第二話 未体験の知識


「シルヴィー?」
「──ぁ」
「ちょっと顔色悪いべや…休もか?」
ハッと思考を止めると、サルゴンが心配そうに顔を覗き込み、シルヴィーの額に手を添えてきた。
サルゴンの手は大きくてゴツゴツしているが、とても優しくて温かい。
このままずっと触れていて欲しい──シルヴィーはそんな触れ返したくなる衝動を抑え首を振った。
「いえ、大丈夫です。ちょっと考え事をしていただけなので。先に進みましょう」

早く雛を見付けて、早くフェルナンド様に会わないと。このぬるま湯のような熱りと感情が続いたら、きっと血迷ってしまう。

使命を忘れてはならないのだから──


「…んだか。ほけ手ぇな」
サルゴンはシルヴィーの前に手を差し延べると、やんわりと微笑んだ。
「さっきみてぇにコケそうになったらいけんでな」
「えっ?あ……け、結構です!」
一瞬困惑したが、意味を理解するとシルヴィーは赤面した。
ようするに、手を繋ごう。という事だ。そのお誘いも差し伸べた手もあまりにも自然で、胸の高鳴りが蘇ってしまった。

太陽のような笑顔が眩しい。差し出された手がとても大きくて、腕は太く逞しい。風にフワフワ揺れる髪が爽やかで──これ以上は駄目だ!!
「わ、私はこれで十分です!」
シルヴィーは思考を振り払うように、サルゴンの服の裾を勢い良く握り締めた。その強さは傍から見て、ギリギリと音を立てるかのように思えるくらいだ。
「さ、さぁ!!先に進みましょう!」
…と、言いながらもシルヴィーは何故かグイグイと後退りしている。恐らくサルゴンと距離を取ろうとしているのだろうが…しかし、裾は離さない…

そんな彼女の行動に一瞬目を丸くしたが、サルゴンはすぐに優しく微笑み
「んだ。海には雛いねぇみてぇだし。牧場に戻っべな」

はにかみつつ顔を赤らめた。
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