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間話 掟と話し合いと…集合?

アテナは急いで服を着替えていた。
何とか簀巻きから解放された後、その場にはすでに自分とザードしかいなかった。城の兵士達もバタバタしていたので、何か大変な事が起きようとしているのは分かった。
ザードは状況が飲み込み切れないアテナに『着替えろ』と言い、説明もなく走り去って行ってしまい、とりあえず水浸しの服を着替えるしかなかった…

「掟…掟ってなんだろうねザー君?」

足元で頭をグリグリと擦り付けていたザー君はアテナを見上げて首を傾げた。
「ぶ?」
「ヒサギ様が持っていた紙にも書いてあって…ええと」

アテナは記憶を辿った。
先程の紙には『掟が破かれた』と書かれていた。その『掟』という言葉は他の場所でも聞いていたはずだ──確か、数刻前…処刑されそうになった時…ヒサギがザードに言っていた。

掟は四つ…?いや、三つ?

「ううーん…あの時は混乱していたし……思い出せないなぁ…」
アテナはザー君を抱き上げて撫でた。





アテナは服を着替えると部屋を出て、長い廊下を歩き始めた。
とりあえずザードの元へ…とも思ったが、そもそも行くべきなのかも怪しい。
しかし部屋で待機しろとも言われていないのだ。
「(とりあえず歩き回っていれば何かあるかもしれない…)」
アテナはちょっとした不安を振り払い、自分に言い聞かせた。

それにしても、相変わらずこの廊下は長く薄暗い。
今は恐らく昼前だが、それでも暗いのだから、夜は真っ暗だ。防犯もこれでは難しいのではないだろうか…?

──と、考えたその時、視界に人影が映った。

薄暗い為に気付かなかったが、ずっとその場にいたようだ。人影は壁に寄りかかる体を起こし、アテナに向き直った。

「貴女が『アテナ』か?」

凛と迷いのない低音が響き、その声に呼応するかのように廊下の窓から光が入る。
すると人影の姿がはっきりと写し出された。

無表情な顔はまるで人形のように整っており、後ろでキッチリ一つにまとめられた金色の髪は一寸の乱れもなく、澄んだ水のような切長の瞳とよく調和している。
長身で細身の体に合わせた服は高級感があり、清潔な雰囲気同様皺も塵一つも付いていない。

アテナはそんな青年の圧に気後れしつつ、控え目に頷いた。
「は、い…アテナは私ですが…?」
「では、即刻この国から出てゆくのだ」
「……えっ?」
アテナは男の言葉に体を硬直させた。
「貴女の生家、キルティー領は工の国コクマーの領土…よって、他国の人間と婚姻もしくは同棲する事は禁止されている。なにより、キルティー領の正当な後継者とはいえ、今現在、件の処遇は保留となっている。よって、貴女の地位は平民。平民と将来国を担う王子がそもそも恋仲になる事はあってはならない事なのだ。以上の理由から退国を言い渡す」
「…あ」
青年の言葉が胸に突き刺さった。全て紛れもない事実である。
ザードと心を通じ合わせたとしても、彼はは王子。五つ国の武力と守護を司るホドの次期王位継承者なのだ。
対して自分は布を織る事しか出来ない、ただの娘。確かにキルティー領主の娘という身分ではあるが、父が罪を犯した今、その『領主の娘』という地位は無いも同然なのだ。
アテナは一歩後退り、俯いた。

「アテナ!」

その瞬間、馴染みのある声が響き、腕を引っ張られて抱き締められた。アテナは抱き締めてきた相手を見上げた。
「…ザード様」
「コイツの言うことなんざ気にするな…!お前は俺の事だけを考えてればいいんだ」
──ザードの声と体温は安心する。
そう感じつつ、アテナはザードの胸の中で素直に頷いた。
「だから、お前がいなくなるのはザードの為にもなるって言ったのに…」
隣からも覚えある声が上がる。
「ヒサギ様」
「アテナ、お前の存在がザード…いや、五つ国全てを壊すかもしれないぞ」

腕組をし、ザードとアテナ、青年を見つめるヒサギは目を細めた。
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