運命の邂逅【女主】
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マキムラマコトは蝙蝠の刺青の男のことを思い出して泣きそうな顔をしている。
虫酸が走る話だ。
その男と依頼者が同一人物である確証はないが、既に依頼者に対して不信感しかない。
もうこの依頼は引き受けれない、中止だ。
「少しやけど、俺もお前に似たところがあるんや。片っぽだけやが目が見えん、それだけやない、いつ死んでもおかしない場所に長いこと拘束されとった」
「え……?」
「お前に比べたら天国みたいなもんやろうけどな。俺には片目が残っとった、お前より大分マシや。……こんなん言うても慰めにならんか」
「うぅ……ヒック……」
「なに泣かしてんのよ……」
「あぁ……その、なんや……かえって余計なこと言うたなぁ。そや!腹減ったんとちゃうか?なぁ?何も食うとらんもんな!」
「……大丈夫」
「フフフフ」
「な、なに笑てんねん」
「私が買ってくるよ、お兄さんはマコトさんを見てて。何か食べたいものある?」
「……それなら、たこ焼き」
「わかった、ちょっと待ってて。お兄さんの分も買ってきてあげる」
倉庫を出て屋台のたこ焼き屋までスピードを上げて歩く。日が傾き空はオレンジ色に輝いていた。
このまま東京に戻ってしまおうか、そう思ったが彼女を放っておくのは無責任な気がした。
十字路のそばに屋台を見つけた、屋台のおじさんが呼込みをしている。
「すみません、たこ焼き3つください」
「はいよ!1200円ね」
慣れた手付きでたこ焼きを箱に詰めていくと、あっという間に3つ出来上がった。お金を払いビニール袋を手に取って道を折り返えす。
「ちょっとお姉さん、止まってくれるかい」
後ろから誰かが私を呼び止めた。
すぐさまパーカーのフードを深く被り少しばかり警戒する。
「そう、お姉さんだよ。たこ焼き3つも一人で食べるの?」
「……ダメ?」
「いいや、ダメじゃないよ。1つおじさんにくれないかな。そんで公園で一緒に食べようか、お話しながら」
「ナンパ?」
「ナンパするほど暇じゃないんだ。依頼をお願いしたい、シカリオちゃん」
その名前を知っているということは、この男はあっちの人間だ。フードからちらりと男を窺うが覚えのない顔だった。
「今立て込んでて依頼は受けられない」
「そんなこと言わないでよ、難しいことじゃない。君が大阪にいると噂で聞いてね。探してたんだ、こうもすぐ見つかるとは思っていなかったけど」
私の存在がもうバレている。
もしかしたら誰か情報を流しているのかもしれない。このタイミングに依頼をしてくる者がいるのなら、今回の依頼と何かしら関わりのある人物なのでは。
話を聞くふりをして探るのも悪くない。
「話を聞くだけなら」
「さすが話がわかる」
男は私の横を通り過ぎ誘導するかのように先頭を切って公園のある方へ歩きだす。周りに仲間がいないか確認しつつ男についていった。
公園に到着すると、ホームレスやチンピラがたむろしていたり、あまり治安がいいとはいえなかった。
男はベンチに座り隣に座るよう指示してくる。
年齢は50代くらいか、白髪交じりの短髪にスーツ姿。経験上分かる、こいつはヤクザのニオイがする。
「まずは名前名乗ってもらえる?」
「これは失敬、佐川だ」
「私に依頼するのは初めてね」
「君の噂は聞いてるよ、凄腕らしいじゃない」
「要件を早く」
「もちろん殺しだ、こいつがヘマをしたら殺してほしいんだ」
佐川は写真を私に渡した。
そこにはさっきまで一緒にいた眼帯の男が写っている。
「真島吾朗、グランドっていうキャバレーの支配人をしてるんだが、こいつは元極道だ。手伝いをしてくれてんだが、なかなか言うことを聞いてくれなくて捗らねえ」
「真島吾朗……」
「一応今俺が親みたいなもんでさ、世話焼いてんのよ」
