間話 掟と話し合いと…集合?
…なんて居心地の悪い空間なんだろう…まるで喉に綿を詰められたかのような息苦しさを感じ、耐えきれなくなったアテナは立ち上がった。
「あのっ……私、お茶、淹れます」
硬い笑顔を見せてから、小走りにその場を離れようとした──が
「きゃっ」
「…おっと」
少しだけ進んだ所で誰かにぶつかりかけた。
「ごめんなさ…」
謝罪の為、慌てて青年を見上げた瞬間、アテナは言葉を失った。
──昔読んだ絵本に出ていた天使様みたい…
絹糸のようにサラサラと風に揺れる白銀の髪に、空よりも海よりも透き通った青の瞳…女性のような長い睫毛が一段と儚さを引き立て、服もそこらの貴族が着ているような代物ではなく、白を基調とした上品で質の高い高級品だと一目で分かる。
そんな、現実離れした美しい人物がアテナの肩に手を添えていた。
「…君が『アテナ』?」
「え、あ、は、はい」
「ふーん」
青年は少し顔を傾け、アテナの顔を覗き込む。白銀の髪が揺れるとふわりと魅惑的な香りが鼻をくすぐり、アテナの胸は高鳴った。
青年から目が離せない。青い瞳が高い空のように惹かれさせ、深い海のように心を引きずり込む。目の前に星屑が散る様に眩暈を感じてしまう。
「はわ…はわ…」
「……」
目をチカチカさせてしまっているアテナを黙って見つめていた青年は、おもむろにアテナの顔に手を添えると何の躊躇もなく、頬にキスを落とした。
「え、あ…ふきゃあぁあ!!」
「アテナ!!」
あまりに唐突で一瞬何をされたか理解できなかったが、頬へのキスをされたと分かるとアテナは眩暈を感じて倒れかけてしまった。慌てて駆け寄ってきたザードがそれを支え、アテナの顔を覗き込むと、顔は真っ赤で目を白黒させている。
「しっかりしろアテナ!!返事しろ!!くそっ…おい、なにしやがるアレフ?!」
「この椅子、酷いね」
『アレフ』と呼ばれた白銀の青年はザードの怒号を無視し、何食わぬ顔で椅子に腰掛けた。
アテナはザードに頬を乱暴にゴシゴシと拭かれたおかげ?で意識を取り戻した。今朝、工国で処刑されかけたり、ザードと告白し合ったりと比べると、絶世の美男子から頬にキスされたなんて刺激は少なめだ。逆にそんな体験をしていなければ失神してそのまま死んでいたかもしれない。
アテナは改めてアレフと呼ばれた青年を見つつ、聞いてみた。
「あの…ザード様、あの白銀の方は…」
「あ?そいつはアレフ。『とんでもねぇ奴』って前に言っただろが!もう近付くなよ、ろくな事にならねぇ!」
『とんでもない奴』──そのセリフ聞いた時がある。否、とても印象的でよく覚えている。何故なら、ザードの過去を聞かせてもらったあの花畑で言っていたからだ。
アテナがハッとする前に、白銀の青年は微笑んだ。
「俺は創の国ティファレトの王子、アレフ……覚えてね、花畑で誰かさんとイチャイチャしていた、アテナちゃん」
アレフは銀の髪をフワリと揺らし、静かに答えた。
「創国ティファレトの王子様……!」
「はぁ?何言って…」
「最近のオペラグラスは性能が良くてね…ザードが彼女とあんなことやこんなことしてる姿がよぉく見えたよ…ふふっ」
確かにあの時、ザードの過去を聞かされた花畑は創の城の近くだったが…見られていたとは思わなかった。
…いや、ザードの昔話はなかなか長かった。自分の城の裏にある花畑に長時間人が立っていたら気になって見てしまうのは当然と言えば当然だ。しかも声は流石に聞こえないので、事情を知らなければ真剣な顔で向かい合った男女が唐突に抱き合ったという状況である。
ジトリと睨んでくるフェルナンドと若干引いているヒサギに言い訳の余地もない。
「……その事に関しては後々詳しく理由説明を聞く。今はアテナ嬢の処遇についてを話し合う場だ。保留とする」
大きな溜息を吐き、眉間の皺を深くしたフェルナンドは目を伏せた。
──その通りだ。
アレフの突拍子もない行動で忘れかけていたが、今、ここに五つの国の王位継承者が四人集まっている理由はアテナの処遇…ザードとアテナの婚約をどうするか?という話し合いをする為である。
それで、場の雰囲気がギスギスし始めたのがいたたまれなくなり、離れようとしたのだ。
自分がいなくなれば全て良くなる──だから
「アテナ」
俯いたアテナが顔を上げる前に、その体はすっぽり抱き締められていた。
「ザード様…」
「お前、また馬鹿な事考えてるな?」
「ば…ばかな事じゃ…」
「俺はお前の事が好きだ。絶対に離さない」
ザードは静かに、そして優しい声色で呟くとアテナの頭を撫でた。
アテナは目が熱くなった。込み上がる想いと涙が零れそうになるのを我慢し、ザードの胸に顔を埋める。
自分も同じ思いだ。ザードの事が好きだ。誰に何と言われようと、否定されても、この想いは変わらない。
