間話 掟と話し合いと…集合?
「へぇ…」
時間にしたら数秒後だったかもしれない。
ザードがアテナを抱き締めている姿を見て、アレフは含みのある笑みを浮かべた。
「ザード、その子…アテナの事、本気なんだ?」
「アレフ、ザードを焚付けるような発言は止めろ。何度も言っているが掟が──」
「分かってる。でもさ、ザード達の気持ちも尊重してあげないと…ねぇ?」
アテナは一瞬背筋が凍った。その理由は分からない。ただ、アレフの笑顔と優し気な声色に嫌な予感がした。
──それはザードも、否、フェルナンドとヒサギまで一緒だったようで、舌打ちをしたり溜息を吐いたり、それぞれ"嫌な予感"の反応を示した。
「フェルナンドもザードも頭が固いよ。柔軟に考えないと…掟で禁じられているのは"王妃に他国の女性を据える事"と"王位継承者に他国の血を混ぜる事"…だったら"王位継承者を他国の女性と作らなければいい"」
「……私は最初からそう言っているが?」
「俺が言っているのは違う。アテナを側室にしたらいいって話」
「側室?!」
「そう。国王に限り一夫多妻が認められている。まぁ、近年は行われていないけれど……創国の数代前の国王は色を好んでいたらしくて、五つ国中の美女を側室にして、沢山の子供を作ったんだってさ。…まあ、王位継承権を巡って殺し合いして、一人残して全滅したらしいけど」
「……確かに、工国の王も昔は複数人娶っていたらしいが……いや、それは所謂"王の血筋を途切れさせない為のストック作り"であって…………その手がコホン、何でもない」
"側室"
アテナだって、その意味くらい分かる。否、分かりすぎる。
そもそも父が別の女性を好きになった為、正妻である母を殺され、自分は塔に軟禁されたのだ。
アレフがその事情を知るわけはない。だから、どうしたら丸く収まるのか…と考えてくれた末の提案である。悪気は恐らくない。
アテナは眩暈を感じた。
「…ようするに、俺が武国の女を適当に見繕って嫁にして子供産ませて、アテナの事は愛人にしろってことか」
「言葉が悪いぞ、ザード……しかし、それならば掟を破らず、合法的にアテナ嬢と共に出来るが…」
「んな事出来るか!!」
「だろうな…」
ザードはアテナの体を支えるように再度抱き締めた。恐らくアテナの生い立ちと気持ちを汲んでの事だろう。その優しさに泣きたくなった。
「えぇ……じゃあどうするの?他にザードもフェルナンドも納得する方法あるの?」
事情を知らないアレフは呆れたように言った。
確かに国や立場の事を考えれば最善の方法を却下されたのだ。そんな反応にもなるのは当然である。
フェルナンドもそれは理解しているのだが、アテナの事情も把握しているので悩まし気に溜息をついた。
「…ザード、アテナ嬢も事情や感情があるのは承知している…しかし、これは個人の問題ではないのだ。我等を含め、王族そして五つ国全ての未来に関わっている…もし、ここで間違った判断をすれば国の民達も巻き込み、大混乱が起こる。我らは人である前に、国を支える王…柱でなければならないのだ」
"人である前に国を支える柱"
その言葉がアテナの胸に刺さった。
チクリとした痛みではなく、重く鋭い痛みがアテナの体にのしかかる。
「感情を投げ捨てろって?まるで生贄か人形だな」
「……そうだよ。俺達は人形にならなくちゃいけないんだ。感情とか意思とか、そういうのは邪魔なんだ」
「…アレフの言う通り。無理なんだよ。お前がどんなに足掻いたとしても、アテナの事を好きだとしても…他国の娘は、無理なんだ。諦めないといけないんだ」
「……」
アレフとヒサギの言葉にザードが舌打ちをし、三人を見つめるフェルナンドは辛そうに目を伏せた。
時間にしたら数秒後だったかもしれない。
ザードがアテナを抱き締めている姿を見て、アレフは含みのある笑みを浮かべた。
「ザード、その子…アテナの事、本気なんだ?」
「アレフ、ザードを焚付けるような発言は止めろ。何度も言っているが掟が──」
「分かってる。でもさ、ザード達の気持ちも尊重してあげないと…ねぇ?」
アテナは一瞬背筋が凍った。その理由は分からない。ただ、アレフの笑顔と優し気な声色に嫌な予感がした。
──それはザードも、否、フェルナンドとヒサギまで一緒だったようで、舌打ちをしたり溜息を吐いたり、それぞれ"嫌な予感"の反応を示した。
「フェルナンドもザードも頭が固いよ。柔軟に考えないと…掟で禁じられているのは"王妃に他国の女性を据える事"と"王位継承者に他国の血を混ぜる事"…だったら"王位継承者を他国の女性と作らなければいい"」
「……私は最初からそう言っているが?」
「俺が言っているのは違う。アテナを側室にしたらいいって話」
「側室?!」
「そう。国王に限り一夫多妻が認められている。まぁ、近年は行われていないけれど……創国の数代前の国王は色を好んでいたらしくて、五つ国中の美女を側室にして、沢山の子供を作ったんだってさ。…まあ、王位継承権を巡って殺し合いして、一人残して全滅したらしいけど」
「……確かに、工国の王も昔は複数人娶っていたらしいが……いや、それは所謂"王の血筋を途切れさせない為のストック作り"であって…………その手がコホン、何でもない」
"側室"
アテナだって、その意味くらい分かる。否、分かりすぎる。
そもそも父が別の女性を好きになった為、正妻である母を殺され、自分は塔に軟禁されたのだ。
アレフがその事情を知るわけはない。だから、どうしたら丸く収まるのか…と考えてくれた末の提案である。悪気は恐らくない。
アテナは眩暈を感じた。
「…ようするに、俺が武国の女を適当に見繕って嫁にして子供産ませて、アテナの事は愛人にしろってことか」
「言葉が悪いぞ、ザード……しかし、それならば掟を破らず、合法的にアテナ嬢と共に出来るが…」
「んな事出来るか!!」
「だろうな…」
ザードはアテナの体を支えるように再度抱き締めた。恐らくアテナの生い立ちと気持ちを汲んでの事だろう。その優しさに泣きたくなった。
「えぇ……じゃあどうするの?他にザードもフェルナンドも納得する方法あるの?」
事情を知らないアレフは呆れたように言った。
確かに国や立場の事を考えれば最善の方法を却下されたのだ。そんな反応にもなるのは当然である。
フェルナンドもそれは理解しているのだが、アテナの事情も把握しているので悩まし気に溜息をついた。
「…ザード、アテナ嬢も事情や感情があるのは承知している…しかし、これは個人の問題ではないのだ。我等を含め、王族そして五つ国全ての未来に関わっている…もし、ここで間違った判断をすれば国の民達も巻き込み、大混乱が起こる。我らは人である前に、国を支える王…柱でなければならないのだ」
"人である前に国を支える柱"
その言葉がアテナの胸に刺さった。
チクリとした痛みではなく、重く鋭い痛みがアテナの体にのしかかる。
「感情を投げ捨てろって?まるで生贄か人形だな」
「……そうだよ。俺達は人形にならなくちゃいけないんだ。感情とか意思とか、そういうのは邪魔なんだ」
「…アレフの言う通り。無理なんだよ。お前がどんなに足掻いたとしても、アテナの事を好きだとしても…他国の娘は、無理なんだ。諦めないといけないんだ」
「……」
アレフとヒサギの言葉にザードが舌打ちをし、三人を見つめるフェルナンドは辛そうに目を伏せた。