第二話 未体験の知識
外で子供達が遊んでいる。
無邪気に笑い、将来を微塵も恐れず走り駆けている。
そんな子供達から離れた木陰に小さな女の子が立っていた。
大きな本を胸に抱いて、ずっと子供達の輪を見つめている。
(あの子、こっちをずっと見ているよ?)
(いいよ、あの子は)
(あの子は仲間なんかに入りたくないよ)
(だって)
──シルヴィーだもん。
伏せた瞳を開いて、自室の窓を閉めた。
空はどんよりと暗く、雨が降っている。
「(何を当たり前の事を…)」
頭を過ぎった考えに、シルヴィーは自分で苦笑を浮かべて椅子に腰掛けた。
「(夜だもの。暗いのは当たり前だわ)」
そうだ。くだらないじゃないか。無駄じゃないか。
小さい頃からずっと勉強して、ずっと本を読んで、将来の為に『くだらなくて』『無駄』な事はしなかった。
『しなかった』
当たり前とは、そうあるべき。ごく普通。並…道理上そうあるべきこと。
道理とは
「正しい、筋道…」
シルヴィーは自分に言い聞かせるように呟き、再び目を伏せた。
「シルヴィー」
一呼吸置き、ノックもされずにドアが開けられた。
シルヴィーが振り返ると、鋭い瞳をした父が歩み寄ってきていた。
「シルヴィー」
「…はい」
父の表情は淡々としているが、声色は鋭く荒い。
「お前のやるべき事はなんだ?」
「……次の知王を、産むことです」
「婚約者は誰だ?」
「フェルナンド様です」
「お前に相応しいのは」
「フェルナンド様、です」
小さい頃から教えられてきた。言い聞かせられてきた。
国の法と知識の頂点に立つ王族。
その一族こそが、天才だと呼ばれている自分に相応しい。
周囲にも認められ、推されてきた。
「心配はいりません、お父様。何が一番正しいのか、私が何をすべきなのか。承知しています。私は必ずや──フェルナンド様の子を産みます」
飼われた雛は、空を飛べないのだから──
無邪気に笑い、将来を微塵も恐れず走り駆けている。
そんな子供達から離れた木陰に小さな女の子が立っていた。
大きな本を胸に抱いて、ずっと子供達の輪を見つめている。
(あの子、こっちをずっと見ているよ?)
(いいよ、あの子は)
(あの子は仲間なんかに入りたくないよ)
(だって)
──シルヴィーだもん。
伏せた瞳を開いて、自室の窓を閉めた。
空はどんよりと暗く、雨が降っている。
「(何を当たり前の事を…)」
頭を過ぎった考えに、シルヴィーは自分で苦笑を浮かべて椅子に腰掛けた。
「(夜だもの。暗いのは当たり前だわ)」
そうだ。くだらないじゃないか。無駄じゃないか。
小さい頃からずっと勉強して、ずっと本を読んで、将来の為に『くだらなくて』『無駄』な事はしなかった。
『しなかった』
当たり前とは、そうあるべき。ごく普通。並…道理上そうあるべきこと。
道理とは
「正しい、筋道…」
シルヴィーは自分に言い聞かせるように呟き、再び目を伏せた。
「シルヴィー」
一呼吸置き、ノックもされずにドアが開けられた。
シルヴィーが振り返ると、鋭い瞳をした父が歩み寄ってきていた。
「シルヴィー」
「…はい」
父の表情は淡々としているが、声色は鋭く荒い。
「お前のやるべき事はなんだ?」
「……次の知王を、産むことです」
「婚約者は誰だ?」
「フェルナンド様です」
「お前に相応しいのは」
「フェルナンド様、です」
小さい頃から教えられてきた。言い聞かせられてきた。
国の法と知識の頂点に立つ王族。
その一族こそが、天才だと呼ばれている自分に相応しい。
周囲にも認められ、推されてきた。
「心配はいりません、お父様。何が一番正しいのか、私が何をすべきなのか。承知しています。私は必ずや──フェルナンド様の子を産みます」
飼われた雛は、空を飛べないのだから──