」
机に突っ伏しながらブツブツと念仏のように何かを言い続ける部下に、ワタシはとうとう堪忍袋の緒が切れたらしい。
「何だ、さっきからブツブツと!!大体なぁ!!毎晩毎晩、懲りずにリンクが何だかんだと……嫌いな奴の事を誰が聞きたがるってんだ!!」
寧ろ、ワタシはここまで我慢したんだから優しいものだろう。
「リンクの弱点とか話し……」
「そんなの俺が自分で調べれば済む話だろうが!!」
ワタシが剣である以前に、精霊である事をコイツは忘れているのだろうか。
だが、よく考えれば確かに部下は、小僧の苦手な攻撃方法や魔物について話していた気がする。
毎回"リンク"という名が部下の口から出てくる度に機嫌が急降下していて、内容をロクに聞いていなかったらしい。
モヤモヤとした不可解な感情に振り回された記憶が蘇った途端、その時の激情も襲ってきた。
そして気付けば、目の前で虚をつかれた様な顔をした部下に、今まで我慢してきた事を言い放っていた。
「俺はなぁ!!お前の口からアイツの名前を聞きたくねぇんだよ!!!」
待て、ワタシは今なんと言った?? この感情は何だ……怒りに似ているが何処か胸を締めつけるこの感覚は……嫉妬というやつか?
嫉妬とは、恋情のその先にあるもの……ではワタシはなぜ部下に嫉妬心を抱いた?
頭の中で嫉妬という言葉が度重なって反響する。
「ギラヒム様……それは嫉妬……ですか……?」
「……違う」
「リンク」
「あ"ぁ"?!」
…………小僧の名につい反応してしまった。
部下とワタシの間に沈黙の間が出来た。数秒が数分のように感じたのはワタシだけだったのだろうか。
結局いたたまれなくなって、何か言おうと口を開くと、先に部下が話し出した。
「あの、私は……自惚れてもいいのでしょうか……貴方様に好かれていると……その……あ……いや、聞かなかった事にしてください」
まだ酔いが覚めきっていないのか、少しトロリとした目でこちらを見据え問う姿は、恋する乙女のよう……とでも言うのだろう。
だが、ワタシの顔を見るや否や、急に俯きだし聞かなかった事にしろ等とほざいた。
「好いているかどうかは知らないけど……これからは小僧の名前を出すんじゃないよ」
「……じゃあ、リ……あの子に会いに行くのはいいんですね?」
確かに名前を出さなければ……と思ったが、いざ会ってもいいのかと言われると、また胸の辺りにムカムカとしたものが募るのを感じる。
「……訂正するよ。今後一切、名前を出す事も、あの小僧に関わる事も全て禁ずるにね」
「……やっぱり好きなんじゃないですか」
ボソリと呟くその言葉を、私の耳は聞き逃さなかった。
「もしワタシが、部下である君を好いているというのなら……ワタシはどうすればいいんだ……ッ?!」
目を閉じ、頭を悩ませながら少し唸ると、不意に腹部に温もりを感じた。驚きながら目を開けると、部下がワタシの身体にヒシリと抱きついている。
「この行為が不快と感じるようでしたら、好いている訳では無いと思います」
不快と感じるなら……と言われたものの、ワタシは今現在……謎の多幸感に襲われていた。
「何なんだこの感覚は……だが、まぁ……悪くない気分だね」
「でしたらもう少しこのままで……私も悪くない気分……いえ、幸せな気分なので」
幸せ……私の至福はマスターと共にある事だけだった筈なのに……いつの間にかこの部下……○○が私の中に入り込んでいたらしい。
もし○○が、ワタシの知らない場所で……ワタシの知らない奴と……考えれば考える程に不快感に襲われる。
認めるしかないようだ……ワタシは誇り高き現魔族長でありながら、○○という一人の女を愛してしまった。
一度自覚し、この感情を知ってしまえば……もう留めることは不可能らしい。
未だに己の身体を抱きしめる小さな身体にそっと腕を回すと、肩がビクリと跳ねた。
「何を離そうとしているんだい? まだ離れる許可は出していないよ?」
「いや……その……恥ずかしくて……どうか離す許可を……」
「ねぇ○○……ワタシは君を愛してしまったみたいだよ」
