第二話 未体験の知識

シルヴィーは歩く。

「はぁっはぁっ…」

歩く歩く。

「ぜぇっ…」

歩く歩く歩く歩く歩く歩く歩く歩く…

「まだですか!?貴方の家はっ!!」
「まだ歩き始めたばっかっぺよ?」
「もう43分歩いてます!!」
あれから、青年に服の泥汚れを指摘されたシルヴィーは仕方なく歩き始めていた。
両親の事だ。自分を見付けたら即知国まで連れて帰り、フェルナンド様に会わせるに決まっている。いや…結婚式の詳細という大事な話し合いの約束だから、自分だってそれを希望するが…
「(こんな姿では行けない…)」
シルヴィーは少し泣きそうになった。
馬車は暴走するわ、オオカミには囲まれるわ、服は汚れるわ…

「あと少しだけぇな」

こんな、田舎青年の世話になるわ…
嗚呼、清潔で聡く知識の要たる知国のヴィーナス領の娘がなんたる屈辱。
シルヴィーは俯き、心の中で婚約者に謝罪した。
「(フェルナンド様申し訳ありません…貴方様の妻は一生の不覚を──)」
「よいしょ」
「…なっ…え?」

突然ふわりとした感覚がした瞬間、シルヴィーの視界が随分と高くなった。

「…え?は?」
「やっぱ女の子は歩くの疲れるべなぁ。だいじへ?も少しで着くでな」
神妙な顔で俯いたのが心配だったのか、青年はシルヴィーを抱き上げて歩き始めていた。
「…お」
体が震えた。
「降ろしなさーい!!」

シルヴィーの声が、広い野山に響いた…
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