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間話 掟と話し合いと…集合?

──これは私のせいだ。
アテナの眩暈は増し、頭痛を伴って動悸が強まってきた。
──私がいるから駄目なんだ。
皆が辛そうにしている。その原因は自分なのだと、そう自覚してしまうと罪悪感で圧し潰されそうになってしまう。

ザードは自分を愛してくれている。だから庇ってくれている。想いを貫こうとしてくれている。
フェルナンドは五つの国の未来を考えて説得している。言葉は厳しいが、相手の気持ちも汲んでくれている。
アレフは全員の事、国の事も考えて最善策を提示してくれた。
ヒサギは傍観をしているようで、冷静に意見を言ってくれた。
──全員がそれぞれの立場で、それぞれ助けたいのに、辛く苦しくなってしまっている。

──私のせいだ。
ザードと出会ってしまったから、ザードを好きになってしまったから…──

アテナはザードから身を離し、後退りすると大粒の涙が地面に落ちた。
目を見開くザードが手を伸ばすが、アテナはそれを避け、更に後ろへ下がる。何かを言おうとするが、言葉に出来ずただただ首を振る事しか出来ない。
どうしたらいいのか分からない。感情と共に涙が溢れ、一歩下がるごとに頭の中がぐちゃぐちゃになっていく。
──いっその事、このまま裏庭の井戸へ身を投げて…


「どうしたけぇ、アテナちゃん?!」
「ひぁ!?」
唐突に後ろから肩を掴まれ、アテナは言葉にならない声を出してしまった。振り返ると焦った様子の、見知った顔の青年が立っていた。
「何で泣いてるん?だいじ?これで拭き。あ、桃。桃食べる?甘いけぇ、元気出るべよ、な?」
アテナは差し出された薄い布…てぬぐいを受け取り、改めてその相手を見上げた。

薄い藤色の髪に緑の目。紐の付いた麦わら帽子を首に提げ、シャツに作業着、長靴、軍手──いつも食料を届けにやって来る農の国の青年だ。つい先日も父親と共にやって来て、大量の食糧を納品してくれたはずだ。

「あ、ありがとう、ございます。でも、あの、まだ食料は沢山ありますし…今日は来る日じゃないはず…ですよね?」
「うん?ああ、んだんだ。食べもんも追加で持ってきたけんど、それはついでで……ん?へぁ、もしかしてザードの嫁さんてアテナちゃんの事け?はぁー、そかそかぁ」
「え?」
青年の自然に不自然な言葉で、あんなに出ていた涙が引っ込むくらいアテナの目は点となり、背中を押されてザードの元へ戻された。

「今日はザードに嫁さん出来たって聞いて、呼ばれてきたんよ。んでも、どしてアテナちゃん泣いてるけぇ?ザードが変な事言ったんか?」
「俺は悪くねぇし、何もしてねぇ」
「……待て?サルゴンもアテナ嬢の事を知っていたのか?ヒサギもアレフも知っていたという事は…知らなかったのは私だけか?!何故誰も報告をしなかった?!」
「遅かったね、サルゴン」
「どうせ、あのくっっっそ遅い牛の荷台で来たんだろ?」
「私の話を聞け!理由を言え!」

アテナは状況が飲み込み切れなかった。
目の前の青年はいつも食料を持って来てくれる農国イエソドの、どこからどう見ても農民だ。一般人だ。アテナが武国の城へ来てから普通に何度も会話して、普通に接していた。
確かにザードと話している姿も何度か見かけたが…城に常駐している兵士達も同じようにザードに気安くしているので違和感はなかった。
けれども、今の状況──他の王子たちの様子からして、明らかに、親しげ過ぎる…

呆気に取られているアテナの様子に気付いてか、青年は少し困ったように頭を掻いて笑った。
「あ、ごめんなぁ。そえば改まっての自己紹介がまだだったへな。オラはサルゴン。一応農の国イエソドの次の王様…ええと?王子、そだ、次期王位継承者だけぇ。改めてよろしくなぁ、アテナちゃん」
食料納品農民…改め、農国イエソドの王子サルゴンは人懐っこく笑った。
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