耳元でそう甘く囁けば、顔を赤く染めて顔を背けられた。この様子なら、きっと両思いと言うものに違いない。
「締め付けられるような甘い痺れに……二人で酔い溺れてみるのも良いかもしれないね」
酔いに顔を赤くして、ジョッキを片手に小僧の愚痴を吐くこの女はワタシの部下である。
最近よく外出しては、小僧に戦いを挑んでいるらしい。こんな奴でも腕はたつのだが、どうやら女であるが故に相手が本気で剣を交えてくれないと嘆いている。
殺しにかかれば本気を出すかと思いきや、変わらず一切として剣を振らずに防御のみで、ましてや口説きにかかる始末だったらしい。
まぁ、実際には口説かれているのではなく、天然タラシのような褒め言葉でこいつが勝手に戦意を削られているだけなのだが。
「煩いよ、そんなに悩むのなら殺してしまえばいいじゃないか。リンク君が本気を出さないのも、君がいつまで経ってもトドメを刺そうとしてないからじゃないのかい?」
イライラとしつつも助言をすれば、部下はポカンと間抜け面を晒した後、机にジョッキを下ろし、項垂れた。
「あの子くらいじゃないと〜私の相手にもならないんだから、しょうがないんだよね〜ヒッック……」
部下がずば抜けて剣術に長けている事は、勿論このワタシも知っている。
戦いが大好きであるにも関わらず、そこらの上位種では暇つぶしにもならないと、主であるワタシに剣を向けて来たのは記憶に新しいものだ。
「小僧を殺せるのなら、さっさと殺して欲しいものだけど、いざ居なくなって今度は君がワタシの邪魔をしてくるのかと思うと……いっそ足止めをしてくれているのだから感謝すべきか」
暇になったら直ぐに剣を抜き、ワタシに襲いかかって来ていたこの部下が小僧と出会ってから私に刃を向けなくなっていた。
その事に最初は喜びを感じていたが、最近は部下が小僧に戦いを挑む姿を見ていると何やら胸の辺りに不快感が生じるようになった。
「ギラヒム様に襲いかからなくなったんですから、寛大な心で許してくださいよ〜リンクはいい暇つぶしなんです〜」
「……そうかい」
小僧を暇つぶしとしか思っていない発言に、不快感が少し薄れたのは偶然だろうか。
「そうだ、ギラヒム様も一緒に飲みましょうよ〜!」
マントの端を捕まれ、クイクイと引っ張られた。手に持ったジョッキを差し出してくる辺り、関節的な接吻は気にしていないのだろう。
…………いっそこれを機に意識させてやろうか。
手に握られたジョッキを奪い取り、半分ほど残った酒を一度で飲み干すと、少し頭がグラりと揺れる。
「ふん……これで満足かい?」
空になったジョッキを机に置きながら言う。
何も言わない部下を不思議に思い目を向けると、先程よりも顔を赤くして口をパクパクとする部下がいた。
「な……ッ」
「なんだい?一緒に飲めといったのは君だろう?」
「一緒のジョッキじゃなくて……別々のジョッキで乾杯しようって意味で……これじゃ関節キ……否……うぅ……」
机に突っ伏しながらブツブツと念仏のように何かを言い続ける部下に、ワタシはとうとう堪忍袋の緒が切れたらしい。
「何だ、さっきからブツブツと!!大体なぁ!!毎晩毎晩、懲りずにリンクが何だかんだと……嫌いな奴の事を誰が聞きたがるってんだ!!」
寧ろ、ワタシはここまで我慢したんだから優しいものだろう。
「リンクの弱点とか話し……」
「そんなの俺が自分で調べれば済む話だろうが!!」
ワタシが剣である以前に、精霊である事をコイツは忘れているのだろうか。
だが、よく考えれば確かに部下は、小僧の苦手な攻撃方法や魔物について話していた気がする。
毎回"リンク"という名が部下の口から出てくる度に機嫌が急降下していて、内容をロクに聞いていなかったらしい。
モヤモヤとした不可解な感情に振り回された記憶が蘇った途端、その時の激情も襲ってきた。
そして気付けば、目の前で虚をつかれた様な顔をした部下に、今まで我慢してきた事を言い放っていた。
「俺はなぁ!!お前の口からアイツの名前を聞きたくねぇんだよ!!!」
待て、ワタシは今なんと言った?? この感情は何だ……怒りに似ているが何処か胸を締めつけるこの感覚は……嫉妬というやつか?