極道、佐川、それでピンときた。
眼帯の男が近江連合の名前を出したこと、誰かに脅されている様子だったこと、これで繋がった。
「佐川さんって、近江連合の佐川さん?」
「ははは、さすが殺し屋さん、通だねぇ」
「子のしつけぐらい親がやったら?」
「もう手に追えないのよ」
「親みたいなもんってどういうこと?この写真の男は近江なの?」
「俺の兄弟分から預かってんだ」
この男は五代目近江連合直参組長 佐川司。
佐川の兄弟分に心当たりがある。
近江連合と肩を並べる関東の組織東城会に嶋野という男がいる。その男を仕事上調べた際に佐川という兄弟分が居たことを思い出した。
「嶋野太……」
「おー、御名答。お勉強してんだね」
眼帯の男は東城会の組員だったのか。事件に巻き込まれているのは、借金でもしているのかと思っていたが……。
あの服装の謎も解けた。
「あんたは知ってるか?上野吉春襲撃事件を」
「……上野吉春?」
「真島の兄弟分、冴島大河が上野誠和会会長上野吉春を襲撃した事件だ、その時周りにいた18人もの組員を殺害した。その冴島大河は今服役中」
「話が見えないんだけど」
「真島も冴島と共に襲撃するはずだったんだ、でも真島は現場に来なかった。あいつは仲間を裏切る奴なんだよ。怖いねぇ、俺も裏切られんのかなぁ」
「その話をして私が動くとでも?佐川さん、真島という男は今カタギなんでしょ?私はカタギには手を出さない主義なの、だからこの話はお断りする」
「そうか、そりゃ残念だ。交渉決裂だな」
「ふん、交渉すらしてないと思うけど。帰っていい?」
「時間取らせて悪かったね、たこ焼き冷めちゃったかな」
「新しいの買うから、このたこ焼きあげる」
「3つもくれるの?優しいね」
戯言を無視して公園を出た時、佐川は再び私を呼び止めた。
「真島ちゃんに会ったら伝えといてよ、殺らないと死ぬよって」
この男は私が真島吾朗と一緒にいることを知ってるのか、試しているのか、ただ好奇心で会いに来たのか。
この男、何を考えているのかわからない。
虫酸が走る話だ。
その男と依頼者が同一人物である確証はないが、既に依頼者に対して不信感しかない。
もうこの依頼は引き受けれない、中止だ。
「少しやけど、俺もお前に似たところがあるんや。片っぽだけやが目が見えん、それだけやない、いつ死んでもおかしない場所に長いこと拘束されとった」
「え……?」
「お前に比べたら天国みたいなもんやろうけどな。俺には片目が残っとった、お前より大分マシや。……こんなん言うても慰めにならんか」
「うぅ……ヒック……」
「なに泣かしてんのよ……」
「あぁ……その、なんや……かえって余計なこと言うたなぁ。そや!腹減ったんとちゃうか?なぁ?何も食うとらんもんな!」
「……大丈夫」
「フフフフ」
「な、なに笑てんねん」
「私が買ってくるよ、お兄さんはマコトさんを見てて。何か食べたいものある?」
「……それなら、たこ焼き」
「わかった、ちょっと待ってて。お兄さんの分も買ってきてあげる」
倉庫を出て屋台のたこ焼き屋までスピードを上げて歩く。日が傾き空はオレンジ色に輝いていた。
このまま東京に戻ってしまおうか、そう思ったが彼女を放っておくのは無責任な気がした。
十字路のそばに屋台を見つけた、屋台のおじさんが呼込みをしている。
「すみません、たこ焼き3つください」
「はいよ!1200円ね」
慣れた手付きでたこ焼きを箱に詰めていくと、あっという間に3つ出来上がった。お金を払いビニール袋を手に取って道を折り返えす。
「ちょっとお姉さん、止まってくれるかい」
後ろから誰かが私を呼び止めた。
すぐさまパーカーのフードを深く被り少しばかり警戒する。
「そう、お姉さんだよ。たこ焼き3つも一人で食べるの?」
「……ダメ?」
「いいや、ダメじゃないよ。1つおじさんにくれないかな。そんで公園で一緒に食べようか、お話しながら」