アテナはザードの胸の中で改めて自分の揺ぎ無い気持ちを再確認した。
「あのっ……私、お茶、淹れます」
硬い笑顔を見せてから、小走りにその場を離れようとした──が
「きゃっ」
「…おっと」
少しだけ進んだ所で誰かにぶつかりかけた。
「ごめんなさ…」
謝罪の為、慌てて青年を見上げた瞬間、アテナは言葉を失った。
──昔読んだ絵本に出ていた天使様みたい…
絹糸のようにサラサラと風に揺れる白銀の髪に、空よりも海よりも透き通った青の瞳…女性のような長い睫毛が一段と儚さを引き立て、服もそこらの貴族が着ているような代物ではなく、白を基調とした上品で質の高い高級品だと一目で分かる。
そんな、現実離れした美しい人物がアテナの肩に手を添えていた。
「…君が『アテナ』?」
「え、あ、は、はい」
「ふーん」
青年は少し顔を傾け、アテナの顔を覗き込む。白銀の髪が揺れるとふわりと魅惑的な香りが鼻をくすぐり、アテナの胸は高鳴った。
青年から目が離せない。青い瞳が高い空のように惹かれさせ、深い海のように心を引きずり込む。目の前に星屑が散る様に眩暈を感じてしまう。
「はわ…はわ…」
「……」
目をチカチカさせてしまっているアテナを黙って見つめていた青年は、おもむろにアテナの顔に手を添えると何の躊躇もなく、頬にキスを落とした。
「え、あ…ふきゃあぁあ!!」
「アテナ!!」
あまりに唐突で一瞬何をされたか理解できなかったが、頬へのキスをされたと分かるとアテナは眩暈を感じて倒れかけてしまった。慌てて駆け寄ってきたザードがそれを支え、アテナの顔を覗き込むと、顔は真っ赤で目を白黒させている。
「しっかりしろアテナ!!返事しろ!!くそっ…おい、なにしやがるアレフ?!」
「この椅子、酷いね」
『アレフ』と呼ばれた白銀の青年はザードの怒号を無視し、何食わぬ顔で椅子に腰掛けた。
アテナはザードに頬を乱暴にゴシゴシと拭かれたおかげ?で意識を取り戻した。今朝、工国で処刑されかけたり、ザードと告白し合ったりと比べると、絶世の美男子から頬にキスされたなんて刺激は少なめだ。逆にそんな体験をしていなければ失神してそのまま死んでいたかもしれない。
アテナは改めてアレフと呼ばれた青年を見つつ、聞いてみた。
「あの…ザード様、あの白銀の方は…」
「あ?そいつはアレフ。『とんでもねぇ奴』って前に言っただろが!もう近付くなよ、ろくな事にならねぇ!」
『とんでもない奴』──そのセリフ聞いた時がある。否、とても印象的でよく覚えている。何故なら、ザードの過去を聞かせてもらったあの花畑で言っていたからだ。
アテナがハッとする前に、白銀の青年は微笑んだ。
「俺は創の国ティファレトの王子、アレフ……覚えてね、花畑で誰かさんとイチャイチャしていた、アテナちゃん」
アレフは銀の髪をフワリと揺らし、静かに答えた。
「創国ティファレトの王子様……!」
「はぁ?何言って…」
「最近のオペラグラスは性能が良くてね…ザードが彼女とあんなことやこんなことしてる姿がよぉく見えたよ…ふふっ」
確かにあの時、ザードの過去を聞かされた花畑は創の城の近くだったが…見られていたとは思わなかった。
…いや、ザードの昔話はなかなか長かった。自分の城の裏にある花畑に長時間人が立っていたら気になって見てしまうのは当然と言えば当然だ。しかも声は流石に聞こえないので、事情を知らなければ真剣な顔で向かい合った男女が唐突に抱き合ったという状況である。
ジトリと睨んでくるフェルナンドと若干引いているヒサギに言い訳の余地もない。
「……その事に関しては後々詳しく理由説明を聞く。今はアテナ嬢の処遇についてを話し合う場だ。保留とする」
大きな溜息を吐き、眉間の皺を深くしたフェルナンドは目を伏せた。
──その通りだ。
アレフの突拍子もない行動で忘れかけていたが、今、ここに五つの国の王位継承者が四人集まっている理由はアテナの処遇…ザードとアテナの婚約をどうするか?という話し合いをする為である。
それで、場の雰囲気がギスギスし始めたのがいたたまれなくなり、離れようとしたのだ。
自分がいなくなれば全て良くなる──だから
「アテナ」
俯いたアテナが顔を上げる前に、その体はすっぽり抱き締められていた。
「ザード様…」
「お前、また馬鹿な事考えてるな?」
「ば…ばかな事じゃ…」
「俺はお前の事が好きだ。絶対に離さない」
ザードは静かに、そして優しい声色で呟くとアテナの頭を撫でた。
アテナは目が熱くなった。込み上がる想いと涙が零れそうになるのを我慢し、ザードの胸に顔を埋める。
自分も同じ思いだ。ザードの事が好きだ。誰に何と言われようと、否定されても、この想いは変わらない。
アテナはザードの胸の中で改めて自分の揺ぎ無い気持ちを再確認した。