嫉妬とは、恋情のその先にあるもの……ではワタシはなぜ部下に嫉妬心を抱いた?
頭の中で嫉妬という言葉が度重なって反響する。
「ギラヒム様……それは嫉妬……ですか……?」
「……違う」
「リンク」
「あ"ぁ"?!」
…………小僧の名につい反応してしまった。
部下とワタシの間に沈黙の間が出来た。数秒が数分のように感じたのはワタシだけだったのだろうか。
結局いたたまれなくなって、何か言おうと口を開くと、先に部下が話し出した。
「あの、私は……自惚れてもいいのでしょうか……貴方様に好かれていると……その……あ……いや、聞かなかった事にしてください」
まだ酔いが覚めきっていないのか、少しトロリとした目でこちらを見据え問う姿は、恋する乙女のよう……とでも言うのだろう。
だが、ワタシの顔を見るや否や、急に俯きだし聞かなかった事にしろ等とほざいた。
「好いているかどうかは知らないけど……これからは小僧の名前を出すんじゃないよ」
「……じゃあ、リ……あの子に会いに行くのはいいんですね?」
確かに名前を出さなければ……と思ったが、いざ会ってもいいのかと言われると、また胸の辺りにムカムカとしたものが募るのを感じる。
「……訂正するよ。今後一切、名前を出す事も、あの小僧に関わる事も全て禁ずるにね」
「……やっぱり好きなんじゃないですか」
ボソリと呟くその言葉を、私の耳は聞き逃さなかった。
「もしワタシが、部下である君を好いているというのなら……ワタシはどうすればいいんだ……ッ?!」
目を閉じ、頭を悩ませながら少し唸ると、不意に腹部に温もりを感じた。驚きながら目を開けると、部下がワタシの身体にヒシリと抱きついている。
「この行為が不快と感じるようでしたら、好いている訳では無いと思います」
不快と感じるなら……と言われたものの、ワタシは今現在……謎の多幸感に襲われていた。
「何なんだこの感覚は……だが、まぁ……悪くない気分だね」
「でしたらもう少しこのままで……私も悪くない気分……いえ、幸せな気分なので」
幸せ……私の至福はマスターと共にある事だけだった筈なのに……いつの間にかこの部下……○○が私の中に入り込んでいたらしい。
もし○○が、ワタシの知らない場所で……ワタシの知らない奴と……考えれば考える程に不快感に襲われる。
認めるしかないようだ……ワタシは誇り高き現魔族長でありながら、○○という一人の女を愛してしまった。
一度自覚し、この感情を知ってしまえば……もう留めることは不可能らしい。
未だに己の身体を抱きしめる小さな身体にそっと腕を回すと、肩がビクリと跳ねた。
「何を離そうとしているんだい? まだ離れる許可は出していないよ?」
「いや……その……恥ずかしくて……どうか離す許可を……」
「ねぇ○○……ワタシは君を愛してしまったみたいだよ」
耳元でそう甘く囁けば、顔を赤く染めて顔を背けられた。この様子なら、きっと両思いと言うものに違いない。
「締め付けられるような甘い痺れに……二人で酔い溺れてみるのも良いかもしれないね」
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