第二話 未体験の知識
そとであそびたい?
くだらないことをしているひまがあるならちしきをたくわえろ
おまえはちの王をうむぎむがあるのだから
たしゃをけおとせ
たしゃにかかわるな
たしゃなど
「シルヴィー」
──肩を震わせた。
「はい」
「もう少しで城に着きますわ。身だしなみを…」
「大丈夫です。髪も服も…整えてあります」
馬車の中、シルヴィーは向かいに座った母から目を逸らし、過ぎる景色を眺めた。
『アレ』から数日が経過した。
シルヴィー自身に大きな怪我もなく、知王家が用意した馬車の責任だと何だという事も広まることなく、むしろ事件さえ無かった事にされ、無事再びの謁見を許された。
予定が狂ってしまったが、今日こそフェルナンドと面会をしなければならない。
──農国側への礼と謝罪等をしていないのは少々気になったが、シルヴィーが何を言った所で暖簾に腕押しだった。両親曰く農国は王族も平民と同じなので礼などは必要無い…との事だ。それに知王族側からキチンと礼と謝罪をしてくれたらしい。
──シルヴィーが入る隙は無かった。
昼の太陽が高く輝き、馬車は舗装された規則正しい石畳を走る。
知国らしい乾いた空気が頬を撫でた。
そんな爽やかな風が吹くにも関わらず、シルヴィーの表情は暗かった。
──自分はフェルナンドの妻となる。
選ばれし王族の血を残す為に必須な事柄だ。
しかし、
「(サルゴン様にも、いつか奥さんが出来るのだろうな…)」
自分で考えた事に深い溜め息と暗い気持ちが押し寄せてきた。
ここ数時間、その事ばかりが頭から離れない。
優しく穏やかな笑顔が隣の知らない女性に向けられる。幸せそうな二人が見つめ合い、仲睦まじく腕の中の赤子をあやし始める──
「嫌だな…」
ポツリと呟くと、知のケフラー城が見えてきた。