第一話 始まりの一織り
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アテナは夢を見ていた。とても不思議な夢だ。
塔の狭い階段を登っている。いつから登り始めたのか分からないが、ずっと歩き続けている感覚があり、息が上がり汗も止まらない。休もうにも後ろの階段はどんどん崩れて落ちていき、止まったら落ちてしまう。
辛く苦しい。しかし、たまにある窓からは青空と綺麗な鳥の鳴き声が聴こえてきて、それが楽しみで心は軽かった。
──そんな永遠に感じた階段が唐突に終わり、目の前に扉が現れた。
アテナは少し躊躇しつつも、扉の向こうに窓からしか見た事のない景色が広がっているかもしれないと思い、勇気を持って開けてみた。
──そこにはアテナの予想していた景色はなく、大きな真っ白な部屋の真ん中で、ザードと青い髪の女性がぬいぐるみと戦っていた。
ザード達もぬいぐるみ達もおもちゃの剣や木の棒で叩き合っている。音は軽い。しかしザードも女性も叩かれて痛そうにしている。どうやら劣勢のようだ。
ぬいぐるみ達は倒されても床に沈み溶け、どこからともなく沸いて出て来てキリがない。その数はどんどん増えていき、大量のぬいぐるみが女性を叩きだした。ザードも女性を助けようと、群がるぬいぐるみ達を薙ぎ払い続けているが焼け石に水だ。
アテナは慌てて駆け寄り、覆い被さるように女性を守った。
背中におもちゃの剣と木の棒の衝撃が際限なく降り注ぐ。痛くはない。しかし苦しい。そして、熱い。
──アテナはそこで気が付いた。自分の体を本物の剣が貫いている事に。
アテナは床に倒れ込んだ。血は出ていないが、体に力が入らなくなり動けない。いつの間にかぬいぐるみ達も部屋の壁と天井も消えていた。目の前には広く澄んだ青い空と花畑が出現し、ザードと女性は花畑の中心で幸せそうに笑い合っていた。
女性はザードの手を取って走り、ザードはその手を握り返して立ち止まり、女性を引っ張って抱き締めた。
アテナは目を閉じた。二人の幸せがとても嬉しくて、二人の幸せを守れてとても嬉しくて、二人が結ばれてとても嬉しくて、微笑みながら泣いていた。大粒の涙が床を濡らして、拡がり、アテナの周りに花が咲いた。
けれどもアテナはもう青い空も綺麗な花も、幸せそうな二人も見えなかった。
アテナが目を覚ますと、隣に腕組しつつ睨んでいるザードがいて驚いた。
裏庭で寝ていた事、無防備が過ぎる等色々叱られてしまったが、それよりも──ヒルデを助けたのが夢だった事が残念で落ち込んでしまった。
「(でも──私が頑張ってヒルデさんに近付ければ、ザード様もきっと喜んでくれるはず)」
アテナは改めて決意を胸に誓った。
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アテナは夢を見ていた。とても不思議な夢だ。
塔の狭い階段を登っている。いつから登り始めたのか分からないが、ずっと歩き続けている感覚があり、息が上がり汗も止まらない。休もうにも後ろの階段はどんどん崩れて落ちていき、止まったら落ちてしまう。
辛く苦しい。しかし、たまにある窓からは青空と綺麗な鳥の鳴き声が聴こえてきて、それが楽しみで心は軽かった。
──そんな永遠に感じた階段が唐突に終わり、目の前に扉が現れた。
アテナは少し躊躇しつつも、扉の向こうに窓からしか見た事のない景色が広がっているかもしれないと思い、勇気を持って開けてみた。
──そこにはアテナの予想していた景色はなく、大きな真っ白な部屋の真ん中で、ザードと青い髪の女性がぬいぐるみと戦っていた。
ザード達もぬいぐるみ達もおもちゃの剣や木の棒で叩き合っている。音は軽い。しかしザードも女性も叩かれて痛そうにしている。どうやら劣勢のようだ。
ぬいぐるみ達は倒されても床に沈み溶け、どこからともなく沸いて出て来てキリがない。その数はどんどん増えていき、大量のぬいぐるみが女性を叩きだした。ザードも女性を助けようと、群がるぬいぐるみ達を薙ぎ払い続けているが焼け石に水だ。
アテナは慌てて駆け寄り、覆い被さるように女性を守った。
背中におもちゃの剣と木の棒の衝撃が際限なく降り注ぐ。痛くはない。しかし苦しい。そして、熱い。
──アテナはそこで気が付いた。自分の体を本物の剣が貫いている事に。
アテナは床に倒れ込んだ。血は出ていないが、体に力が入らなくなり動けない。いつの間にかぬいぐるみ達も部屋の壁と天井も消えていた。目の前には広く澄んだ青い空と花畑が出現し、ザードと女性は花畑の中心で幸せそうに笑い合っていた。
女性はザードの手を取って走り、ザードはその手を握り返して立ち止まり、女性を引っ張って抱き締めた。
アテナは目を閉じた。二人の幸せがとても嬉しくて、二人の幸せを守れてとても嬉しくて、二人が結ばれてとても嬉しくて、微笑みながら泣いていた。大粒の涙が床を濡らして、拡がり、アテナの周りに花が咲いた。
けれどもアテナはもう青い空も綺麗な花も、幸せそうな二人も見えなかった。
アテナが目を覚ますと、隣に腕組しつつ睨んでいるザードがいて驚いた。
裏庭で寝ていた事、無防備が過ぎる等色々叱られてしまったが、それよりも──ヒルデを助けたのが夢だった事が残念で落ち込んでしまった。
「(でも──私が頑張ってヒルデさんに近付ければ、ザード様もきっと喜んでくれるはず)」
アテナは改めて決意を胸に誓った。