第二話 未体験の知識
シルヴィーとサルゴン、そしてゴンとその頭に乗る雛は夕日を背に畦道を進んでいた。
「……」
「……」
お互い言葉を交すことはない。
その歩みはゆっくりとしており、まるで言葉を探す時間稼ぎのように思えた。
「ピ!ピ!」
静寂を破って突然雛が鳴きだした。
反射的にそちらへ顔を向けると、トンボがゴンの耳に止まっていた。
ちょうど雛の目の前である。
「ピピッピッ!」
「ああぁ、あぶねぇ」
雛は後先考えず、興味深々でトンボに向かって飛び掛るが、当然ながら頭から転げ落ちた。
まん丸フォルム故、コロンと一回転しつつ落ちた雛をサルゴンが咄嗟にキャッチすると、優しく元のゴンの頭、定位置に戻してやった。
頭上にトンボの群れが飛んで行く。
夕日に染まった茜色のトンボは風に乗り、天高く飛び去った。
「この子は恐れよりも好奇心の方が強いべなぁ」
サルゴンはフワフワの雛を優しく撫でると、次はその指に興味を示したようで、小さなクチバシでガジガジと指を噛り始めた。
「あっははは。この子、ほんとにシルヴィーにそっくりだっぺ」
「えっ…私に、ですか?」
サルゴンは指を雛から離すと、シルヴィーに笑いかけた。
「ほれ、この好奇心旺盛な目が…」
「ピ!」
「あ!また、あぶねぇって」
雛はまた何かを見付けたように頭から転げ落ちた。
再びキャッチされた雛はサルゴンの手の中でモゾモゾともがき、顔を出すとすかさず指を食んだ。
──かと思うと、高い空を見上げて動きを止めた。
その瞳はキラキラとし、夕日よりも輝いていた。
「知ることを楽しんでるべなぁ…」
サルゴンは呟くと、そっとゴンの頭に雛を戻した。
「黄色くて小さい体もそっくりだけ」
「小さいは余計です」
シルヴィーは軽く頬を膨らますが、すぐに息を吐いた。
小さくて、未熟で、何も知らない。
そんな雛は、まさに自分の事のようだ。
シルヴィーは目を細め、呟く。
「雛は、何故あんな場所にいたのでしょう?」
生まれたばかりで、小さい体のくせに、
「雛には、雛のいる場所があるはずなのに…」
「……」
雛は空を見つめている。
夕日と雲を目で追い、広い広い空に向かって羽根を動かしている。
「頑張っても無駄よ。雛は……飛べないんだから」
シルヴィーはそう言って雛を見つめるが、その止む事のない好奇心の瞳は彼女に向けられる事はなかった。
「……」
「……」
お互い言葉を交すことはない。
その歩みはゆっくりとしており、まるで言葉を探す時間稼ぎのように思えた。
「ピ!ピ!」
静寂を破って突然雛が鳴きだした。
反射的にそちらへ顔を向けると、トンボがゴンの耳に止まっていた。
ちょうど雛の目の前である。
「ピピッピッ!」
「ああぁ、あぶねぇ」
雛は後先考えず、興味深々でトンボに向かって飛び掛るが、当然ながら頭から転げ落ちた。
まん丸フォルム故、コロンと一回転しつつ落ちた雛をサルゴンが咄嗟にキャッチすると、優しく元のゴンの頭、定位置に戻してやった。
頭上にトンボの群れが飛んで行く。
夕日に染まった茜色のトンボは風に乗り、天高く飛び去った。
「この子は恐れよりも好奇心の方が強いべなぁ」
サルゴンはフワフワの雛を優しく撫でると、次はその指に興味を示したようで、小さなクチバシでガジガジと指を噛り始めた。
「あっははは。この子、ほんとにシルヴィーにそっくりだっぺ」
「えっ…私に、ですか?」
サルゴンは指を雛から離すと、シルヴィーに笑いかけた。
「ほれ、この好奇心旺盛な目が…」
「ピ!」
「あ!また、あぶねぇって」
雛はまた何かを見付けたように頭から転げ落ちた。
再びキャッチされた雛はサルゴンの手の中でモゾモゾともがき、顔を出すとすかさず指を食んだ。
──かと思うと、高い空を見上げて動きを止めた。
その瞳はキラキラとし、夕日よりも輝いていた。
「知ることを楽しんでるべなぁ…」
サルゴンは呟くと、そっとゴンの頭に雛を戻した。
「黄色くて小さい体もそっくりだけ」
「小さいは余計です」
シルヴィーは軽く頬を膨らますが、すぐに息を吐いた。
小さくて、未熟で、何も知らない。
そんな雛は、まさに自分の事のようだ。
シルヴィーは目を細め、呟く。
「雛は、何故あんな場所にいたのでしょう?」
生まれたばかりで、小さい体のくせに、
「雛には、雛のいる場所があるはずなのに…」
「……」
雛は空を見つめている。
夕日と雲を目で追い、広い広い空に向かって羽根を動かしている。
「頑張っても無駄よ。雛は……飛べないんだから」
シルヴィーはそう言って雛を見つめるが、その止む事のない好奇心の瞳は彼女に向けられる事はなかった。