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間話 掟と話し合いと…集合?

法の番人であり、五人のまとめ役の知の国ケフラー王子"フェルナンド"

一見儚く美しい姿をしているが、飄々としていて掴み所のない創の国ティファレト王子"アレフ"

皮肉屋で口が悪いが、何だかんだと手助けをしてくれる工の国コクマー王子"ヒサギ"

何故か食料納品をしてくれていた見た目がまるっきり農民な農の国イエソド王子"サルゴン"

そして、
乱暴で俺様だけど一途で心配性で、自分の事を好きだと言ってくれた武の国ホド王子"ザード"

アテナは改めて王子五人に囲まれている今の状況が信じられなくなってきていた。
繰り返すが、王子は将来五つの国を背負う立場にある、有体に言えば国王の次に偉い身分である。本来ならば謁見する事も難しいはずなのだが…それが今、五人全てが揃って自分の前にいるのである。場違い感甚だしい。
アテナはこの状況にいたたまれなくなり、ゆっくりとザードの腕の中から離れようとした──が、わりとガッチリと体を固定され身動きが取れなくなっていた。

「あ、あのぉ…ザード様、動けないのですが…?」
「は?逃がさねぇよ?」
おずおずと見上げたアテナにザードはぶっきらぼうに答えた。

「お前、すぐどこかに行こうとしやがって…俺の傍にいろって言っただろ」
「…ザード様」
「国も法も関係ない。俺とお前がどうしたいのか?だろ。俺はアテナを嫁にしたい。だからグダグダ言ってくるコイツらをぶん殴ってでも分からせる。俺は俺を貫かせてもらう。そしてお前の事も守る…絶対に」
真っすぐな言葉とまなざしを向けられ、アテナは胸が熱くなった。
──やはりザード様は凄い。
場違いだとか、相応しくないとか、そういう不安な気持ちが一瞬で消えてしまった。

アテナは微笑むと、背伸びしてザードの顔に手を添えると頬にキスをした。
ヒサギの舌打ちとアレフの「わぉ」という声が聞こえる。フェルナンドの深い溜息もサルゴンの無言の微笑みも視界の端に見える。
それを無視し、アテナはびっくりした様子のザードに言葉を続けた。
「ザード様、ありがとうございます。私、とっても自分勝手ですけれど……ザード様の事が好きです。大好きです。傍に居たいです…国がどうなったとしても…私は…」

「人を愛するというのは、美しいね」

──その場に拍手が響いた。

「えっ…?」
アテナの言葉を遮るように響いた声と拍手に振り返ると、楽し気な表情で近付いてくる長身の男性が視界に飛び込んで来た。
見た目は──本や町でよく見る吟遊詩人そのもので、アテナは困惑した。
「吟遊詩人さん…?どうして、城内に…?」
「過ちだと理解しながらも愛し合う二人…そしてその想いを貫くと誓い合う……切なく美しく、そして感動的だ!」
「えっ、ふぇええっ!?」
吟遊詩人は困惑するアテナに歩み寄ると、手を取り、腰に手を回して引き寄せた。
「愛の煌きが眩しいよ!嗚呼、甘美で蕩けるような、毒々しさ…破滅か、産声か…心を掴んで離さない!愛こそ至高、愛こそ自由!──踊ろう!アテナちゃん!!」
「えええぇぇえ!!???」
アテナは吟遊詩人によってクルクルと踊らされた。相手のリードが上手すぎるのだろう。ダンスをした事がないというのに、完璧なステップを踏めてしまった。
──そんな唐突な異常事態を振り払う事が出来ないのには理由があった。
吟遊詩人の男性が美しすぎるのだ。
白銀の長い髪はシルクのように陽の光を反射して煌き、ビスクドールのような整い過ぎた顔と揺れる睫毛、そして心の底から楽し気に、しかし狂気を感じさせる笑い…アテナは魔法にかけられたかのように魅了され、成すがままになってしまった。
──こんな感覚、ついさっきも感じたような…
そう脳裏に過った瞬間、アテナの体は宙を浮いていた。
「あははっ!楽しいね!でも楽しい時間は終わりがあるから幸せなんだ。儚いね。悲しいね。というわけで、次の楽しい事をしに行こうね☆」
アテナは長身の吟遊詩人に抱き上げられていた。行動が突拍子無さ過ぎる。
「ザっ…!うひゃぁあああ!!」
アテナがザード、他四人に助けを求めようと手を伸ばす前に、まるで風のように吟遊詩人は走り出してしまった。

その場に残された王子"四"人はそれを唖然と見送るしか出来なかった…
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