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間話 掟と話し合いと…集合?

「…んな、阿呆な事する暇あるなら用事が済ませよや。それで連れて来たんやろ」
ポカンとしているアテナの横、麦わら帽子を顔に乗せていた男性──恐らく農国王がのそりと身を起こした。
黒い短髪に細い目、土で汚れている作業着…特徴も少なく印象に残り難い顔立ちと相まって、どこにでもいる民間人にしか見えない。こちらもあの農民スタイルなサルゴンの父親と言われて納得出来る。

「…用事、ですか…」
驚きの感覚というものがマヒしてきているのか、"国王"というとんでもない相手の事よりも"用事"という発言が引っかかった。
──恐らく、否、確実に先程フェルナンド達にも散々言われた"次期王位継承者との婚姻条件に相応しくない"という話だろう。王子達との話し合いでアレなのだから、国王達からしたらアテナの存在は見過ごせない"異物"に違いない。

紅茶の湯気が燻る。自分の心音が体内に響き、手に汗が滲んだ。
国王は"国"の頂点であり、彼らが白と言えば黒も白になる。アテナとザードの仲を認めない──どころか五つ国から出て行けと下し、国外追放を強制実行する事も可能なのだ。
今まではレオの優しさで見逃してもらっていた…のかもしれない。
アテナは俯いて、目をギュッと瞑った。
「…そうだね」
先程までの軽い声色ではなく、静かで淡々とした創王リーフの言葉にアテナの肩はビクリと跳ねた。
俯いて目を瞑っている為見えないが、他の国王達の視線も痛いほどに感じる。
──まるで処刑される罪人のようだ。

「アテナちゃん」
「は…はい…」
「ザード君の事、どの位好きか歌で表現してみて」
「……え?はい?」
「踊りでも良いよ」
歌!?踊り??!!
あまりに突拍子もなく、そして驚き過ぎて目を開けて顔を上げると、ニコニコと微笑むリーフがアテナを覗き込んでいた。
「恥ずかしがらずに恋バナしよーよ☆あ、いきなりじゃ話しにくい?じゃあ僕からするね!僕の奥さんのアイカはねぇ美人で可愛くてツンデ」
「もう黙ってろ、バカ草。話が進まない」
「ほれ、菓子と茶や」
困惑するアテナに身を乗り出して熱弁し始めようとしたリーフは、ヒイラギによって襟首を掴まれ椅子に座らされた。ラルゴはそこへすかさずチーズケーキと紅茶(アテナに出されていた)をスライドさせ──見事な連携だ。

レオは一連の連携を横目に溜め息を吐いた。
「アテナ、お前をここに連れて来た理由は、お前自身の気持ちを聞きたかったからだ。ザードは……昔から人の話を聞かずに一人で突き進む癖があってな…今回の事もアイツの一方的な気持ちで動いているのではないかと心配になった……聞かせてくれ。お前の本当の気持ちを」
「レオ様…」
レオの表情は"一国の王"ではなく"ザードの父親"であり、国の未来よりもザードの心配をしているように感じられた。
──レオだけではない。
執務室に入って、国王達から感じる雰囲気は"アテナとザードの未来"を純粋に案じているものだ。
先程、フェルナンドは「王とは人である前に国を支える柱でなければならない」と言っていた。確かにそうなのかもしれない。そうあらねばならない。
しかし、目の前の王たちは"国王である前に人"であってくれたようだ。

「私は…」
アテナはゆっくりと、言葉を選ぶように言った。
「私はザード様の事が好きです。認められなくても…この気持ちだけは本当です」
「…その言葉に嘘偽りはないな」
「はい」
その言葉を聞き、一息吐くとレオは深く頷き、微笑んだ。言葉にはしないが安堵しているようだ。他の二人の王も同様の様子で息を吐いている。残りの何の反応もしていないリーフは話を聞いているのかいないのか、ケーキを優雅に食べている。
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