「ナンパ?」
「ナンパするほど暇じゃないんだ。依頼をお願いしたい、シカリオちゃん」
その名前を知っているということは、この男はあっちの人間だ。フードからちらりと男を窺うが覚えのない顔だった。
「今立て込んでて依頼は受けられない」
「そんなこと言わないでよ、難しいことじゃない。君が大阪にいると噂で聞いてね。探してたんだ、こうもすぐ見つかるとは思っていなかったけど」
私の存在がもうバレている。
もしかしたら誰か情報を流しているのかもしれない。このタイミングに依頼をしてくる者がいるのなら、今回の依頼と何かしら関わりのある人物なのでは。
話を聞くふりをして探るのも悪くない。
「話を聞くだけなら」
「さすが話がわかる」
男は私の横を通り過ぎ誘導するかのように先頭を切って公園のある方へ歩きだす。周りに仲間がいないか確認しつつ男についていった。
公園に到着すると、ホームレスやチンピラがたむろしていたり、あまり治安がいいとはいえなかった。
男はベンチに座り隣に座るよう指示してくる。
年齢は50代くらいか、白髪交じりの短髪にスーツ姿。経験上分かる、こいつはヤクザのニオイがする。
「まずは名前名乗ってもらえる?」
「これは失敬、佐川だ」
「私に依頼するのは初めてね」
「君の噂は聞いてるよ、凄腕らしいじゃない」
「要件を早く」
「もちろん殺しだ、こいつがヘマをしたら殺してほしいんだ」
佐川は写真を私に渡した。
そこにはさっきまで一緒にいた眼帯の男が写っている。
「真島吾朗、グランドっていうキャバレーの支配人をしてるんだが、こいつは元極道だ。手伝いをしてくれてんだが、なかなか言うことを聞いてくれなくて捗らねえ」
「真島吾朗……」
「一応今俺が親みたいなもんでさ、世話焼いてんのよ」
極道、佐川、それでピンときた。
眼帯の男が近江連合の名前を出したこと、誰かに脅されている様子だったこと、これで繋がった。
「佐川さんって、近江連合の佐川さん?」
「ははは、さすが殺し屋さん、通だねぇ」
「子のしつけぐらい親がやったら?」
「もう手に追えないのよ」
「親みたいなもんってどういうこと?この写真の男は近江なの?」
「俺の兄弟分から預かってんだ」
この男は五代目近江連合直参組長 佐川司。
佐川の兄弟分に心当たりがある。
近江連合と肩を並べる関東の組織東城会に嶋野という男がいる。その男を仕事上調べた際に佐川という兄弟分が居たことを思い出した。
「嶋野太……」
「おー、御名答。お勉強してんだね」
眼帯の男は東城会の組員だったのか。事件に巻き込まれているのは、借金でもしているのかと思っていたが……。
あの服装の謎も解けた。
「あんたは知ってるか?上野吉春襲撃事件を」
「……上野吉春?」
「真島の兄弟分、冴島大河が上野誠和会会長上野吉春を襲撃した事件だ、その時周りにいた18人もの組員を殺害した。その冴島大河は今服役中」
「話が見えないんだけど」
「真島も冴島と共に襲撃するはずだったんだ、でも真島は現場に来なかった。あいつは仲間を裏切る奴なんだよ。怖いねぇ、俺も裏切られんのかなぁ」
「その話をして私が動くとでも?佐川さん、真島という男は今カタギなんでしょ?私はカタギには手を出さない主義なの、だからこの話はお断りする」
「そうか、そりゃ残念だ。交渉決裂だな」
「ふん、交渉すらしてないと思うけど。帰っていい?」
「時間取らせて悪かったね、たこ焼き冷めちゃったかな」
「新しいの買うから、このたこ焼きあげる」
「3つもくれるの?優しいね」
戯言を無視して公園を出た時、佐川は再び私を呼び止めた。
「真島ちゃんに会ったら伝えといてよ、殺らないと死ぬよって」
この男は私が真島吾朗と一緒にいることを知ってるのか、試しているのか、ただ好奇心で会いに来たのか。
この男、何を考えているのかわからない。